~ 何色にも染まるたおやかさ 染まらない凛凛しさ ~

ともにいきたじかんをいきるしあわせ

Photo:Yesterday - Today - Tomorrow By:Drriss & Marrionn
Photo:Yesterday - Today - Tomorrow By Drriss & Marrionn



白色の自己主張 ~ 何色にも染まるたおやかさ 染まらない凛凛しさ ~



                    *



                  337通目



                    *



ドラマ24『新宿セブン』第8話に、こんな場面があった。
http://www.tv-tokyo.co.jp/shinjuku_seven/



                    *



東洋一の歓楽街 新宿歌舞伎町で『七瀬質店』を営む
人も物も偽物を憎きまでに嫌う七瀬(ななせ)
http://www.tv-tokyo.co.jp/shinjuku_seven/cast/



今から30年前

裏社会を生きる父親代わりの男『セン』と共に
日本~アジア~日本と放浪している時

石を扱う露天で高価な物を当てるよう問題を出された。



まだ幼く鑑定眼を持つには程遠かったが
センは外した七瀬に石には運や相性があると言い


『坊が気になったんなら、それは何か引き寄せられる理由があるんだ』


眠っている自分の力を引き出す石
『セイクリッドセブン』のネックレスをプレゼントしてくれた。



あれから30年後



七瀬は『新宿一の鑑定士』と呼ばれるまでの確かな鑑定眼を持ち

貴金属やブランドバッグなどにとどまらず
臓器や拳銃までありとあらゆるものが持ち込まれる質店を営み

裏社会にも通じ
『七つ屋』の愛称で引っ張りだこになりながら

人と物を巡る物語から絡み合った糸を解きほぐし
依頼人の悩みや問題を解決へと導いていく。



結婚し

『通帳はひとつにまとめたほうがいいよね』

妻から言われ
通帳を渡したその日から音信不通。

誰も信じられなくなり
仕事も失い
全財産をなくして新宿に流れ着き

死のうとしたところを七瀬に拾われた『健太(けんた)』。



『わたしを鑑定してください』

ある日血の付いたパーカーを着て質店に現れたものの
記憶喪失で何も憶えていない。

それ故所持品だけでは正確な鑑定は出来ないと
記憶が戻るまで七瀬・健太と共に働くことになった『華(はな)』。



コリアンバー『エルドラド』オーナーママで
七瀬の過去も知る情報通の『エリカ』

同じく新宿という街の情報通で
七瀬らの行きつけの中華料理屋を営む『シノブ』

彼らと共に。



新宿
この街で『セン』のことを調べ
『セン』を殺したヤツを見つけるために。



セイクリッドセブンのネックレスを片時も離さずに。



                    *



ある夜エルドラドを七瀬と健太が訪れると
ギター流しの『ナベ』が熱唱しているところだった。



七瀬とエリカの話では売れっ子の歌手だったが

若い頃に無茶ばかりやって業界を追われ
今はギター流しとして飲み屋を渡り歩き

客のリクエストに応えたり
持ち歌を唄ったりしながらなんとか食いつないでいる。

だが手術のため入院することになり
明日のエルドラドでのライブが最後になるという。



そんなナベの姿を
カウンターの奥で見つめていたボーイ琢也(たくや)。



熱唱を終え
エリカやお客様たちから大人気で囲まれているナベに視線を向けながら

カウンター席に居る七瀬と健太に
『タバコ失礼します』声を掛け

ライターを取り出した。



七瀬の下で鑑定士の見習いとして働いている健太は
琢也の持っているライターにあざとく目を向けた。

ロンソンのバンジョー
http://www.tv-tokyo.co.jp/shinjuku_seven/special/index.html?trgt=2017.12.02,0

流線形の美しいフォルムで愛煙家を魅了し続ける
世界初のオートマチックライター。



コンディションも良く
『お金に困ったら是非うちで』嬉々として水を向けるが

七瀬から『それ、復刻版だろ?』と告げられ
『大した金にならないんで、売れないっすわ』

そっぽを向かれてしまう。



『でもカッコイイよね』慌ててフォローするものの
琢也は『そうすかね』首をひねり素っ気ない。



そんな琢也の姿を

テーブル席のエリカに呼ばれ
ナベの元に行ってこれでもかと持ち上げる琢也の姿を

七瀬は黙ってじっと見つめていた。



                    *



翌日七瀬質店へとやって来たナベは
手術代の足しにするため
大切にしてきた品々を鑑定テーブルへと並べた。



オメガの腕時計
パーカーの万年筆
ロンソンのバンジョーオリジナルモデル



『昭和の男の三種の神器』と呼ばれる品々で
かなりのお金を工面できると思われた。

だがナベは七瀬が手に取ったバンジョーを
『これはいいや』と戻した。



『傷物だから』というのは建前で


なにか思い出に残るようなものが手元にあったほうが、手術は上手くいくような気がする。


荒ぶれていた頃の面影とは違い弱気な面を見せた。



そんなナベを見た健太は

『珍しいものですしね』
『琢也くんのは復刻版だったけど』

見たまんま
感じたまんまつぶやくが

七瀬とナベの間には微妙な空気が流れていた。



                    *





エルドラドで最後のライブを終えたナベは拍手喝采を浴び
エリカに花束で迎えられながらカウンター席へと座ると

琢也は『お疲れ様です』お酒を出した。



その姿を離れた席で健太や華と見ていた七瀬は
おもむろにお酒を手に立ち上がると
カウンター席へと歩いていく。



ナベの隣に腰掛ける時

カウンターテーブルから一段高くなっている
バーカウンターの上に置いてあった琢也のバンジョーを

こっそりポケットの中に忍ばせた。



『タバコ失礼します』

琢也がエリカらに声を掛け
バーカウンターの上に置いてあったバンジョーを探すが

確かにここに置いてあったはずなのに
どこにもなく戸惑っている。




ナベさん。
琢也に火、貸してやってよ。


自分が隠したのを黙って七瀬は
白々しくナベに水を向けた。

『あれ?やめたんじゃなかったすか?』

琢也に聞かれナベも戸惑う。




きょう売らなかったライター。
ちょうど持ってるでしょ?


更に水を向けられ観念したナベ。

しぶしぶ立ち上がり
バンジョーで火を点け

琢也に差し出した。



『あざっす』

咥えたタバコを
ナベが差し出した火に近づけた時だった。

目に入った金色のバンジョー。
見憶えがあった。



『これ・・・』

ナベの手から取りあげるように手にし
震える右手で着火させようとするがなかなか点かない。

動揺もあってか
何度やっても点かない。



裏返し左手で着火させると一回で点いた。
いつかのバンジョーと同じだった。
灯った火を、琢也はただただ見つめている。



『なんで・・』
訳が判らない琢也に七瀬はこう語りかけた。



                    *




なぁ琢也。
バンジョーってのは、世界初の全自動式ライターだ。

時代が変わって技術が進化した今でも、愛され続けてる。周りがどんだけ変わってもバンジョーのデザインは変わらずに、昔のまんま愛されてきてんだよ。

(立ち上がりポケットに忍ばせていた琢也のバンジョーをバーカウンターへ置き)

昔の思い出も一緒じゃねぇか。世間や環境が変わって自分が変わったとしても、好きだった頃の記憶は変わんねぇだろ。




                    *



手にしているナベのバンジョーに付いた傷。
あの頃へとタイムスリップしていた。



ギターを片手にバンジョーでタバコに火を点け
安アパートでご機嫌に唄う父の背中を見るのが好きだった。

だがそんな父は、母と幼い自分を置いて出て行った。
ずっと捨てられたと思っていた。



安アパートで寝込む病弱な母に尋ねた。




琢也:

父さん。
もう帰ってこないの?

母:

たぶんね。
でも、嫌わないであげてね。




亡くなった母の仏壇の前。

父に憧れ手にした復刻版のバンジョーを手に線香に火を点け
手を合わせる学生時代の琢也が居た。

母の想いを
あの時の言葉を

大切に生きてきた。



                    *



ナベのバンジョーに付いた傷。

それは『貸して』とせがんで手にしたバンジョーを
幼い頃父と出掛けた神社の帰り道

階段からうっかり転げ落としてしまった時に付いた傷。



父が大切にしているものを落としてしまった。



慌てて拾いあげ
右手で何度も着火させてみるが点かない。



壊してしまったんだろうか。



『ごめん』と謝る琢也に父は

バンジョーを受け取ると
同じく右手で点けてみる。

それでも点かないと裏返し
今度は左手で点けてみる。

すると、『ボッ』という音と共にオレンジ色の炎が。



琢也の心にも顔にも明かりが灯った。



大切なものが傷ついても怒ったりせず
しゃがんで琢也の鼻をつまんだ。



『良かったな』と。



                    *



手にしたナベのバンジョーでもう一度火を灯した。
タバコに火を点けた。




美味いなぁ・・
これ吸えないなんてナベさん、天罰が下ったんすよ。

(涙と共に想いが溢れた)

早く・・
・・早く治してまた、唄ってくださいね。

(タバコからもバンジョーからも手を離した琢也)
(カウンター越しに押し黙ったままのナベの鼻を指でつまんでいた)

(あの時父がしてくれたのと同じように)




                    *



カウンターには

オリジナルのバンジョー
復刻版のバンジョー

ふたつが並んでいた。



                    *



11月17日午前3時31分
末期がんで父が他界しました。



喪主を務めた19日の告別式でお棺の中に
思い出の品々や持たせてあげたいものを入れるのですが

その中に長年不仲だった父と撮った唯一の写真
一枚の写真の中にふたりが収まるこの世でただ一枚の写真は

どうしても入れることが出来ず
今も手元に大切にあります。



ぼくは

『甘えるな』の自己責任
『頼るな』の自助努力
『正社員で家族を養って一人前』の男らしさ・自立

それこそまだ物心さえつかないうちから高校を卒業するまで
両親から365日皆勤賞の虐待という形で

この THE 昭和の価値観を叩き込まれてきました。



その壮絶さは

痛み、ごはんがおいしい、寄り添うということ
http://ippunkan.blog.fc2.com/blog-entry-357.html

も含め今までこのブログで何度となく綴ってきましたし

虐待による育ちの傷が起因して命を絶った経験を持つ
自殺サバイバーの集まりで話したりもしてきました。



そこまで酷い目に遭わせた父の写真を
どうして今も大切に持ち続けているのだろう。



赦すでもなく 赦さないでもなく
http://ippunkan.blog.fc2.com/blog-entry-289.html

そんな第三の場所へのソフトランディングを経て
そうせざるを得なかった人の心に心を寄せたこともおおきかったですが

一家の大黒柱として
身を粉にして働く父の背中を見て育ったぼくにとって

父はヒーローだったからなのかもしれません。
http://ippunkan.blog.fc2.com/blog-entry-355.html



                    *



虐待は今も、あってはならないという想いは変わりません。



ただ、世間や環境が変わってじぶんが変わったとしても

虐待を巡る価値観が
『厳しい躾』から『犯罪』へと変わっても

虐待を受けて育ったことが

『親の愛情だと思いなさい』から
『気の毒な人生を強いられた』へと変わっても

ぼくが父に抱くヒーローという想いは変わらないのだと思います。



『父のことが好きなのか?』
問われると正直判りません。

好きとか嫌いとかとは
別のところにあるように思うからです。

でも

亡くした今も写真を手に父を思い続けているということは
大切な人だと思っているということ。

それだけは間違いないと思うのです。



                    *



やかんでお湯を沸かすと時間が掛かります。
でも、やかんで沸かしたお湯はなぜか冷めにくい。

ティファールでお湯を沸かすと、ものの1~2分で沸く。
でも、ティファールで沸かしたお湯はなぜか冷めやすい。



親子も同じかもしれません。



曲がりなりにも43年間ぼくらは
親子として生きてきたのですから。