白色の自己主張

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白色の自己主張
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photo credit:gregt99 via Flickr (license)



白色の自己主張 ~ 何色にも染まるたおやかさ 染まらない凛凛しさ ~



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                  334通目



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金曜ドラマ『ハロー張りネズミ』#7『下赤塚ロマンス』に、こんな場面があった。
http://www.tbs.co.jp/hello-harinezumi/



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人情とおせっかいがモットーのあかつか探偵事務所に
近所の八百屋店員 星野健太(ほしの けんた)が訪ねてきた。



ある女性のことを調べてほしいという。



その女性は何曜日とは決まっていないが
閉店間際の夜9時半頃になるとふらりと店を訪れ
ネギを一本だけ買って帰る。



そんな日が何日と続くうち

いつしか星野は彼女に惚れてしまい
いつ来るとも判らない彼女のためにネギを一本必ず取り置きし

会える日を
ネギを共通の話題に話せる僅かなひとときを

密かな楽しみとするまでになっていた。



惚れたのは見た目だけではない。

いつだったかネギ愛溢れんばかりに
生産農家さんのこだわりなど熱弁を振るったところ彼女が笑ってくれた。

あの笑顔が今も胸に焼き付いて離れない。




この世にネギよりも美しいものがあるって初めて知りました!




ネギ愛にも負けないほどに
溢れんばかりにネギ女への想いを語る星野をよそに

応対した事務所所員ゴローとグレは
http://www.tbs.co.jp/hello-harinezumi/character/

こういうご時世だから
調べあげて調査報告した後のことを不安視。



案の定

報告を受けたらデートに誘いたいと嬉々として語り
彼女の隠し撮りした写真までノリノリで見せる星野。

そのあまりの美貌に職業差別するわけではないが
高級美人 OL と冴えない八百屋のブサイク店員では

あまりにハードルが高過ぎて釣り合わないと思った。



そんな本音を告げられず即断は避けたものの

酒好きで真夏にガンガンエアコンをかけて鍋パーティーしたい所長
かほるの『恩を売っておけばネギが安く買える』安直な一言で

ゴローは同僚の蘭子(らんこ)とペア組み
素行調査をする羽目になった。



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女性は外資系企業の総務課に勤務する
中村七菜子(なかむら ななこ)29歳。

就業後土日を除く毎日違う男と落ち合っては

装飾品をおねだりし
高級な飲食店でごちそうになり

全員と一夜を共にしていた。



ゴローは調査で
そんな様子を目のあたりにする度にイライラが募った。



ドラマの最初の依頼

蘭子の父の死の真相を探る事件を巡り
真相を知られたくない裏社会の連中から狙われた蘭子を守るために体を張ってから

依頼人と事務所所員という関係を越えて
蘭子へのほのかな恋心が芽生えていた。



ほどなくして蘭子がホステスを辞め
まさかの事務所所員へと転身すると

行動を共にすることが多くなり
ますます恋心は膨らんでいくが

いつもならバカでスケベで勢いで行ってしまえるところが
なぜか蘭子にはそれが出来ず
気持ちも伝えられずで

悶々とする日々を送っていたからだった。



そこへ調査を始めると

七菜子が毎夜男から買ってもらう装飾品や
連れて行ってもらう高級飲食店のことをことごとく蘭子が知っていることが

ゴローの心をざわつかせた。



蘭子の前職は、銀座のホステス。
蘭子もこんな風に男に貢がせていたのではないかと。



そんな思いからゴローは七菜子のことを


まるで男を日替わり定食のように喰い漁る魔性の女


八つ当たりのようにこき下ろすが蘭子は

男性から贈られた装飾品を会って以降一度も身に着けていないのは
すべて売ってお金に変えているはず。

外資系企業に勤務する OL にしては同僚とランチに出掛けることはなく
いつだって近くの公園で質素な手作りのお弁当を広げている。

身につけている洋服・バッグ・靴は
全身1万円程度で揃えられるものばかり。

お金を得ることへの執着と質素な暮らしとの落差
ひっかかりを唱えてゴローとの間に波風を起こす。



そんな蘭子にゴローは


あの女は男の純情を踏みにじる、とんでもねぇビッチなんですよ!


ますますムキになると蘭子は

星野の気持ちは知らないし
星野と付き合っているわけでもないのだから

純情を踏みにじっていることにはならないと七菜子の肩を持つ。



どうしてあんなビッチの肩を持つのか。



それがますますゴローは気に入らず

自分は星野の味方だと言わんばかりに
追加の調査も踏まえた報告の席で一切の手心を加えることなく

洗いざらい七菜子のことを報告した。



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本当の姿を知って愕然とするかと思われたが星野は

月曜日から金曜日まで男を取っ替え引っ替えしているが
土曜日と日曜日は空いている。

取っ替え引っ替えしているということは
まだ本命の彼氏は居ないということ。

バカが付くほどポジティブに捉え
諦めさせようとするゴローの思いは空振りに。



これで心置きなくデートに誘えると
笑顔で事務所を後にした星野だったが

事務所を出てしばらくすると
周りに誰も居ないのを確かめると

言葉にならない想いが溢れて泣き叫んでいた。



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事務所の窓からその姿を見てしまった
あかつか探偵事務所の面々。



やりきれなさが残り

グレはゴローに
『手心を加えてもよかったんじゃないのか』と言うが

ゴローはグレに
『調査したことをすべて報告するのが探偵の仕事だ』と反論。



その言葉を受けて蘭子が
『本当にすべてを報告したんだろうか』疑問を投げかけた。



確かにゴローとペアを組んでこの目で見てきたことは事実だが

多額のお金を持っているはずの七菜子が
家賃の安いアパートに今もって住んでいる理由は?

手頃な価格帯で揃えられる服ばかりを着ていたのはなぜ?

同僚とランチに出掛けずに
毎日お弁当を作って節約していたのはなぜ?

別の事情があるはずだと。



この事務所は人情とおせっかいをモットーにしているのだから

頼まれてもいないことや面倒なことにも
望んで首を突っ込んでいく事務所なのだから

別の事情にも踏み込んで調べたらと提案するとゴローは

どうして毎度毎度食ってかかるのか
どうして毎度毎度七菜子の肩を持つのか

蘭子への伝えられない想いと綯い交ぜになって
言ってはいけない言葉を

ニヤニヤしながら口にしてしまう。



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蘭子さん、あれじゃないの?自分も同じようなことしてたからそう思うんじゃないの?男どもに貢がせて、うまいメシ食わしてもらって、いろんなもの貰ってたんでしょ?でも、ホントのわたしはそうじゃない。そうじゃなかったって思いたいんじゃないの?




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グーパンチが飛んでいた。
蘭子にも、ゴローへの秘めたる想いがあったからだった。



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調査報告を受けた後七菜子が店を訪ねてきてくれても
目にした事実が目を曇らせ
もう前のように接することが出来なくなってしまった星野。



なぜ殴られたのか判らず
やけっぱちになって下赤塚の街をふらつき

星野が働く店の前を通りかかって
蘭子に殴られた痕を気づかれると

『教育的指導を受けた』と濁したゴロー。



お互いそれぞれの想いは告げずに
居酒屋へと繰り出してやけ酒を呑んだ。



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星野:もうきっぱり、七菜子さんのことは諦めます。

ゴロー:

いや、違うでしょ。
諦めるじゃなくて、あんな女はこっちから願い下げだって思わなきゃ。

星野:いやぁ・・僕なんかがそんなこと・・

ゴロー:

なんでそんな卑屈になんの?
アンタのが上なんだよ。

星野:えぇ?

ゴロー:

アンタは、純粋で、真面目で、最高の男なんだから。向こうは見かけだけで、何股もかけて、男のこと財布としか思ってないような最低な女なんですよ。

(ゴローとふたり、ねちねちとくだを巻いていたが一気に酔いが醒めたように)

星野:七菜子さんのこと、そんな風に言わないでください。
ゴロー:えぇ?

星野:今はそんな風にしてるかもしれないけど、本当の彼女は違うんです。
ゴロー:あぁ?

星野:

彼女は、ネギの話を聞いて、こう・・(笑顔の回想)笑ってくれました。
天使みたいな笑顔でした。
あれが本当の彼女です。

ゴロー:

だからそれは幻想。
本当の顔がね、こう、(宙を順々に指差し)いくつもあるんだよ女は。

星野:

探偵さん。
見損ないましたよ。
あなた、男として最低ですね。

ゴロー:なんでだよぉ。

星野:

いいじゃないですか!
女の人がいろんな顔持ってたって。
好きな人の一番綺麗な顔見てあげるのが、男じゃないですか!

(ブサイクな星野にまさかのド直球を喰らって言葉が出ないゴロー)
(蘭子のことが心を埋め尽くしていた)




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好きな人の過去を知りたいなら

きょうまで生きてきた過去の積み重ねで
今、目の前の彼女が居る。

その『過去』だけで充分だと思います。



『目を瞑る』のではない。
いろんな顔の中から一番綺麗な顔を見てあげるということ。



先日他界した父とは
幼少期の虐待を巡り確執があり長年不仲でしたが

人生の最期に良い感情
幸せな記憶を心に刻んだ父を見送れたということは

赦すでもなく 赦さないでもなく
http://ippunkan.blog.fc2.com/blog-entry-289.html

そんな第三の場所へのソフトランディングを経て
そうせざるを得なかった人の心に心を寄せて

一番綺麗な顔を見てあげることができたからなのかもしれません。


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