しんしんと芯 - 白色の自己主張
~ 何色にも染まるたおやかさ 染まらない凛凛しさ ~

しんしんと芯

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photo credit:atacamaki via Flickr (license)



白色の自己主張 ~ 何色にも染まるたおやかさ 染まらない凛凛しさ ~



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この苦い世界のなかで
私の一生が薔薇の輝きを遮る埃のようなものだとすれば
私にどんな意味があるのだろう

マックス・リヒターにのせて、ダイナ・ワシントンのThis Bitter Earth

ダイナ・ワシントンさんが唄う『This Bitter Earth』の歌詞を訳した
政治学者 藤原帰一(ふじわら きいち)さんのツイッターから
https://twitter.com/kiichifujiwara/status/520356483360632833




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ドラマ『サチのお寺ごはん』
二の膳「もろこし尽くし ムクミと焦りにさようなら!」 に、こんな場面があった。
http://sachinooteragohan.com/



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イベント会社に勤める臼井幸(うすい さち)は

後先考えずに両親が付けた名前によって
子どもの頃から「サチウス」なんてニックネームで面白おかしく呼ばれる

不幸体質(自己暗示もある)の27歳OL。



小学校時代は遅刻して遠足のバスに置いていかれ
学芸会では植物の役が定位置。

高校で初恋人が出来たと思ったら
わずか一週間で他に好きな人が出来たとあっさりフラれ

大学時代は隅っこが定位置で影が薄く

就職した会社では人の良さと断りきれない性格ゆえに同僚から
「早くて正確」とおだてられては仕事を押し付けられ

毎日不本意な残業ばかりで気がつけば
コンビニエンスストアのごはんを制覇するのが定番となっていた。



名は体を表すというように
彼氏いない歴を更新し続ける万年後ろ向きの幸ではあったが

ひょんな出逢いから縁泉寺(えんせんじ)の僧侶たちに
精進料理を振る舞ってもらうこととなり
http://ippunkan.blog.fc2.com/blog-entry-350.html

そこで料理を通じて人生のアドバイスを受けると
ちょびっとだけではあったが

前向きになれる自分と出逢えるようになっていた。



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と思ったのも束の間

社内で女性の先輩社員と一緒にランチをしていた時
じろじろと幸の顔を見たかと思えば

「太った?」意地悪に聞かれ
「あっ、むくみか」と笑われ

そこへやって来た同僚の女性社員からは
クライアントさんにいただいたと

行列しなければ買えない有名店のチョコのお裾分け。

幸はこんなふうにいただいたことなんてなく
部内のエースでしかも可愛いからもらえるんだよなと
自身のふがいなさと女子力の低さに凹み

先輩から彼女が

「MBA(=経営学修士の学位)持ってるんだって」

と教えられて自分には誇れるものがないなと落ち込み

「理想の自分、意識してる?」
「自分磨きしてる?」

傷口に塩を塗るような先輩からの言葉が刺さった。



職場では別の女性の同僚が

「可能性に賭けてきます」

眩しいくらいに自信に満ち溢れて語り
会社を辞めて農業を始めることを華々しく送り出されるのを

パシリで買ってきた花束を
男性の同僚 → 課長へとリレーすることにアシストする幸。

渡し終え
みんなから新たな旅立ちを祝福される姿を離れて見ていると
傍に居た男性社員から

「サチウスは転職とか考えたりすんの?・・それはないか」

当然とばかりに鼻で笑われる。



家に帰り相変わらずのコンビニごはんで
食べながら Web で転職診断をしてみると

D判定で
転職よりも自分の人生を考えるようにと

診断結果に励まされる。



学生時代の親友たちと月イチの食事会に出掛けると

結婚している親友の子どもが
幸の座っている椅子の下に滑り込んで

「ねぇ、お腹に赤ちゃんいるの?」

食事を終えてお腹が出ていることを純真につっこまれ
母から結婚してないからそれはないと教えられると今度は

「なんで?なんで結婚してないの?なんか問題でもあるの?」

さらに純真につっこまれて苦笑いするしかなくなり

次回の予定を合わせようとしたら
子持ちの親友から冷やかすように「わたしたちとばかり逢ってると」と振られ
もうひとりの親友「まっちゃん」が「彼氏ができた」とまさかの報告。

彼氏いない歴を更新し続ける幸に気を遣って
なかなか言い出せずにいたことを知って更に凹んだ。



まだ遊んでいくという親友たちと別れ
ひとり街をぶらつく幸。

彼氏
結婚
出産
子育て

中学時代から人生の階段を一段も登っていない

またしても万年後ろ向きに戻りつつあった幸は
気がつけば足が縁泉寺へと向かっていた。



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ちょうどその頃縁泉寺では

お檀家さんからいただいた
段ボール箱いっぱいのとうもろこしに歓声があがり

「さっそくとうもろこし尽くしにしていただきましょう」

盛り上がっていた。



前回縁泉寺で

料理見習いの大学生 小木武徳(おぎ たけのり)
お坊さん見習いの唐丸篤(からまる あつし)
住職 源導(げんどう)に

ごはん
お漬物
具沢山の利休汁

を振る舞ってもらったとき

源導から料理に絡めて
心を軽くするアドバイスをしてもらったお礼にと

料理の時源導が頭に巻いていたのを思い出して
街歩きをしていた時に見つけた手ぬぐいを持って

縁泉寺を訪れた幸。



みんなはあたたかく迎えてくれて

本当はとうもろこしの下ごしらえが面倒くさいと
お寺の掃除が残っているのを口実に逃げ出した唐丸に代わって
下ごしらえを手伝ってほしいと誘われると

プレゼントされた手ぬぐいをさっそく頭に巻いてくれた源導に手ほどきを受け
幸は下ごしらえに精を出した。



前回利休汁のレシピを教えてもらって
家で作ってみた時にも思ったことだが
精を出していると無心になれた。



そうして食卓に並んだのは

とうもろこしの炊き込みごはん
ひじきととうもろこしの煮もの
とうもろこしとアスパラガスの白和え
とうもろこしのすり流し
ぬか漬け

レシピ(前回の利休汁のレシピもあり)
http://sachinooteragohan.com/recipe.html#episode2



一品一品に舌鼓を打っていると
正座していた足が痺れてきた。



源導に

姿勢良くいただくことよりも
美味しくいただくことの方が大切だと促され膝を崩すと

小木からこんなことを話し掛けられた。



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小木:夏場は水分を摂り過ぎてむくみやすいでしょう?
幸:えぇ。
小木:薬膳の世界では、とうもろこしは水分を排出する食材だと言われているそうです。

幸:

・・小木さんて、大学生でしたよね?
(うんと頷く小木)
大学で、食べ物系の学部なんですか?

小木:

いえ、大学では経営学を。将来オーガニックレストランを開きたくて、ここで源導さんに料理を学びながらいろいろ勉強中なんです。

幸:大学生でそんなはっきり夢があるなんて・・

小木:

中学の修学旅行で初めてお寺に行って、精進料理を食べて、なんかこうビビッ!ときちゃって。臼井さんもありませんか?こう、なにかにビビッ!ときたことって。

幸:いや、わたしは・・

(そこへ下ごしらえをサボっていた唐丸が美味しそうな匂いに誘われやって来た)

唐丸:

おぉ!
ずる~い!
え~、オレにもちょうだいよ、このスープ!

小木:

すり流しです!
まったく、手伝いもしないで。
ちょっと待っててください。

唐丸:

おっ!
ありがとうございます!

(すり流しを取りに席を離れる小木)

幸:

あの、唐丸さんはないですよね?
人生で、なにかビビッ!ときたことなんて。

(前回出逢った時の印象でチャラい坊主だとちょっとバカにしている幸)
(ない前提で聞いたところ予想外の返答が)

唐丸:えっ?あるよ。お坊さん。
幸:お坊さん?

唐丸:

うん。オレさ、去年までフツーにサラリーマンだったんだけど、脱サラして実家継ぐって決めたの。で、東京でイマドキのお寺のこととか勉強しながら、先輩の源導さんにいろいろ教わってるんだ。

幸:そうだったんですか。

唐丸:

いや、うちの実家さ、愛知のど田舎でチョ~過疎ってんの。お檀家さんもどんどん減っちゃってるし。だからこっちでお嫁さん見つけて、実家に戻ったらオレがお寺じゃんじゃん盛り上げるつもり。

幸:

みんな、すごいですね。
わたしなんかとは大違い。

源導:大違いとは?

幸:

わたしなんて夢があるわけでもないし、彼氏もいないし、結婚なんて現実味湧かないし、ただ流されて生きてるだけなんです。人のこと羨ましいなって思うこともあって・・

(唐丸から目で「なんとかなんない?」と言われ)

源導:

う~ん・・臼井さんが流されていると感じるのは、他の誰かと比べているからではありませんか?臼井さんは、臼井さんなりに一生懸命生きている。違いますか?

無駄な時間なんてないんです。無駄だと思うその時間こそ、とうもろこしのように実をつける芯になるんです。未来を不安に思う時間があるなら、今出来ることをやるべきなんです。

幸:今すべきこと・・
源導:はい。なんだと思います?

幸:さぁ・・
源導:目の前のお膳を、綺麗にいただくことです。

(源導を見るとうんと頷かれた幸)
(色鮮やかな料理が目に映える)

幸:はい。

(特別なことなんてしなくていいんだと吹っ切れた様子でにこやかに箸は進んだ)
(料理と源導の言葉でちょびっとだけではあったがまた前を向けるようになっていた)




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ライフワークのひとつ

ファッションのチカラで じぶん Love ♥
パーソナルスタイリング * モテハピ *
http://ippunkan.blog.fc2.com/blog-entry-20.html

じぶんに自信が持てないファッション初心者の方専属で
「じぶん Love ♥ から はじめよう」をコンセプトに

じぶんにモテる人は同性・異性にもモテる
同性・異性にモテる人は社会にもモテる

じぶんモテ → 同性・異性モテ → 社会モテするじぶんを
ファッションのチカラを味方にしてカタチにしていくお手伝いをしています。



ぼくがスタイリストの役割として大事だと考えているのは
ふたつのスイッチをお客様ご自身で押していただくこと。

お買い物同行や代行
スタイリングのアドバイスなどはおまけみたいなものです。



ひとつは、おしゃれスイッチ。



ぼくにお声がけしてくださるお客様は皆
過去にぼくがそうであったように

「おしゃれしようにもセンスがない」
「あっても残念すぎる」

と思い込んでいる。



でも

ぼくとお待ち合わせで初めて出逢ったときや
お店へと向かう道すがら見掛ける街行く人を見て

「スタイリストさんて、おしゃれですねぇ」
「あの人、おしゃれだなぁ・・・」

つぶやくのを耳にしたとき
ぼくはこんなことばを贈ります。



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ぼくだったり街行く人を見て「おしゃれだなぁ」って思えるということは、お客様の中にもおしゃれのセンスがあるっていうことですよ。センスがなければぼくを見てもなにも思わないし感じないでしょうし、おしゃれだなんて気づきもしないで通り過ぎちゃってるでしょうから。




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すると

蕾がゆっくりと開くように
お客様のお顔にパッと花が咲く。

この瞬間
お客様の中で

おしゃれスイッチが ON になる。



ぼくが考えるスタイリストの仕事は
これがほぼすべてだと思っている。



大切なことはスタイリストが
お客様のおしゃれスイッチを ON にするのではなく

お客様ご自身がスタイリストのことばをきっかけに
ご自身でおしゃれスイッチを ON にすること。



ご自身で ON にするからこそ
そこに自信が芽生える。

自信が芽生えるから
こころの扉が開き

「こんなファッションをしたい」
「あんなふうになりたい」

そんななりたいじぶんの姿が
したかったおしゃれが
閉じ込めていた想いが

枯れることのない泉のように
お客様の内面から

もう止められないほどに溢れてくる。



あとは

それをカタチにするためのお手伝いを
ほんのちょっとさせていただくだけ。

それだけで
お客様は

見違えるほど輝く。



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もうひとつのスイッチは

パーソナルスタイリング * モテハピ * のコンセプトである
「じぶん Love ♥」のスイッチ。

着火点と言い換えてもいい。

これもまたお客様ご自身で気づき
ご自身で押していただくことで

その後のファッションのチカラが
相乗効果となって加速させてくれる。

じぶん Love ♥ スイッチは内側から
ファッションのチカラは外側から

サンドイッチで。



昨日もご紹介いただいたお客様とお買い物を終えて
お客様オススメのお店で冷麺をいただいていたときだった。

ぼくはこんなことを話していて
お客様に気づいていただける機会をと思っていたら

望外にもじぶんの方が気づきを得た。



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じぶん Love ♥ って、特別なことじゃないんです。ファッションのチカラは相乗効果で加速させるもので、実はもうすでに「自分のことが好きになれない」っておっしゃる方もじぶん Love ♥ だったりするんです。

毎日食べること、毎日歯を磨くこと、毎日お風呂に入ること、毎日顔を洗うこと、毎日下着を着て服を着て出かけること。例えばで挙げたんですけど、これってぜ~んぶじぶんのこと大切にしてるからなんですよね。もしじぶんのことが本当に大嫌いだったら食べないし、歯も磨かないし、お風呂にも入らないし、顔も洗わないし、洗濯もしないし、服なんて裸でなけりゃいいやって適当になってると思うんですよね。でも、お客様はそうじゃない。

あっ!
・・・そういうことかって思ったことがあって。

この前見たドラマで『サチのお寺ごはん』っていうのがあって、「臼井幸」っていう名前の通り幸薄いオーラ全開の万年後ろ向きの女性が主人公のドラマがあるんですけど、ひょんな出逢いからお寺で精進料理をいただく機会に恵まれて、そこでの人とのふれあいからちょびっとずつ前向きになっていくっていうドラマなんです。

この前はとうもろこし尽くしの回で、幸の周りの人がどんどん先へ先へと進んでいって、自分は夢もないし彼氏もいないしで、なんだか取り残されてるって焦っちゃう心情を吐露するんですね、お寺の人たちに。そんな幸のこころに寄り添おうとお寺の住職である源導さんが『臼井さんが流されていると感じるのは、他の誰かと比べているからではありませんか?臼井さんは、臼井さんなりに一生懸命生きている。違いますか?無駄な時間なんてないんです。無駄だと思うその時間こそ、とうもろこしのように実をつける芯になるんです。未来を不安に思う時間があるなら、今出来ることをやるべきなんです。』って語りかけるんです。『今すべきこと?』って戸惑う幸に源導さんは、『目の前のお膳を、綺麗にいただくことです。』って背中を押す。

ぼく、最初観てたときって正直、『他の誰かと比べているからではありませんか?』なんて、「そんなこと判ってるよ。わかってるけどそうしちゃうから悩んでるんだろう?」って思ったし、『無駄な時間なんてないんです。』も、両親に虐待されて育ったり、学校で見た目を理由にしたいじめに遭って自殺するまで追い込まれた日々なんて、ぼくの人生には必要ない無駄な時間としか思えないって思ったし、『未来を不安に思う時間があるなら、今出来ることをやるべきなんです。』も、「今ココ」とか「マインドフルネス」とか言ってもう聞き飽きたし、「それができないで思い煩うから悩んでるんだろう?」って思ってたんです。どれもこれもありきたりだなって。万年後ろ向きな幸って筋金入りのマイナス思考のぼくと似てるから、つい重ねてしまって。

でも今話してて思ったのは、日々のささやかな営み、買い物に行くこと、ごはんを作ること、食べること、歯を磨くこと、お風呂に入ること、顔を洗うこと、掃除すること、洗濯すること、毎日下着を着て服を着て出かけることだったり。

人生変えようって思うときって、清水の舞台から飛び降りるって言いますか、お金の痛みを伴ってエイッ!って飛び込むもの、転職とか留学とか、国内外の旅行とか、大学や専門学校への進学とか、資格取得とか自分への投資とか、婚活とか結婚とかなにか特別なことをしなくっちゃって思ってたりしますよね、ぼくもですけど。今までと同じことしてちゃダメで、それで違う結果をなんてクレイジーだとばかりに特別なことして一発大逆転狙っちゃう。こういうのじゃないとカウントされないって思ってるんですよね、人生変えるものに。

人生変えるために買い物に行く、人生変えるためにごはんを作る、人生変えるために食べる、人生変えるために歯を磨く、人生変えるためにお風呂に入る、人生変えるために顔を洗う、人生変えるために掃除する・・あとなんでしたっけ?あっ、そうそう、人生変えるために洗濯する、人生変えるために毎日下着を着て服を着て出かける。そんなに気張ってる人っていないし、いたら滑稽ですよね。だから人生変えるものにはノーカウントなんですよね。

でも、そんなノーカウントなものこそが源導さんのことばを借りるなら、『とうもろこしのように実をつける芯になるんです』なんですよね。だから幸に、『目の前のお膳を、綺麗にいただくことです。』って背中を押した。

芯がなければ実はつかない。
ノーカウントだったものが、しんしんと降り積もっていつしか芯になる。
ダジャレみたいですけど。




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芯がなく実だけのとうもろこし
実がパラパラ~と崩れ落ちゃうのを想像して
「そりゃダメだわな」ぼくとお客様は笑い合っていた。



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Aretha Franklin This Bitter Earth (Columbia Records 1964)
https://www.youtube.com/watch?v=_bD6WSBVRsg

Dinah Washington ft Belford Hendricks & His Orchestra
This Bitter Earth (Mercury Records 1960)
https://www.youtube.com/watch?v=HqexsTeRoCw