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また明日の話をしよう ~ 哀しみの海を漂う君へ贈る物語 ~

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photo credit:gregt99 via Flickr (license)



白色の自己主張 ~ 何色にも染まるたおやかさ 染まらない凛凛しさ ~



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                  300通目



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単館上映系の映画を観に何度か足を運ぶうち
映画館でだけ逢う友人が出来た。



知っているのは名前と
映画をとにかく愛してやまないことだけ。

詮索はしない。
話してもいいなと思えたことだけ話す。

映画館で逢って
映画館で別れる。

それが、ぼくらのゆるい約束事。



お互い人混みが苦手で

平日の午前中の
まるで貸し切りみたいに空いている時間帯にしか訪れないのだけれど

名古屋に単館上映系の映画館はいくつかあって
上映中の映画も何本もあって
かぶることは確率からいってそうそうないことなのに

なぜだかぼくらは申し合わせたわけでもないのに
よくもまぁ同じ映画館でばったり逢うことが重なり

(観たい映画自体はあんまりかぶらない)
(逆にそうだから話も弾む)

いつしか偶然の出逢いを楽しむ友人となっていた。



そんな友人のマサさんとある時期からぱったりと逢わなくなり
連絡先も知らないためにどうしているんだろうなと心配していたら
初めて街ナカでばったり逢った。



やっぱりこの人とは巡り合わせの妙がある。



これまた初めてなのだけれど

久し振りだからとマサさんの方からランチに誘ってくださり
映画館外でご一緒すると

逢わなくなった時期のことを話してくれた。



長年お付き合いしていた恋人がご病気で不帰の人となり
映画館へと足が向かなくなっていたとのことだった。



なんてことばを掛けたらいいんだろうと
こういうときいつも悩む。

こうしてブログでは
想いを綴れることばを持つ幸運に巡り逢えたというのに。



ふと、以前絵本に想いを託したことがあるのを思い出した。



インターネット上で中傷された友人に

森の戦士ボノロン よっばらいのゴンの巻
http://ippunkan.blog.fc2.com/blog-entry-77.html

を贈り、なにがあっても100%味方だという想いを託した。

以前この友人ではないけれどぼくが中傷されたとき
ことばを贈り味方になってくれた人が居たからだ。
http://ippunkan.blog.fc2.com/category0-58.html



「マサさんには・・・」と思ったとき
ぼくらだからこそのアイディアが浮かんだ。




このあとお時間空いてますか?
映画館外でお逢いしたついでに、もしよかったらうちに。
良い映画があるんですけど、マサさんにオススメの。




提案すると

「オススメの映画」というフレーズにぴくんと反応して
館外で逢うイレギュラーな形ながらやって来てくれたマサさんに


ぼく、向こうで絵本創ってますんで(http://ippunkan.blog.fc2.com/blog-category-8.html)。コーヒーと、あと甘いもの、好きでしたよね?ここにあるの(クッキー類)、好きに持ってってもらっていいんで。観終わったら、声掛けてください。


とだけ伝えて、(自称)映画を観てもらった。



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NHK ドラマ10 ブランケット・キャッツ
第2話「我が家の夢のブランケット・キャット」に、こんな場面があった。
http://www.nhk.or.jp/drama10/blanketcats/



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有限会社椎名家具製作所を営む椎名秀亮(しいな しゅうすけ)は

藤村動物病院院長の獣医師で
幼馴染みの藤村美咲(ふじむら みさき)に協力してもらい

家具店の前
医院の前
町内会の掲示板

それぞれに猫の写真と案内を掲示した看板を置いたり貼ったりして
秀亮の亡き妻が残した猫7匹のあたらしい飼い主を探しているが

秀亮の偏屈な性格故に
案内を見て家具店を訪ねて来た人がちょっとでも気に入らないと
ねちねち嫌味を言ってその場で帰してしまい

呆れるほど一向に飼い主と巡り会えないでいた。



美咲がやきもきするそんな第一関門を熱意で突破しても
引き取りを希望する人には命を預かる責任があるかどうか

1.相性や飼えるかどうかを判断する3日間のトライアル期間
2.秀亮が用意する決められたキャットフード以外を与えないこと
3.環境の変化に弱いので各猫が愛用しているブランケットを傍に置いておくこと
4.飼う環境を秀亮自身が確かめに出向くこと

この4条件を課しさらに見極めるのだが

第1話「身代わりのブランケット ・ キャット」
http://www.nhk.or.jp/drama10/blanketcats/html_blanketcats_story_01.html

初の良い感じではあったものの飼うことは出来ないと
トライアル期間で帰ってくることとなっていた。



最初こそ亡き妻が遺してくれた猫だと時間を惜しまずお世話していたが
7匹ものごはんやトイレの準備やらが次第に負担となってきたことや

猫は躾けられているとはいえ自由気ままに動きまわり
仕事場でも猫に囲まれてしまって仕事が滞ることから

疎ましく思う感情も芽生えてしまっていた。



だが、トライアル期間で帰ってきてしまったとはいえ

猫があたらしい家族として迎えられ共に暮らすなかで
家族の関係や感情に変化が訪れる様を見た秀亮は

亡き妻への想い
妻が遺してくれた猫への想い

自身の中にも心境の変化が訪れているのを感じ始めていた。



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長年勤めてきた会社を
まさかのリストラで追われた隆平(りゅうへい)。

退職後3ヶ月

ハローワークへ通っても
友人のつてを頼っても
無料求人誌や新聞の広告など手当たり次第に見ても

年齢的に条件に合うものが見つからず
あっても門前払いを食らってしまったりと一向に再就職先が見つからず

専業主婦の妻からはなじられる毎日を送っていた。



住宅ローンの返済がまだ残っているために今いる家を売却し
退職金と併せて早期一括返済するため
アパートへと引っ越す予定でいたためだ。



ある日

本屋さん入り口のラックにあった無料求人誌をパラパラめくっては
めぼしいものがないと戻して帰ろうとしたとき
傍にあった町内会の掲示板に猫の案内を見つけた隆平は

子どもたちがまだちいさかった頃「猫を飼いたい」と
ぴょんぴょん飛び跳ねておねだりしていたことを思い出した。



お世話ができる年齢になったらと

「もう少しおおきくなったらな」と約束したものの
その願いを叶えてあげることが出来ずに今の今までいたために

今住む家を離れる前に
ひとつぐらいは子どもたちの夢を叶えてやりたいと家具店を訪れ

むぎ
http://www.nhk.or.jp/drama10/blanketcats/html_blanketcats_cast.html

をトライアルで連れ帰った。



ところが妻からは

ペットが飼えるアパートは数が限られていてなおかつ家賃も高いし
3日間飼うなんて情が移ったらどうするのと

売ることが決まっている家に臭いが付いたり引っ掻き傷ができたら
ただでさえ希望より安い売り値が更に安くなってしまうとなじられ

肝心の子どもたち

弟の「ようた」も
姉の「みゆき」も

実に微妙な反応。

そもそも飼いたいなんておねだりしていたことすら忘れていて
隆平はますます肩身の狭い思いをすることになってしまった。



それでもようただけはあたらしい家族に喜んでくれて
(親に気を遣っているだけかもしれないが)

「にゃ~すけ」と名付けて
まっさきに可愛がってくれるようになり

家の中での立場がちょびっとだけだが和らいだ。



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だが、姉のみゆきは冷ややかだった。



学校から返ってくると不機嫌そうに部屋へと直行し

「夜逃げするのか」

クラスの男子に言われたと
おとうさんのせいだと隆平を睨みつけ

夕食時秀亮から厳命された約束事を
唯一の味方であるようたに説明していると

猫のことは一所懸命かまってあげるのに
自分の気持ちはおざなりだとすねて

食事もそこそこに部屋へとひきこもってしまった。



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ある休日の昼下り
仲介を頼む予定だった不動産業者から

「近くの物件を案内したついでに家を見たいという家族をお連れしたい」

連絡を受けた妻がみゆきに
ようたと一緒に猫を連れてしばらく出掛けていてほしいと頼むと

勉強中だったみゆきは渋々出掛けていく。



隆平と妻が内覧に来た一家を案内し
子ども部屋へと通したときだった。



みゆきの部屋の壁に


この家を買う奴は不幸になれ!


マジックででかでかと書かれているのを見つけ
それまでまぁまぁの好感触だったのが一気に冷めてしまい

売却の可能性はその場で流れてしまった。



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その夜、ちょっとした事件が起こった。
にゃ~すけのブランケットがなくなってしまったのだ。
あれほど秀亮から口酸っぱく言われていたのに。



ブランケットがないためににゃ~すけはようたの部屋で落ち着きなく動き回っている。
不安で仕方がないのだろう。



昼間内覧の間出掛けた時にはキャリーの中に入れたままだったはずだし
その後もようたの部屋にあったはずなのに。

いくら探しでも出てこないなと
ふと顔を見合わせた隆平と妻。



みゆきの顔が浮かんだ。



帰ってきたみゆきに尋ねた。



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(ふてぶてしい態度で立ったままのみゆき)
(ポケットに手を突っ込んだまま話を聞く)

みゆき:猫の毛布のこと?
妻:知ってるの?

みゆき:捨てちゃった。
妻:捨てた?

みゆき:だって臭いんだもん。

隆平:

言ったろ?
あの毛布がないと、にゃ~すけが困るって。

みゆき:

別にいいじゃん、困ったって。
たかが猫でしょ?

隆平:みゆきおまえ、なにを言ってるか判ってるのか?
みゆき:毛布に頼らず頑張れってこと。

(問い詰められていたリビングを出ていこうとするみゆきに)

隆平:

待ちなさい!みゆき。
引っ越したくないのは判る。
それで、おとうさんを恨みたいなら恨めばいいよ。
でもな、なんの関係もない、自分より弱いものに八つ当たりをするな!

みゆき:

そんな偉そうなこと言うならもっと親らしいことしてよ!
親なら子どもに情けない思いさせないでよ!
なにが猫よ、そんなの意味ないじゃない!

何年も前に言ったことなんて、あたし忘れてるし。
それで約束したからとか言われても、ぜんぜん嬉しくないし。

猫なんておとうさんの自己満足じゃない!
それで親らしいことしてやったとか勘違いしないでよ!

(それまでじっと黙って聴いていた妻がみゆきの頬を叩く)

妻:

なんでよ?
なんであたしを叩くの?
おとうさんのこと叩いてよ!
あたしは被害者なんだよ!

(思いの丈をじっと受け止めみゆきを見つめる妻)
(しばし押し黙った後)

妻:家族でしょ?
みゆき:だから?・・

妻:

・・被害者とか、加害者とか、そんなのないから。
家族だから。

・・見たかったんでしょ?
毛布がなくなったら、にゃ~すけがどうなるのか。
おかあさんは、見てみたいけどね。
とっても大事にしてるものがなくなった時、にゃ~すけはどうするのか?

でもね、にゃ~すけは困るだけだと思うよ。
ただひたすら困って、なんにも出来なくて、怯えてるだけ。
そこが猫と人間の違いだよね?

猫は困ることしか出来ないけど、人間は違うの。大切なものがなくなっても、それを思い出にして、またあたらしい大切なものを見つけることが出来る。(ふっと笑みがこぼれ)っていうか、勝手に見つけちゃうのよ、人間って。

困ることしか出来ない猫を困らせて、楽しい?
みゆきは人間なのに、ただ困って、落ち込んでるだけでいい?

(ちいさく「ううん」と頭(かぶり)を振り)

・・毛布探しに行こっか?

(こくりとうなづくみゆき)




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みゆきは引っ越すことが決まった時
ようたにこんなことを話していた。



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ようた:

僕は、頭が悪いからね。僕は頭が悪いから、きっと忘れないんだ、にゃ~すけのこと。おねえちゃんがそう言ってた。頭のいい子は憶えるのもうまいけど、忘れるのも得意なんだって。僕みたいに頭が悪いヤツは余計なことばっかり憶えるから、大事なこと憶えとくスペースがなくなっちゃうんだって。おねえちゃん、「この家のこと全部忘れる」って言ってた。「今度引っ越すアパートのことも憶えずにいる」って。でね、僕はあんまり勉強出来ないじゃん?だから、この家のこととか、今度引っ越すアパートのこととかたくさん憶えちゃって、大事なことが思い出せなくて、将来苦労するって。




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母は隆平と一緒にようたから話を聴きながら

そんなみゆきが家族の中で本当は誰よりも
ここでの思い出を忘れたくないと思っていると

忘れようと言い聞かせていると心を寄せていた。



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「捨てた」と言っていた毛布は
みゆきが学校へ教材を持っていく手提げ袋にしまい
神社の境内にそっと置いてあった。



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NHK土曜時代ドラマ 悦ちゃん 昭和駄目パパ恋物語
第1回「求ム!パパのお嫁さん」に、こんな場面があった。
http://www.nhk.or.jp/jidaigeki/etchan/



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舞台は、昭和10年の東京 銀座。



柳碌太郎(やなぎ ろくたろう)は
http://www.nhk.or.jp/jidaigeki/etchan/html_etchan_cast.html

作詞家を名乗りながらも
「もっと泣くわよ」という唯一のヒット以来次につなげることが出来ず

娘の悦子(えつこ)
通い女中のウメ

3人でつつましく暮らすしがない作詞家。



曲を付けてもらうことで
ようやくレコードとして発売にこぎつけることが出来るために

スイートレコード専属の作曲家
細野夢月(ほその むげつ)を訪ねては

妻を亡くして以来
野犬のような恋慕も鳴りを潜めてしまったために

「しみったれてる」とねちねちなじられ
「恋でもしたら?」と書いてきた歌詞を何度も突き返されていた。



ウメへのお給金の支払いさえも滞るような有り様。

生活を潤わせるにはなんとしても夢月を納得させるものを書き上げ
ヒットへとつなげて専属契約を勝ち取る必要があったが

ままならないまま時間だけがいたずらに過ぎていっていた。



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そんな碌太郎のていたらくっぷりを見かねたおませな10歳の娘 悦子は

ウメが選ぶ洋服のセンスがいまいち好みではないと
学校の先生 村岡政子(むらおか まさこ)に相談を持ちかけ

あたらしく仕立てる予定があるなら
生地選びを手伝わせてほしいと碌太郎に申し出てもらえるようにし

まんまと乗せられたふたりは週末
銀座にある大松(だいまつ)デパートへと出掛けて

まるで恋人気分のようなひとときを過ごす。



後日お礼を兼ねて食事をした折

前回生地選びの帰りに食事をした時
互いに映画が好きなことで盛り上がったことで

碌太郎は思い切って政子を映画へと誘い
連れ立って出掛けていくことが叶って

妻を亡くして3年
もうそろそろとなんとも良い感じになってきたのだが

ある夜ウメが帰ろうとした時
書斎の碌太郎にこんなことを話した。



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ウメ:

結局悦っちゃん、あたらしく仕立てたワンピース、着ようとしません。ずっと着ているあのブラウスは、以前奥様が仕立てたものです。それに主婦の時間(碌太郎の姉の家へお金を借りようと出掛けた折黙って持って帰ってきた雑誌)も、奥様が愛読していらした雑誌。やはり、奥様のことが忘れられないんでしょうかねぇ。

碌太郎:

・・だからなんです!悦子のため、母親の分もと生活を負えば、しみったれてると笑われて。気の向くままに恋をすれば、悦子が不憫だと生活に引き戻される!どいつもこいつも、俺にどうしろっていうんです!

(そう言葉をぶつけると歌詞を書いていた紙をくしゃくしゃにして畳へと叩きつけてしまう)




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四度目に逢う日碌太郎は

悦子がまだ母親を思う中で
自分だけが先へと進むわけにはいかないと

政子に期待させてしまったことを含めて詫びた。



すると、政子も頭を下げてきた。



実は悦子に

碌太郎にちょっとでも好感を持っているのなら
あたらしいママになってほしいと

学校でお願いされていたのだった。



それは、子ども心に碌太郎を思ってのこと。
でも、政子に選んでもらった生地で仕立てたワンピースには袖が通せないまま。
気持ちは揺れていた。



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夕食時
ウメと食卓を囲みながらあたらしいママのことを打ち明けたふたりの元へ
事情を知った碌太郎が帰ってきた。




「おデート、どうだった?」




ますますいい感じになっているだろうなぁと期待した悦子に
碌太郎は想いを吐露した。



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(仏間のハンガーにジャケットを掛けながら)

碌太郎:

おデートな・・
もう先生とは会わねぇよ。

悦子:

えっ?
どうして?

碌太郎:

外野がとやかく言おうが、俺は父親だ。
俺の責任で、悦っちゃんとの生活を守らなきゃいけねぇ。

悦っちゃん、ママが欲しいって話は先生から聞いたよ。
けど、やり方が気に入らねぇな。
騙し討ちは卑怯だ!

(指さされ鋭く言われて一瞬びくっとなる悦子)
(それでも怯まず言い返す)

悦子:

偉そうに言うな。
もう少し・・もう少しだったのに。
人の気も知らないで、碌さんのキャラメル野郎!

碌太郎:なんだよ、そのキャラメル野郎ってのは。

悦子:

キャラメルも碌さんも、ねちねち歯にくっついてイライラする。
あたしのママってことは、碌さんのお嫁さんじゃないか!
恋でもして結婚すれば、カッコイイ碌さんに戻ると思ったのに!
このままほっといたら、碌さんは死ぬまでしみったれたままさ。

碌太郎:

黙って聞いてりゃ結構言うじゃねぇか!
俺はおまえのためにあれもこれも我慢してやってんだよ!

(涙と鼻水でぐちゃぐちゃになりながらもまっすぐに想いを伝える悦子)

悦子:

それが嫌なんだよ!
それがおおきなお世話なんだよ!
あれもこれも我慢しないで好きにやればいいのに!

きょうの碌さんじゃ、天国のママだって惚れやしないよ。
さっさとカッコイイパパに戻れ!
戻れ!

(そう言い放って仏間から追い出し襖をピシャリと閉める悦子)




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あたらしいママが欲しい気持ち
亡くなって3年が経つママを忘れたくない気持ち
しみったれの碌太郎を思う気持ちがないまぜになっていた。



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「しみったれのキャラメル野郎か」


そうつぶやいて書斎でキャラメルを口にした碌太郎は
行き詰まり遠ざかっていた万年筆を手に取り

流れるように歌詞を書き上げた。



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歌の名は、「キャラメルエレジー(哀歌)」だった。



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マサさん:

おい!
キャラメル野郎!

ヒロ:

はいはい。
お呼びですか?

ははは、映画だったでしょ?
「(ドラマ2本分で)上映時間は」ですけど。


(おちゃらけながらコーヒーを手にソファーへと座るぼく)
(しばらくふたりの間に湯気を挟んでの沈黙が流れた)
(最初に声を掛けてくれたのはマサさんの方だった)


マサさん:突然・・だったんだよな、ヒロの婚約者さんって。

ヒロ:

はい。亡くなったとき、ぼくはその場に居られませんでした。居てあげられませんでした、名古屋と東京でしたから。そのことで彼女のお父様からは非難されて、「どうして傍に居て欲しい時に君は居ないんだ!」って。「君と出逢わなければこんなことには・・」って。今はお父様からお声がけいただいて和解してますけど、当時は・・

彼女には生まれつき心臓の持病があって、だから移動に負担の掛かる遠距離恋愛にはずっと反対されてまして。ただ、余命が宣告されてるわけじゃなかったので。

とは言っても人間、産まれた瞬間から誰もが死へと向かってカウントダウンを始めるわけですから、いつかは死ぬわけですから、覚悟してなかったといえば嘘になります。持病があって、それがいつか、どこかで、悪さするってことは聴いてたわけですし。

余命を宣告されていれば覚悟も出来るし、残りの時間を有意義なものに出来るなんてのたまうヤツ居ますけど、ぼくは母が余命宣告されてましたから、末期がんで。対して彼女は突然で。言わんとすることも判らなくはないんですけど、どっちがいいとか

マサさん:そういうことじゃないんだよな。

ヒロ:

はい。突然だから心の準備が出来なくて、余命宣告されていれば心の準備が出来るとか、そんな美しいほどの理屈じゃありませんし、そんな仮定に意味は無いです。辛い気持ちの軽重なんてものはなくて、どちらも等しく重いですし、哀しみだって等しく深いですから。昨日まで居た人がこの世から居なくなる・・ことばが追いつかないです。


マサさん:

時間が解決する・・じゃないんだよな。
時間が解決なんてしやしないし、忘れるなんてことも出来やしないし。

ヒロ:

はい。
乗り越える・・でもないですね。
乗り越えられないし、その必要もないです。

マサさん:うん・・


ヒロ:

なんでしょう・・
なんて言うんでしょうかねぇ・・
ぼくは、いずれでもなかったんです。

親に虐待されて育ちましたけど、ぼくは。赦すでもなく、赦さないでもない(http://ippunkan.blog.fc2.com/blog-entry-289.html)、そんな心境に42年掛けて辿り着きましたけど、それと同じっていいますか、死もまた時が解決するしない、いずれかを選ぶんじゃなくて、乗り越える越えない、いずれかを選ぶんじゃなくて。かといって宙ぶらりんでもなくて、忘れることなんて出来ないし、しなくていいし、そんな立ち位置っていいますか、心の置き所があるように思います、ぼくは。


マサさん:

(ソファーで背伸びをして)う~ん・・
なんか・・新聞ある?ヒロ、見せて。

ヒロ:

はい。
どうぞ。

マサさん:

映画欄・・
ん~と・・あった。
(深呼吸して)久し振りに観に行ってみるかなぁ、明日。

ヒロ:月曜日、平日ですね、いつもの。
マサさん:おまえも行くか?

ヒロ:

まぁ、でも、あれですから。
うちらは映画館で出逢う、偶然の出逢いを楽しむ仲ですから。
永田町界隈の、ツッコミどころ満載の出来レースみたいなのはちょっと。

マサさん:じゃ、またいつか、どこかの映画館で。
ヒロ:とか言いながら、いきなりばったり逢ったりとかするんですよね。

マサさん:双子かよ。
ヒロ:まぁそう言わんと。



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