○● - 白色の自己主張
~ 何色にも染まるたおやかさ 染まらない凛凛しさ ~

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白色の自己主張 ~ 何色にも染まるたおやかさ 染まらない凛凛しさ ~



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【問題】

この中から違うものがあれば選びなさい。

●○○ ○○○ ○●○
○○○ ○○● ○○○



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20代前半の頃

結局起業はしなかったのだけれど
(その方がじぶん的には物事がうまく運ぶと判ったので)

早朝は新聞配達
昼間は本屋さんで本業
夜は会員制の高級クラブでアルバイトをしていた。

(今はこんな働きかたをしてはいけません)
(当時のぼくだからたまたま心身を害さなかっただけなので)

そのときお世話になり
可愛がってくださり
お店を離れた後もなにかと気にかけてくださるオーナーママからお声がけがあり

当時居たお店はもうないのだけれど
あたらしく水商売の世界に入りたいという人たちに
オーナーママが自身のノウハウを惜しみなく伝え見守っていく

そんな取り組みを始めると聴き
勝手を知るぼくもお手伝いをすることとなった。



女性が男性をおもてなしする従来の形だけでなく

LGBT(http://www.nhk.or.jp/heart-net/themes/lgbt/index.html)の方たち向けのお店も
ママは分け隔てなくたおやかな心で支援していて

その中のお店にはぼくが以前

オネェの人たちが話好き世話好きなことから
「介護に向いてるんじゃないの?」と話したことで

オネェの人たちだけの介護チームを作ることにタッチしたご縁から知り合った方が
その後ママへと転身したお店もあって

いつしかぼくはそのお店のママと
以前にも増して仲良くさせていただくようになっていた。



ある日

学生街にあるお店ということもあって
学生のアルバイトさんもお店には結構居たのだけれど

その中の「園(その)ちゃん」と「ヤンくん」ふたりが
大学で心痛める出来事があってふさぎこんでしまうことに。



なんとかしてあげたいママからヘルプのお声がけがあり
ぼくは、彼らと外で逢って話をしてきていた。



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ママ:

ありがとうね、ヒロ。
アンタに頼んで良かった。
あの子たち、戻って来れて本当に良かったわ。

ヒロ:

ありがとうなんだけど、いや、気悪くしたらごめんなんだけど、嬉しいんだよ、嬉しいんだけどね。感謝っていうか、「よくぞ言ってくれた」みたいに絶賛とか称賛とかされるのって、なんか違和感あるっていうか。

こういう場で話す話題じゃないんだけど、大事なことだからさ、ごめん、ちょとだけ聴いて。

NHKの「あさイチ」って番組で、「無関係ですか?性暴力 https://www1.nhk.or.jp/asaichi/archive/170621/1.html」って特集があったんだって。ぼくは番組そのものは観てなくて、後で毎日新聞で「「女性に非なし」カビラさんが偏見一喝、大絶賛 https://mainichi.jp/articles/20170702/k00/00m/040/097000c」って記事があって知ったんだけど、性暴力の被害に遭った人たちに対して番組に寄せられた意見が一部載ってて、これがもうさぁ、吐き気がするわけ。読んでると、人間性の欠片もなくて。

60代70代のいい歳したおじいちゃんがさ、酸いも甘いも噛み分ける人生の大先輩だよ、激しく抵抗すれば逃げられただの、男が事を成し遂げられたのは女性が途中であきらめて許したからだの、脳内の想像の域出ないクズみたいなことばっかり言ってるわけ、平然と。「あんたがさ、被害者の立場だったらどうよ、こんなこと言われて」って、読みながら思わずつぶやいちゃったくらい。本人はまともなこと言ってます、言えない世間や他人に成り代わってオレが言ってやったなんだろうけど、女性蔑視の思想が透けて見えて、おぇってなるの。この人たち、こんなふうに奥さんや世の女性見てるんだなって。

20代女性も襲われる側にも落ち度があるだの同性としてなに言ってんだみたいなこと言ってて、それに対してゲストで来られてたタレントのジョン・カビラさんがぼくも同じ想いなんだけど、「ご自身の奥さんや娘さんが同じ目に遭ってもそんなことが言えるんですか?」ってピシャリと言ったら、他にもあるんだけどね、言ったことは。それが絶賛されたって書いてあるわけ、記事に。

でもさ、すごい違和感があったの、ジョン・カビラさんが絶賛されたことに。彼が言ってることって至極まっとうなことなわけよ、非の打ち所がない。絶賛されるようなことじゃない、本来なら。でもそれが絶賛されるってことはさ、それだけ社会が歪んでるってことなんだよね。

園ちゃんとヤンくんにぼくが言ったことをさ、ママが絶賛してくれるのも同じ気持ちで、男が男を好きになるのも、女性が女性を好きになるのも、本来はいいはずなの。でもそれが、理解のあるママからでさえこうやって絶賛されるってことは、それだけ社会の理解がまだまだってことなんだよね。

絶賛なんてされない。
そんな社会が来るといいなって思ってるの。


ママ:

前から思ってたんだけど、ヒロのさ、そのおおらかな恋愛観っていうの?
どこから来てんの?それって。

ヒロ:

ちょっと本題からは逸れるんだけど、いい?

前に実家に立ち寄ろうと思って、バス待ってたの。そっから実家近くのバス停までは10分位乗ってれば着くから、いつもは立ってるの。ただその日は、ほら、ぼく腰痛持ちだからたまに立ってられないくらい痛みがひどいときが一定の周期で来てさ、その日は来ちゃった日で、とにかく座りたかったわけ。それで確実に座れるようにって痛いの我慢しがなら先頭で待ってて、バスが来たら入口近くの一人掛けの席に直行して座って。そしたら、その後乗ってきたおじいちゃんがさ、ぼく見てさ、真横仁王立ちしてさ、罵倒するみたいにおおきな声で説教すんの。

「若いもんがな~にちゃっちゃと座っとるだ。周り見てみぃ。あんたと同じくらいの人はみ~んな立っとるだろ。恥ずかしないんか。譲らんか、はよ」

って、椅子の背もたれバンバン叩きながら。

いきなり来てさ、大声で説教とか「はぁ?」とか思って、「だったら早く来て並びゃいいじゃねぇか」とか思って、こっちも痛みもあってイライラしててカチンときちゃってさ、痛みでぷるぷる腕が震えながらカラダ支えてなんとか立って言ってやったの、あんまりにも頭(あったま)きたから。「最近の若いもんは」とかすぐ年長者は言うけどさ、あんたらこそどうなのよって。バスの発車時間遅らすわけにはいかんし、不快な気分、車内に伝染させたくないから手短にね。

「譲りますよ。たださ、恥ずかしくないの?あなたの方こそ。お幾つなのか知らないけど、何様なのか知らないけど、周りからどう見られてるのか自覚がないんでしょうけど、公共の場で鼓膜破れんじゃないかってくらいに耳元で大声張り上げて、脅すように席奪うなんて。ぼくはこんな言い方しか出来なくて申し訳ないけど、あなたは年の功があるんですから、言い方ってあるでしょう?あなたにも座りたいご事情はあると思いますし、早くに並べなかったご事情もあると思いますけど、そうやって強引に席を譲らせて立った人の中には、体調の悪い人だったり、怪我をしてる人だったり、妊婦さんだったり、持病や障害のある人もいたんじゃないんですか?外からは判んないっていうのかな、あなたの目には見えないだけで、自分ファーストで見ようとしなかったっていうのかな。ご事情があるならお話いただけたら、こちらも気持ちよく譲れるでしょうに」

って言って譲ったら、手をさ、あっち行けみたいにしてさ、「はよはよ、はよせんか」ふんって鼻で笑って、どしんと座ったなんてことがあったの。今でも思い出すと気分が悪い。


ヒロ:

その後別の日にバスに乗ったとき、始発のバス停でね、杖をついた人が後から乗ってきて、この日は腰大丈夫だったから、席を譲ろうとしたの。そしたら、「いいですよ。すぐ降りますから」ってやんわり言われて、その人立ったままだったの、入口近くでしばらく。

それでいくつかバス停過ぎた頃に3人掛けのシートが空いて、隅にいた人がその人に声掛けてようやく座ったんだけど、脚を投げ出してるの、通路に、ば~んと。地下鉄と違ってバスって通路が狭いじゃない、だから、すごい邪魔なわけ。停車する度に乗ってくる人たちも、「なんだよ」「邪魔だな」って顔しながらまたいで乗ってって、その度に「すみません」って頭下げてた。スマホに夢中になってる人は引っ掛けて、転び掛けて睨んでたりね。

なんでだろうって思ってたら隣の人と話し始めて、病気のせいで膝が曲げられなくて、だから立ってたんだって。それ聴いて、「あぁ、だからぼくがさっき席譲ったときに遠慮したんだ」って判ったの。ぼくが座ってた席は一人掛けで、運転席のすぐ後ろの席だったんだけど、ノンステップバスって言って入口と出口に段差がないバスだから車体が低く出来てて、ぼくの席は足先すぐのところにタイヤ部分があって、座っても脚を伸ばせないんだよね。だからだったんだって。だから立ったままでいたし、シート席が空いても最初は遠慮してたんだなって。脚を投げ出してるように映ったのも、病気で膝が曲げられなくて、座ったら邪魔になっちゃうって思ったからなんだなって。

このときのバスではなかったけど、きっとどこかで言われたんじゃないかなって思った。ぼくのときみたいに見た目で判断されて、理由を知らない人から脚を投げ出すように座ってるのを咎められたんじゃないかって。電車の中で居るじゃん、アホ面の人がさ、スマホに夢中になってるあれね。あんなのと同じにされて。

理由を知れば温かい目で見られるけど、そうじゃないと人は、攻撃的になるんだなって。ぼくも例外じゃない。だからぼくは腹を立てるよりも先に、まずは訳を知りたいって思った。その人になにがあったのかは、聴かなきゃ判んないって。


ヒロ:

はは、脱線しすぎちゃった。

なにが言いたいかって言うとね、今みたいに持病だったり自殺未遂7回も繰り返して心臓がごきげんななめになる前、絵本が大好きで海外の絵本を読み歩きたいって思ったり、チーズケーキが大好きで海外のチーズケーキ食べ歩きたいって思ったり、世界遺産や世界の絶景観たいって海外旅してた頃さ、イタリアを訪れたときに、絵本を架け橋に仲良くなった休暇でイタリアを訪れてた男性ふたりと食事を楽しんでたの。

それまで訪れる先々で男女問わずなんだけど同性愛って思われるカップル何組か見かけてて、「日本じゃまだまだあれだけど、寛容な国って結構あるんだなぁ」「世界じゃ昔は病気だって言われたり、犯罪扱いされてた時代もあったからね」なんて話してたら、「僕らもそうだよ」なんて唐突に告げられて、一瞬固まっちゃったの。そんな素振りは、ぼくの前では見せてなかったしね。だから、あからさまに「げっ」って顔になっちゃったと思うの。

それまでのぼくは男は女に、女は男に恋するものだと思ってたし、それが世間の模範解答だと信じて疑わなかった。中学生のときに男の子が好きな男の子の同級生がいて、彼が「薔薇族」ってゲイ雑誌を学校に持って来てたんだけど、見せられて、おぇってなってた。馬鹿にしてた、正直、「ホモ」って。そのときの模範解答のままおとなになったし、周りには同性愛の人なんて居なかったから、「げっ」って顔になっちゃった。だって、それまではどれだけ旅先で見かけても距離のある他人事だったのが、今は心の距離が近い目の前の人で、自分事になっちゃったからね。

でも、彼らはそれを咎めたりせずにね

「ヒロ。君には好きな芸能人とかいないのかい?ひとりやふたりはいるだろう?そのなかに男性はいるかい?そう。その人に抱く「好き」という気持ちを気持ち悪いと思うかい?同じようにその人のことを好きという男性がいたら気持ち悪いと思うかい?きっと思わないだろう?むしろ嬉しいんじゃないか?同じように好きになってくれて。僕らが男性を好きになるのは、君が男性芸能人を好きになる気持ちの延長線上にあるものと同じなんだよ。特別なことじゃないんだ」

って、押し付けるでもなく、さらりと言ってくれたの。

愛に溢れたことばだなって、帰りの飛行機の中でずっと思い返してた。ぼくと彼らの間に違いがあるとするなら、好きのままで止まるか、そこからさらに先へ進んで気持ちが深まるかどうかだけだって思ったの。ぼくも芸能人とはいえ男の人を好きになることあるなって、ハッとしたの。それまでは、「そんなことあるか」って思ってたからね。

男が女を好きになる。女が男を好きになる。それって、いつ、誰が、そうでなければいけないって決めたんだろうって。罰せられるの?違うよね、そんことない。男が女を、女が男を、それが正解ってなんで言えるの?って思った。きっと誰も答えられないんじゃないかな、誰もが納得するようなものって。だって、そう思い込まされてるだけだから。

法律で決まってるわけじゃない、たぶんね、不勉強なだけかもしれないけど。法律じゃ同性婚こそ認められない国はあるけど、ディズニーリゾートで同性婚挙げられたりさ、同性同士のパートナーシップ制度を認めてる東京とかの区でね、あったりとかしてさ、男が女を、女が男をって形は崩れつつある、いい意味で。

世間の模範解答は男性が女性を、女性は男性をだけど、でもさ、大事なことってそこじゃないよね。人対人なんだもん、好きって気持ちも、愛も。誰かを好きになること、誰かを愛することに性別持ち込むのってナンセンスだなって思った、そもそも。そんな理由を知れば、そんなあらたな視点を持てば、温かい目で見られると思うの。


ヒロ:

子どもの頃ぼくってね、両親から男らしさを強要されてて、ちょっとでも男らしくない、それは両親から見てなんだけど、虐待されて執拗に矯正、直されてたの、気に入らないって。女の子が興味持つようなもの、例えばお花とか、人形とか、レース模様とか持ったりしようものなら、見つかったらすぐにゴミ箱行きで。酷いときには当時住んでた団地にあった焼却炉で燃やされてた、ひとつ残らずね、ぼくが見てる目の前で。

毎日新聞の連載にさ、「ウラから目線」っていうのがあって、そこに「男性は頭がいい https://mainichi.jp/articles/20170516/dde/012/070/005000c」って記事があるの。切り抜いていつも持ってんだけどね、「賢い=男」というステレオタイプを女の子は6歳にして持つっていう研究論文のことが載ってるの。

なんで5歳までは「賢い=女」って思えるのに、6歳からは違うんだろうって。5歳と6歳、その間にいったいなにがあるんだろう?って、気になって気になっていっつも考えてるんだけど判んなくて。それは判んないままなんだけど、もう一個思ったのはさ、そう刷り込まれる要素が女の子の周囲にあるからなんだろうなって思ったことでね。

この前、きゃりーぱみゅぱみゅさんの世界観を産み出すアートディレクターの増田(ますだ)セバスチャンさんのインタビュー(https://mainichi.jp/articles/20170710/ddm/013/070/035000c)読んでても思ったんだけど、ぼくは薄いピンクとか紫とか女性が身に着ける色が好きで、ファッションには今もよく取り入れてるんだけど、ナタリー・オンスさんの絵本「ピンクがすきってきめないで」に出てくる女の子みたいに、本当は黒が好きなのにそれが言えなくて、「女の子が好きな色=ピンク」って同調圧力に悩むみたいにさ、男性が女性を、女性は男性をって世間の模範解答もおんなじじゃないかって思ったの。おおらかな恋愛観になれないのってなぜかって、こういうところにもあんのかなって。


ヒロ:

前にさ、また脱線するけど大事なことだから話すけどさ、東京へ「私たちは『買われた』展」っていうのを観に行ったのね。援助交際とか売春になぜ少女たちが関わったのか、脳みそまで下半身でできてるような男連中はさ、性的視点でしか見られなかったり、援交や売春を正当化するだけとか言って、たぶん自身の満たされない気持ちだったり、思い通りにならない鬱憤を晴らしたいだけで弱い立場の人を好き放題にバッシングしてたけど、ぼくは違った見方してた、性欲強い自覚あるけどね。

「パパ活 https://pc.video.dmkt-sp.jp/ft/s0005201」ってドラマも最近始まったんだけど、こっちはカラダの関係なしで、違うように思えるけど根っこは一緒なんじゃないかって思うんだけど、企画展を企画した Colabo(コラボ https://www.colabo-official.net/)の人たちだったり、声をあげた女の子たちってなにを伝えたかったかって考えたときにね、性的対象に見られることだったり正当化じゃないよなって思ったの。彼女たちを説教したり責めるのも筋違い。その奥にある寂しさ、期待されたい、誰かに必要とされたい、存在を認めてほしい、貧困に目を向けてほしいんじゃないかって思ったの。覗き見趣味みたいな週刊誌の見出し、男目線の興味本位なことじゃなくてね。

いろんなこと、いろんな人がああだろう、こうじゃない?って、知ろうともしないでまことしやかな噂の類信じて、伝言ゲームに乗っかって好き放題言ってるけど、本当に大事なことってなんだろう、本当に伝えたいことってなんだろうって教えてくれた企画展だったなって思って。


ヒロ:

前に日傘のこと話したじゃない、ぼくが肌が弱いから日傘差してると好奇の目で見られるって。あれだって、必要だから使う、それだけのことであって、女性は OK、男性はおかしいなんていうのがおかしいわけでさ、日傘に性別持ち込むこと、それ自体がそもそもナンセンスなわけだよ。たまたま好きになったのが男性だった、女性だったってだけのこと。日傘を性別に関係なく必要だから使うみたいに、恋も愛も、人として好きになる、愛する、それだけのことなんだよなって思ったの。それでいいんだよなって思ったの。そこに性別なんていらない、持ち込むこと自体がそもそもナンセンスなんじゃないかって。

だから、LGBTってカテゴリー分けも、本来いらないと思うんだよね。Lの世界、Gの世界、Bの世界、Tの世界って、別々の世界をつくっちゃうから。LGBTビジネスなんて露骨な、嫌なことばも産まれるしさ。分断を目的にしたものじゃないし、そんなことにはなるわけがないって思うけどね。

同性愛同士になると子孫が残せなくなって人類滅びるなんてこと言い出す人もいるけど、荒唐無稽。何十億居んのって話だよ、地球上に。みんながみんな同性愛になるわけないだろうし。

だからね、言ったの。

男は女を、女は男を。
見るべきは、性別じゃない。

性別を取っ払って、人対人として、目の前に居る人たちはどうなんだろうってことを見つめたいって思った。好きになること、愛してること。大事なことってそこだよねって、そこだけでいいよねって。

そんなことをね、この前外で逢ったときに、園ちゃんとヤンくんに話したの。


ママ:

(テーブル席でたくさんのお客様に囲まれるふたり)
(その姿をカウンターから眺めるママ)

あんなに笑えるようになって、本当に良かった・・
入りきれないくらいにお客様に囲まれて・・
待っててくれる人がいるって、いいわね、やっぱり。

大学で信頼してた友達にカミングアウトしたら、「キモい」とか散々に言われたらしくてね。デリケートなことでもあるのに、LINE、SNS でおもしろおかしく言いふらされちゃって。それからは汚いものみたいに、今まで仲良かった子たちがサァ~って潮が引くように避けられるようになったって。

便所飯って言うんだってね、嫌な言葉よね。仲間外れにされて、居場所なくしちゃって、独りでごはん食べてたって聞いて、泣けちゃったの、不憫で。とうとう通えなくなって、鬱になるまで追い詰められちゃって・・。ふたりとも、大学は違うのにね、あんなにいい子がなんでって。

無駄に長く生きてるのになんて言ってあげたらいいのか判らなくてね、こんなお店やってるのに情けないわよね。あたしなんか差別なんてもう慣れっこで、図太く世渡りして生きてきたけど、あの子たちはね、繊細だから。そこが良いとこだから。

だからヒロ、居てくれて助かったわ。
このお店だけはさぁ、あの子たちの居場所にしてあげたいじゃない。
だから、ホント、ありがとう。

ヒロ:

いや、なんか済まないね。
きょうは、ぼくばっか話すばっかで、延々と長話をさ。
聴き上手だから、ママ、相変わらず。

ママ:

おだてたってなにも出ないわよ。
それにね、聴くのは仕事だからいいのよ。
おだてて登るのはね、豚だけよ。

ヒロ:

そこは猿だろ。
豚は、ヤッターマンのドロンジョ様一家だろ?

ママ:ふふ、あたしたち、歳がバレるわね。

ヒロ:

ははは。
じゃ、そろそろ行くわ。
席汚しちゃっただけで済まんね。
こういうお店なのに、お金も落としてないし。

アヴァンティの教授みたいにさ(http://www.tfm.co.jp/podcasts/avanti/)、一杯呑みながらってやれればいいんだけど、見届け人ってことでママとふたりに招待してもらって来たものの、お酒一滴も呑めないのに席だけ陣取っちゃって。カウンター席の隅っことはいえさ。

ママ:

あら、そんなことないのよ。
ヒロはね、仙台四郎(せんだい しろう)みたいなもんなんだから。

ヒロ:

福の神の?
まさかぁ。

ママ:

ホントよ。
だからありがとうって言ってるじゃない、さっきから。

ヒロ:

そう?
じゃ、そっちのありがとうなら、ありがたく。




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【問題】

この中から違うものがあれば選びなさい。

●○○ ○○○ ○●○
○○○ ○○● ○○○



10代の頃心理学系の大学へ通っている女の子に
アメリカで行われたというこんな実験を教えてもらった。



迷わずぼくは ● を選んだ。
でも彼女が教えてくれた答えは、「違いはない」。
「アメリカ」という国がポイントだった。



白人の子どもたちはぼくと同じように迷わず ● を選んだが
黒人の子どもたちは皆「違いはない」だった。



ぼくが来るといいなと思っているのもこんな世界。
黒人の子どもたちの答えが絶賛されない、そんな社会。