器、過去、ほんとうのわたし - 白色の自己主張
~ 何色にも染まるたおやかさ 染まらない凛凛しさ ~

器、過去、ほんとうのわたし

Photo:Laughing By:instragram.com/amirkuckovic
Photo:Laughing By instragram.com/amirkuckovic



白色の自己主張 ~ 何色にも染まるたおやかさ 染まらない凛凛しさ ~



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ドラマ24『新宿セブン』第9話に、こんな場面があった。
http://www.tv-tokyo.co.jp/shinjuku_seven/



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東洋一の歓楽街 新宿歌舞伎町で『七瀬質店』を営む
人も物も偽物を憎きまでに嫌う七瀬(ななせ)
http://www.tv-tokyo.co.jp/shinjuku_seven/cast/



今から30年前

裏社会を生きる父親代わりの男『セン』と共に
日本~アジア~日本と放浪している時

石を扱う露天で高価な物を当てるよう問題を出された。



まだ幼く鑑定眼を持つには程遠かったが
センは外した七瀬に石には運や相性があると言い


『坊が気になったんなら、それは何か引き寄せられる理由があるんだ』


眠っている自分の力を引き出す石
『セイクリッドセブン』のネックレスをプレゼントしてくれた。



あれから30年後



七瀬は『新宿一の鑑定士』と呼ばれるまでの確かな鑑定眼を持ち

貴金属やブランドバッグなどにとどまらず
臓器や拳銃までありとあらゆるものが持ち込まれる質店を営み

裏社会にも通じ
『七つ屋』の愛称で引っ張りだこになりながら

人と物を巡る物語から絡み合った糸を解きほぐし
依頼人の悩みや問題を解決へと導いていく。



結婚し

『通帳はひとつにまとめたほうがいいよね』

妻から言われ
通帳を渡したその日から音信不通。

誰も信じられなくなり
仕事も失い
全財産をなくして新宿に流れ着き

死のうとしたところを七瀬に拾われた『健太(けんた)』。



『わたしを鑑定してください』

ある日血の付いたパーカーを着て質店に現れたものの
記憶喪失で何も憶えていない。

それ故所持品だけでは正確な鑑定は出来ないと
記憶が戻るまで七瀬・健太と共に働くことになった『華(はな)』。



コリアンバー『エルドラド』オーナーママで
七瀬の過去も知る情報通の『エリカ』

同じく新宿という街の情報通で
七瀬らの行きつけの中華料理屋を営む『シノブ』

彼らと共に。



新宿
この街で『セン』のことを調べ
『セン』を殺したヤツを見つけるために。



セイクリッドセブンのネックレスを片時も離さずに。



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質店に健太と共に居候していた華が
ある日突然姿を消した。



血の付いたパーカーを着て質店に現れ
記憶喪失で何も憶えていない華だったが

止まり木である新宿の街に根を下ろし
七瀬や健太と共に街を歩き
社会や人の表裏を嫌というほど目にし

行く先々での出会い
華の過去を知る人との出会いや所持品の返却を糸口に

パズルのピースがカチカチと組み合わさりながら
忌まわしい記憶が戻り始めていた。



名前は、『ユキ』。

鏡に映るもう一人の自分から教えられた
母親の彼氏にされたことに苦しむ自分。

蛇のように絡みつき金をせびる母親の存在と
スマートフォンに残る執拗な着信履歴。

そんな呪縛から逃れられずに

スマートフォンの出会い系アプリを使って
一緒にラブホテルへと入った男がシャワーを浴びている隙に
現金と換金できるものを抜き取って姿を消す。

風俗に身を置く一方
そんなことを繰り返していた。



ある日もカモを連れてラブホテルへと入り

男がシャワーを浴びている隙に
現金と金目のものとしてライターをめざとく見つけて盗み

いつものようにオサラバしようとした時だった。



激しく扉をノックする音が響いたかと思うとドアを蹴破り
いかにもその筋の物騒な連中がなだれ込んできた。



身の危険を感じ

ドアが蹴破られる前に
クローゼットの中へと逃げ込んだ華。

隙間から見える先では
身も凍るような事態になっていた。



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シャワーを浴びている男を引きずり出したかと思うと

いきなり青龍刀で切りつけ
言いようのない死の恐怖と苦痛を与え

盗み出したものを出せと迫っている。



切りつけられた男の名は
張栄志(ちょう えいじ)。

新宿の街を牛耳るチャイニーズマフィア
黄幇会(こうばんかい)の構成員ではあったが

因縁のある黄幇会を壊滅させようと手段を選ばず目論む
新宿西署の刑事 近藤昭人(こんどう あきひと)の手引きで内通者となり

壊滅へと繋がる証拠の入ったロッカーの鍵を盗み出し
ライターに隠して持ち出していたのだった。



痛みと死の恐怖からライターの中だと口を割ったものの
所持品をいくら探してもライターは出てこない。



しびれを切らした黄幇会構成員らは

命乞いする声など聞こえないとばかりに
なんの迷いも躊躇もなく青龍刀を再び振り下ろし

裏切り者に死の制裁を加えた。



その後も部屋をくまなく探す黄幇会構成員ら。

なんとしても見つけなければ
ボスの王(ワン)から制裁が下る。

制裁を恐れまだ調べていないクローゼットへと
構成員の一人が手を伸ばした時だった。

パトカーのサイレンが鳴り響き
厄介事を避けたい連中は

潮が引くように消えていった。



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目を醒ますと華は
クローゼットの中でへたり込んでいた。



すぐに異変に気づいた。
記憶が無いのだ。

クローゼットの中から飛び出し
所持品を床にぶちまけた。

持ち物を見ても
自分が誰か判らない。

なぜここに居るのかも判らない。



あまりの恐怖から
記憶喪失になっていた。



ただクローゼットの隙間から見た
断末魔の叫びと血しぶきの様だけは
鮮明に記憶に刻まれていた。



惨劇のあった場所へと向かうと
血しぶきも死体も何もない。

自分が見たあの光景は何だったのか。

その時だった。
パーカーにぽたりと滴が落ちた。

見上げた先の天井には
氷柱の赤ん坊のような血の滴があった。



あの後あの男がどうなったのか。



気が付くと華は

恐怖と錯乱から着の身着のまま新宿の街へと逃げ出し
行くあてもなくふらついた路地の先に見た『7』の文字の看板から

七瀬の店を訪れていた。



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本物にこだわる七瀬は

記憶喪失の華の所持品だけでは正確な鑑定は出来ないと
とりあえずとして500円の鑑定結果を出したが

『記憶が戻るまで質店をおまえの居場所としていい』

正確な鑑定は記憶が戻ってからあらためてと
居候させることとなった。



姿を消した華が鑑定テーブルの上に残していったのは
偽りの自分の価値500円硬貨だった。



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姿を消して狼狽する健太に対して七瀬は

記憶が戻ったのだからもう戻ってこない
去る者追わずを貫くが

健太は仲間だからと
なんとか力になりたいからと
エリカやシノブに協力を求めて

自ら『手伝いたい』と申し出てくれた
シノブの店の看板娘 栞(しおり)と共に探しに出掛けていった。



新宿中のネットカフェなど
華が立ち寄りそうなところをしらみつぶしに当たるものの
一向に足取りは掴めない。



所持金も少なく
そんなに遠くまでは行けないはずなのに。



栞がシノブからそろそろ戻ってくるよう連絡を受け
どこへ行ったんだろうと重い足取りで
独り今一度探そうかと顔を上げた時だった。



あれほど駆けずり回っても会えなかった華が居た。



だが華は、健太の顔を見ると一目散に逃げていった。

健太は後を追いかけ
何も告げずに突然姿を消した華と

なんとか
なんとか話したいと思った。



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健太:

(息を切らし掴んだ手を離すまいと)なんで逃げるの・・
華ちゃん。
一緒に帰ろ。

華:

(健太の手を振り払い)アタシの名前、ユキだし。
っていうか、なんなの帰れって。
あそこ、アタシの家じゃないんだけど。

(意地を張る華の両肩をギュッと掴んで)

健太:

黄幇会と何があったのかは知らない。でも、七瀬さんならなんとかしてくれるって。僕も華ちゃんのこと、守りたいって思ってる。華ちゃんがどんな過去を背負ってたとしても、僕はそれを受け入れるから。だから、一緒に七瀬さんとこ帰ろ。

(両肩から両手を握ってなんとか連れ帰ろうとする健太)
(今まで逸らしていた目線を合わす華)
(睨みつけるような目なのだが健太は目を合わせてくれたとホッとする)
(そんな健太に)

華:

アタシの何が判るの?
何もかも与えられて生きてきたくせに。

健太:えっ?・・

(再度手を振りほどき)

華:

アタシは産まれた時から何もなかった。
お金も愛情も貰えなかった。
アンタとは住む世界が違うんだよ。

健太:そんなことないよ!

華:

アタシの本当の仕事、泥棒だから。
男騙して、一緒にホテル行って、シャワー浴びてる間に財布からお金抜いてた。

健太:えっ?・・

華:

あのライターも、一緒にホテル行った男が持ってたの。
ヤダよね、そんな女。
軽蔑するよね?

(落胆と幻滅が入り混じり言葉を失ってうなだれる健太)
(突然の告白とはいえやっぱりなという反応を見た華)

華:守るとか受け入れるとか、そんな簡単に言わないでよ。

(健太を独り置いて再び新宿の街ヘと消えていく華)
(振り向くことも追いかけることも出来ない健太)




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立ち止まり振り返った華の目には
うなだれたまま動けない健太の姿があった。



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黄幇会の構成員らは
華が七瀬質店を最初に訪れた時持ち込まれたライターの存在を掴み

七瀬が居ない時を見計らって質店を訪れ
首元にナイフを突きつけて健太にライターを出すよう脅したり

七瀬
健太

エリカ
シノブ
近藤等を始終マーク。

華がなんらかの事情を知っていると踏んで
華と共にライターの在り処を血眼になって探していた。



華は自分が持ち込んだライターのせいでお世話になった

七瀬
健太
エリカ
シノブ

彼らに迷惑がかかることだけはどうしても避けたかった。



本当は力になってほしかったが
巻き込む訳にはいかない。

だから

心配して探し出してくれた健太の存在や想いは嬉しかったが
あえて健太が幻滅するような過去や行いを暴露。

本心はこれ以上関わり
命にまで危険が及ぶことを避けたいと思うが故の冷淡な態度だった。



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傷心の健太は、シノブの店を訪れていた。



落ち込んだ様子の健太を見てシノブは
『サービス』と店自慢の餃子を出してくれるが箸は進まない。



うじうじ悩むとも後悔とも判らない想いをつらつらと重ねる健太に
シノブはこう寄り添って言葉を掛けた。



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(華を引き止められなかったことを悔やみ)

健太:

僕、なんで止められなかったんですかね、華ちゃんのこと。過去なんて関係ない、華ちゃんは仲間だから、何があっても受け入れるって思ってたのに。

(傍らに立ち煙草を吸いながら)

シノブ:他人をまるごと受け入れるって、難しいんじゃないの?
健太:えっ?

(灰皿で煙草を消して健太の隣の席に座るシノブ)

シノブ:

受け入れるっていうのはさ、健太の器の中に華ちゃんを居させてあげるってことでしょ?でも、友達とか家族とか全部受け入れてたら、健太の器はいっぱいになっちゃうじゃない。

健太:じゃ、どうすれば・・
シノブ:存在を認めてあげればいいのよ。

健太:存在を認める?

シノブ:

そう。
華ちゃんは華ちゃん。
健太は健太。
ただお互いの存在を認めてあげればいいのよ。




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あれほど進まなかった箸が、なんとか進んでいた。



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『甘えるな』の自己責任
『頼るな』の自助努力
『正社員で家族を養って一人前』の男らしさ・自立

それこそまだ物心さえつかないうちから高校を卒業するまで
ぼくは両親から365日皆勤賞の虐待という形で

この THE 昭和の価値観を叩き込まれてきました。



この痛みと共に憶えなさいとばかりに
深く深く執拗に叩き込まれたために
ぼくはこの価値観から逃れられませんでした。



やがてこの呪縛は

おとなになって女性とお付き合いするようになって
『男の器』ということばにどうしようもなく惹かれ

苦しめられることへと繋がっていくこととなりました。



『銀○のママ』などという人が
お客様と接した知見として披瀝する御著書のタイトルに
よく使われるようなことばです。



いつかの時代のなにかのスローガンみたいですが

『大きいことは良いことだ』みたいに
男としての器が大きいほど男らしい。

軟弱なぼくはそんな男性像に憧れていましたから
相手をまるごと受け入れられるような男でありたいと

取り憑かれたように思ってきました。



『器が小さい』
そう言われたくないと必死でした。



両親から

YouTube の世界最多動画再生数よりも多いんじゃないのかと思うほど
『出来損ない』365日皆勤賞で否定され続けたように

ぼくにとってこう言われることは
全否定と同じで堪えました。



でもよくよく考えれば
ぼく自身の器なんておちょこ程度。

相手をまるごと受け入れるなんて出来ずに
ただただじぶんを犠牲にして
おちょこをどんぶりや水瓶のようにしようとして

健太ではありませんが
軽軽なことを口にして

相手を傷つけてしまう。



そして、じぶんをも傷つけてしまう。
惨めさや生きづらさからの自殺未遂という形で。



そんなことばかりを繰り返していました。



そうした痛みの先にあったものを
自ら掴んだことばで言い表すのなら『男の器』とは

どんな相手も相手の人生もまるごと受け入れられる度量の大きさではなく
存在を認められる寛容さ。

そう思えるようになってからぼくの人間関係や人生
特に『家族関係』と『恋愛関係』はぐんと上向いてきたように思います。



おちょこ程度と男としての器が小さかったから

死なない程度に大怪我こそしましたが
早々に白旗を上げることが出来て

『まるごと受け入れる』ではなく
『まるごと存在を認める』を選ぶことが出来た。



これでいいと思います。
これがいいと思います。



だって、どちらも相手を認めることに変わりはないのですから。




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photo credit:takasuii via Flickr (license)