~ 何色にも染まるたおやかさ 染まらない凛凛しさ ~

思い通りにならないことがある方が、そこそこ思い通りの人生歩めてるって皮肉だよね。

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photo credit:Frederic Mancosu via Flickr (license)



白色の自己主張 ~ 何色にも染まるたおやかさ 染まらない凛凛しさ ~



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NHK ドラマ10 ブランケット・キャッツ
第3話「二人ぽっちのブランケット・キャット」に、こんな場面があった。
http://www.nhk.or.jp/drama10/blanketcats/



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有限会社椎名家具製作所を営む椎名秀亮(しいな しゅうすけ)は

藤村動物病院院長の獣医師で
幼馴染みの藤村美咲(ふじむら みさき)に協力してもらい

家具店の前と医院の前に猫の写真と案内を掲示した看板を置き
秀亮の亡き妻が残した猫7匹のあたらしい飼い主を探しているが

秀亮の偏屈な性格故に
案内を見て家具店を訪ねて来た人がちょっとでも気に入らないと
ねちねち嫌味を言ってその場で帰してしまい

呆れるほど一向に飼い主と巡り会えないでいた。



美咲がやきもきするそんな第一関門を熱意で突破しても
引き取りを希望する人には命を預かる責任があるかどうか

1.相性や飼えるかどうかを判断する3日間のトライアル期間
2.秀亮が用意する決められたキャットフード以外を与えないこと
3.環境の変化に弱いので各猫が愛用しているブランケットを傍に置いておくこと
4.飼う環境を秀亮自身が確かめに出向くこと

この4条件を課しさらに見極めるのだが

第1話「身代わりのブランケット ・ キャット」
http://www.nhk.or.jp/drama10/blanketcats/html_blanketcats_story_01.html

第2話「我が家の夢のブランケット・キャット」
http://www.nhk.or.jp/drama10/blanketcats/html_blanketcats_story_02.html

いずれも飼うことは出来ないと
トライアル期間で帰ってくることとなっていた。



最初こそ亡き妻が遺してくれた猫だと時間を惜しまずお世話していたが
7匹ものごはんやトイレの準備やらが次第に負担となってきたことや

猫は躾けられているとはいえ自由気ままに動きまわり
仕事場でも猫に囲まれてしまって仕事が滞ることから

疎ましく思う感情も芽生えてしまっていた。



だが、トライアル期間で帰ってきてしまったとはいえ

猫があたらしい家族として迎えられ共に暮らすなかで
家族の関係や感情に変化が訪れる様を見た秀亮は

亡き妻への想い
妻が遺してくれた猫への想い

自身の中にも心境の変化が訪れているのを感じ始めていた。



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相変わらず7匹の猫の出会いに恵まれないある日のこと。

ウェディングパーティーに出掛けた美咲は
友人 有希枝(ゆきえ)と7年振りに再会。

結婚し
ふたり暮らしで
共働きなことから経済的に余裕はあるものの

病院で検査し
子どもが出来にくいと判ったことを
どこか寂しげに語っていたことから美咲は

秀亮の偏屈な性格故に一向にあたらしい飼い主と出会えないことを憂い
「猫を飼ってみないか」と提案した。



最初こそ戸惑っていたが

美咲に連れられ家具店に来店し
各々お気に入りの場所でくつろぐ猫たちをぐるりと見回すと

チャイ
http://www.nhk.or.jp/drama10/blanketcats/html_blanketcats_cast.html

をひと目見て選んだ。



理由は


う~ん、なんだろう、寂しそうっていうか。
なんか隅っこに居て、なんか遠慮してるっていうか。
だから、気になるっていうか。


それは、有希枝の心情を映す鏡でもあった。



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3日間のトライアル期間

まずは自由に名前を決めていいということなので
(猫さんは混乱すると思うのだけれどここではその是非には触れない)

ノリさんと呼ぶ夫「紀夫(のりお)」と名前を決めようとしたとき
インターネットで探した猫の名前人気ランキングで決めようとする夫に対し

「アン」という名前がいいと有希枝は提案。



「アン」はニックネームで
本名は、石田杏樹(いしだ あんじゅ)。



「女の子は33画が最強」と嬉々として提案する有希枝に
名前まで決めていたんだという思いをこの時初めて知り
子どもが出来にくい事情を知っている紀夫は複雑だった。



さっそくアンと呼び
子どものように可愛がる有希枝に

言い出しにくそうに紀夫は
随分思い悩んだのだろう。

署名と判子を終えた離婚届を差し出した。



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「他に好きな人が出来た」と。



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本当の理由は違っていた。



病院で検査した結果
子どもが出来ない原因は自分にもあったからだった。



子どもをつくるために結婚したわけではなかったが

有希枝も
紀夫も
申し訳ない思いを建前にして

本当は子どもが欲しいんじゃないか
離婚して別の人と結婚したらその望みが叶うんじゃないか

ドラマでは描かれていないが双方の両親からの期待
子どもを持って一人前という社会の暗黙のプレッシャーもあってか

互いに遠慮して本音はどう思っているのか押し殺してしまっていた。



そんな仮面をかぶったような状態になっていたふたりの元へ「アン」がやって来た。



猫を飼うのはふたりとも初めてで

毛づくろいの排泄がうまくいかず吐いてしまったら
よくあることではあるが慌てて(藤村動物)病院へ駆け込んだり

蝉をくわえて有希枝の元へとやって来たら
それが母性本能の強い猫の「食べて」という愛情だと判らず
恐れおののいて美咲に駆け付けてもらったりと

とにかく思い通りにならないことに疲れ切ってしまい
アンと暮らすことに不安を覚えはじめ

紀夫に心情を吐露した。



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(一緒にアンの首輪とおもちゃを買いに出かける予定だったふたり)
(そこへ有希枝の部下=新人からミスの連絡が入り手が離せなくなる)

(ひとりで出掛ける紀夫)
(蝉の大事件はこの間に起きた)

紀夫:(買い物から帰ってきて)あれ?アンは?
有希枝:(ソファーから離れた場所を見遣り)キャリーの中。

有希枝:

ねぇ、知ってた?
猫って、虫とか食べちゃうんだって。

紀夫:

へぇ、お腹とか壊したりしないのかな?
アン、おもちゃと首輪飼ってきたよ。

(キャリーの扉を開けようとするのを遮るように)

有希枝:開けないで!
紀夫:えっ?どうした?

有希枝:

あたし、わがままだよね。
最近特にそう思うの。

紀夫:いきなりどうしたの?

有希枝:

うちの新人、全然仕事できなくて、教えるより自分でやった方が早いからやっちゃうし。敬語もまともに使えないからイライラしちゃうし。お隣の緑川さん、いつも燃えるゴミの中に空き缶や瓶も混ぜちゃうから腹立つし。スーパーのレジで前の人が小銭出すのもたもたしてたら、「早くしてよ」って言いたくなっちゃうし。

紀夫:それは、わがままとは違うんじゃない?

有希枝:

(首をかしげ)なんていうのかな、思い通りにならないことが増えた気がして。
そんなの当たり前なのに。
前は、「まぁいいや」って思えてたのに。
あたし・・余裕がなくなったのかな・・

(有希枝の隣へと座り)

紀夫:

俺たち、ふたり暮らしだからね。
思い通りにならないことなんて、まずないから。

有希枝:

うん。
一人で静かに音楽聴きたいって思ったら聴けるし。

紀夫:ふたりで呑みたいって思ったら呑めるし。

有希枝:

あたしもノリさんも、お互い決めたルールは守ってるから。
なにかに邪魔されるなんてことないから。

紀夫:・・だから、猫を飼いたくなった?

有希枝:

・・うん。
自分の思い通りにならないものを世話したら、少しは慣れて免疫が出来るのかなって。

(子どものことを思ったのあろう沈んだ表情の有希枝)
(同じくそれが子どものことだと心痛める紀夫)




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photo credit:Frederic Mancosu via Flickr (license)



家庭菜園を営む友人「けんけん」のところへ

釣ったばかりの魚を届けてくれるだけでなく
いつも採れたての野菜や果物をどっさりこと贈ってくれるお礼にと

彼も大好きなチーズケーキを時に自家製で
時に全国から選りすぐって持って行った。



最初けんけんから「家庭菜園始めた」と聴いたときは
お庭でちょっくら趣味で始めたのかな程度に思っていたのだけれど

実際訪ねてみたらお庭どころか
レンタル農園をガッツリ借りていて
しかも訪れる度に拡張していって

面積も収穫量も

「もうこれ家庭菜園じゃないだろ?」
「レンタル農園じゃなくておまえの農園じゃない?」

なんてレベルにまでいつしかなっていた。



「これでお米まで作り始めたら DASH村(http://www.ntv.co.jp/dash/village/)だな」



そんな最初の頃の懐かしい話題からはじまって
毎回ダンボールに一緒に入れてくれる一筆箋のことに話題が移った。

季節折々
そのときどきに思ったことを

つぶやくようにしたためてある。



商売っ気なんてまるでなく

気前よく採れたものをご近所さんだったり
ぼくのように遠方に住む友人たちへと贈ってくれるのだけれど

「正直ふぁ~む」と名付けられた農園の
名付けるきっかけになったときの一筆箋に

彼はこう書いていた。




野菜も 果物も 嘘はつかねぇ
いつだって 嘘をつくのは 人間だ




ちょうど食品偽装が世間の耳目を集めていたときだった。



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ヒロ:

そういえばさ、あの頃だよね、味変わったの。
いい意味で。
なんか、ぐんと美味しくなったの。

けんけん:

そうか?
別に肥料とか変えてないけどな。
おまえ、よく判ったな。

ヒロ:

あのな、舌バカみたいに言うんじゃねぇよ。

ちょうどあの頃からさ、けんけん、なんか角が取れたって言うの?丸くなったよね。出逢った頃なんて、「粋がってるヤンキーかよ」って思うくらい近寄りがたい雰囲気だったのに。何年前あれ?何十年か。ぼくが中学生のときでしょ。

姉貴に、うちがまぁあれだから(両親から躾と称した虐待を受けていたのと学校でいじめに遭っていた時期が重なっていたから)息苦しいだろうって、当時やってたウィンドサーフィンに連れ出してくれて、そこで出逢ったウィンドサーファーのチャコがけんけんの妹さんで。「なにちょっかい出してんだコラ!」って怒鳴り込んできたよね。

愛称の由来がサザン(オールスターズ)の「チャコの海岸物語」からきてるって言ってて、「へぇ、でも、ぜんぜんチャコって感じしないけど」って言ったらいきなりビンタされて、そこへナンパって勘違いしたおまえが来て。

けんけん:根に持ってんの?

ヒロ:なんだよ。
けんけん:やんのか?

ヒロ&けんけん:ははは。

ヒロ:

あのときもこんなんだったね。でもさ、ありえんでしょ、ナンパなんて。同じ中学生同士だったし、昼間ウィンドサーフィン出来んから喫茶店でランチしようって思って入ったのに、あまりに混んでて「すいませ~ん」って言えなくて、30分もメニュー、しかも3秒あれば見終わるようなのず~~っと見てたような気がちっちゃいヤツだよ。

学校の教室で出欠取るのに先生が名前呼んでも「はい!」が言えんかったし、授業とか宿題とかテストとかで判んないところがあっても先生に質問出来んから、ぜ~んぜん勉強出来んかったんだから。そんなヤツもおるんだって、世の中には。

でも、学校外で初めて出来た友達でうれしかったな。
しかも異性だったし。
こっちも初めてだった。

けんけん:

丸くなったのはおまえもだろ?周りの人間みんな敵みたいに思ってたもんな。目つきもあれだったし、あのままじゃどうなるかと思ってたけど、まさか結婚までするとはねぇ。あきほちゃん(パートナーの名前)に感謝しろよ。あんないい人、おらんぞもう。不世出の女性だよ。

ヒロ:

そりゃ、親から虐待されて育ちゃ、そうなるだろ。
いじめにも遭ってて、周りの人間見て見ぬふりだし。

けんけん:

オレはなんだろうな、自然相手にムキになってたのをチャコに笑われたからだろうな。雨が降る降らないなんて、思ったように育たないなんて、ウィンドサーフィンで風が吹く吹かないをどうにかするようなもんだよって。

ヒロ:

ははは、そうそう、ぼくも一緒。
チャコに言われた。
変わんないな、アイツ。

肌が弱くて、日焼け出来ないじゃん。だから、ウィンドサーフィン出来るのって陽が昇り切る前の早朝か、陽が欠けてく夕方しかないわけ、チャンスは。

ウィンドサーフィンはウィンド、その名の通り風が吹かないことには話にならんわけよ、帆で受けて推進力にするからね。サーフィンは波があればいいじゃない。それに、波がなくなるなんてこともない。そんなんなったらえらいこっちゃなわけで、地球も宇宙も。

でも風は吹いたり吹かなかったりして、凪みたいになるとイライラするわけもう。今の今まで吹いてて、いざやろうとするとピタッと止みやがる。中学生のとき新聞配達のバイトしててさ、配り始めると雨がざぁざぁ降って、終わると止むみたいな。「オレはこの時間しか出来ないのになんで風来ねぇんだよ!」って吠えてたわ。

そんなぼくをいっつもチャコはボードの上に座って風を待ちながらゲラゲラ笑ってて、「ヒロ、アンタさ、なんとかできると思ってんの?バ~カ」みたいに言われて、最初はカチンとくるわけよ、なんだよと。

でも、言われてみりゃそうだなと。そんなの風神でもない限りどうにか出来るわけじゃないし、イラつく必要もないわけだよ。だって、待てばいい。それだけのことなんだもん。風来なけりゃ、夕方。それでもダメなら、日を改めればいいだけだもん。だって、海は消滅しないしね。いつかは、風吹くし。

あのときチャコに言われたことがぼくの心の重心に植わった、世の中にはどうにもならないことがあるんだなって。それをどうにかしよう、コントロールしようなんてバカげてるんだよって。

それがあったお陰でぼくは虐待した両親に復讐してやるって殺さずに済んだし、いじめたヤツに仕返しして少年院送りになったりとか、社会人になってからも今で言うブラック企業で暴力とか、そうじゃなくても理不尽な目に遭って罵詈雑言浴びて、やり返して、逮捕されて、刑務所行くとかなくて済んだし。思い留まれたっていうのかな。

恋愛にまでコスパ(コストパフォーマンス=費用対効果)持ち出して、失敗したくないとか時間無駄にしたくないとか小狡い保険掛けて、最初から絶対間違いない当たり求めて、言いなりになる人求めるなんて気持ち悪い発想せずに惚れた人と同棲したり、互いの家泊まったり、旅行行ったり、13年も遠距離恋愛できたり、結婚もできた。

それもこれも思い通りにならないことがあるって知ったお陰だし、だからこその叶ったことだと思ってる。恋愛なんてままならない人が相手で、恋も愛も東西の両横綱みたいなもんで、思い通りにならんことの塊なわけだし。

けんけん:

オレもそうだわ。

雨が振らなきゃ水撒けばいいわけだし、形が不揃いだって、別に商売するわけじゃないんだからどうだっていいわけだよ。うまけりゃいい。そう割り切ってからは育てることが楽しくなったし、いいもの作りたいって気持ちはあるけど、なるようにしかならんわて思うようになったな。憑き物が取れたね。

おまえの迷言、迷う方のな、「人生で力む必要があるのはうんこのときだけ」っていうあれな、あれ。

ヒロ:

もぉ。
チーズケーキ食ってるときに「うんこ」とか言うなよ。
小学生かよ、おまえ。

けんけん:

いいだろ別に。
うんこも今じゃ市民権得てるんだし。
ドリルとか売れてるだろ?
肥料にもなる、ありがた~いもんなんだから。

野菜も、果物もさ、育とうとする力をサポートするだけでいいんだよ、人間は。傷んだ野菜とか果物ってな、そこを治そうとして旨味が増すとかって言うんだけど、野菜とか果物からすりゃ、余計なことすんなよって言ってるだろうよ、口が利けんなら。成長を阻害するものを取り除いてあげればいいってことを教えてくれたってこと。

一本道なのに、余計な道、てめぇでじゃんじゃか増やしてるだけだって、おまえの迷言が。

ヒロ:

なんかさ、嫌味に聞こえたらごめんだけど、思い通りにならないことがある方が、そこそこ思い通りの人生歩めてるって皮肉だよね。けんけんの話聴いてても、ドラマ観てても思ったけど(=トライアル期間後も石田夫妻は猫を飼うことに → 巣立ち第一号)。

それを知ったから、じぶんで人生切り拓くのすっぱり止めて、ご縁あって出逢えた人におまかせで切り拓いてもらうようにしてるし、その方がぼく的にはうまくいくっていう。エスカレーター、いや、エレベーターかな、目的地までス~イスイ運んでもらう。今じゃ、その方法しか採用してないもん。

自己啓発とかスピリチュアルに取り憑かれてる人って、なんでも思い通りになる人生歩みたいって宇宙と繋がるとか言い出すけど、宇宙より人と繋がった方がよっぽど開運道だと思うし、そもそも100%なんでもかんでも思い通りになるなんてことないわけで。

そこに気づくっていうか、そうだよなって受け入れることがまずもってスタートで。「あきらめる」とは違うんだよね、「忍耐」でもない。そのうえで、思い通りにならないこととどう折り合いをつけるか。その方法を人生の数稽古で、良い塩梅で学んでいくと、実はそこそこだけど思い通りの人生歩めるっていうね。ぼくもようやくわかった、コケまくり、失敗の山エベレストの42年で。

株式投資やってて思うけど、株価なんてじぶんじゃどうしようもないわけ、天井底、上がるか下がるかなんて。「神のみぞ知る」みたいなもんで、後からならなんとでも言えるわけ。株価チャート示して、したり顔で言うヤツもいるけど。それこそブランケット・キャッツの猫みたいなもんだよ、相場なんて。

女心も同じでそう思ってりゃ気楽なのに、でも一攫千金夢見る夢子ちゃんたちはどうにか出来るとか思って、事前に暴騰するのが判っちゃうとか目がハートになって舞い上がって、おいおいって言うぐらいに大枚ば~ん!と叩いて退場してっちゃうっていう。

それを知ってたから株価の上下運動におまかせして運んでもらってアーリーリタイア出来たわけで、リタイアもさ、したらしたで、「あぁ、もうこれで毎日同じ時間同じ場所へ行かなくていいんだぁ!解放だぁ!」とか小躍りしたけど、結局はやりたいこと帰省ラッシュUターンラッシュの高速道路みたいに大渋滞で、時間は24時間しかなくて、身はひとつしかなくて、100%思い通りにはならない。お金がいくらあったって一緒。思い通りにならない最たるものである「人」とも関わるわけだしね。

自殺サバイバー、婚約者の死、心臓の持病、いじめ・暴力・罵詈雑言の後遺症、虐待による育ちの傷、その他諸々もある。でも、だから、そこそに思い通りの人生歩めてるんだよなって思う、逆説的な話みたいだけどね。

けんけん:

オレも自己啓発にかぶれてたときはそう思ってたなぁ、仕事人間時代の話な、24時間戦えますかの頃。上昇志向しかなくて、「100%思い通りに」がゴールだったから。そういやさ、さっきから軽くディスってる(=悪く言う)よね?ヒロ。いくらつぎ込んだやら。

ヒロ:

だって、毒されてたから。
自己啓発とかスピリチュアルなことが悪いんじゃないんだよ。
何事も適量ってあるから、塩梅塩梅。

サプリ(メント)と一緒。レモンうん百個分とか一気に摂っても、全部は吸収出来なくて身体から出てっちゃうでしょ、結局。過剰摂取したところでなにかが劇的に変わるなんてことないわけ、パッケージにも書いてあるじゃない。人間のカラダってみんなおんなじ体質じゃないし、案外複雑にできてるからね。でも、こと自己啓発とかになるとこれは違う、これは別物とか思って取り憑かれて、滑稽な行動に出ちゃうっていう。

家、建つよね?
何軒?

けんけん:

マンション一棟だろ。
いいよもう・・ったく。

で、ヒロから「一回全部手放してみたら?教材も、メンターとか心酔したり崇めるんじゃなくて。別に困んないと思うよ」って言われて、真に受けて、断捨離頼んで、おまえにゃ思い入れもへったくれもないからガンガン捨てやがって。教祖様とは縁も切ったな。

ヒロ:

「やがって」って。
なんだ、根に持ってんの?

けんけん:

いや。でも実際さ、困ることはなかったね。急に補助輪外されたみたいで不安で、思い通りにならないことばっかりにぶち当たって。最初は捨てたせいだとか思い込んで、また買おうとか思ったけど、だからおまえのことも「あんにゃろう!」とか思ってた、ははは。

でもそれって今までもそうだったよな、とか思ったらバカバカしくなっちゃった。
それできれいさっぱり、自己啓発ちゃんにはサヨナラ出来たってわけ。

結局思い通りにならないことって、今もってうんざりするくらいにさ、山ほどあるけどさ、ヒロが言ったみたいに、それでもそこそこ思い通りの人生歩めてるって皮肉だよな、ホント。

ヒロ:

そこそこって大事よ。
こんな不公平な世の中でそこそこって、実はすげぇし。
そこそこなんてたいしたことないってみんな言うけどね。
「男ならもっと」とか言い出すヤツいるけど、性別関係なくない?

けんけん:

ミソ。
人生の妙味なんだよな、そこが。
思い通りにならないことがあるからっていうさ。

ヒロ:「足るを知る」じゃないんだよな、そこそこは。
けんけん:知ってどうする、いくつだよおまえ、だろ?

ヒロ:

足るを知るって美しい生きかたみたいに言われるけど、じぶんに見切りつけちゃうことでもあるからね。まだ早いだろ、いくつだよって思うね、ホント。

知りたいなら、一瞬でいいんだから。
生きてる、それだけで。




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