白色の自己主張

ARTICLE PAGE

スポンサーサイト

スポンサー広告
  • comment-
  • trackback-
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

『不合格』『不採用』になっても拍手を贈る君に

白色の自己主張
  • comment-
  • trackback-




白色の自己主張 ~ 何色にも染まるたおやかさ 染まらない凛凛しさ ~



                    *



                  346通目



                    *



友人が聴かせてくれたちょっと素敵なひとときから。



                    *



今では友人となった『たまき(名字ではなく下の名前)』と

仲良くなったのは
ぐっとこころの距離が縮まったのは

こんな感性が互いに合ったからでした。



ぼくには、【先約があるとうれしい】そんな想いがあります。

DVDを借りようと思って TSUTAYA へ出掛けたら
お目当ての作品が借りられていた。

洋服を見に出かけて『これいいな』と思ったら
欲しいサイズや色が売り切れていた。

求人広告を見て『ここで働きたい』と思って応募したら

既に応募が殺到していて受け付けが締め切られていたり
面接に大勢の方が来られているのを見たときなど

なぜだかうれしくなるのです。



それはじぶんが『いいな』と思ったものを
同じように『いいな』と思ってくれたということだから。



先を越された
ライバルが増えるではありません。



『残念』ではなく

借りられて
買えて
応募できて
たくさんの応募があって

『よかったね』と拍手を贈りたい。



勤め人をしていた頃の仕事探しで

面接に臨んでいる段階では後ろ向きな言い方になるのですが
熱意がないということではないのですが

選考の結果不採用になったときも同じで
本来なら悔しがるところなのでしょうけれど

『よかったですね、いい人が見つかって』

が素直な想いでした。



意外なことばが口をついて出ると
採用担当者様は目を丸くされるか
電話ですと二度聞きされたりしますが。



(後日このことばを憶えていてくださりお声がけされることも)



ご縁がなかったとはいえお金をかけて求人広告を出稿し

『応募してきてくれるだろうか』
『良い人いるだろうか』

ハラハラドキドキをお持ちの企業様にとって
一緒に働きたい方と巡り逢えたのですから。



友人たまきもぼくと似ていて

高校受験
大学受験
就職活動で第一志望に落ちても

自分が不合格になったことで
不採用になったことで誰かが代わりに一人受かっているのだからと

合格した人
採用された人に拍手を贈ってきた。



おバカと思われるかもしれませんが
お互いこんな考え方の持ち主ですから

貧乏くじを引いたり
損な人生を歩むことにもなるのですが

そうなり続けないところに

『人生って、なかなか愛嬌あるじゃん』

思ったりします。



                    *



高校受験
大学受験
就職活動で第一志望に落ちても

自分が不合格になったことで
不採用になったことで誰かが代わりに一人受かっているのだからと

合格した人
採用された人に拍手を贈ってきたたまきは

大学卒業後求人広告の代理店へと就職。



そこは

脳みそまで筋肉でできているのかと思うほどの
体育会系のノリ一本槍で営業をしているイケイケの会社。

初日一回こっきりの名ばかり研修を午前中で終えて
入社一日目の新人たまきに課されたノルマは

一日(=実質午後から)で飛び込み営業100軒
一ヶ月で100枚の名刺を貰ってくること。



地図を渡され
その日に回る区域が蛍光ペンで囲ってあります。

囲ってある場所のお店というお店
会社という会社を一軒一軒飛び込み営業していく。

ビルがあれば上から下まで一軒一軒
飛び込み営業していくというものでした。



たまきは、飛び込み営業を拒みました。

心が嫌がったからです。
納得がいっていないからです。

当然先輩や上司からはこってりしぼられます。

『新人のくせになに言ってんだ』と叱責され
『会社に対してなんの貢献も出来ないぺいぺいが』と罵られる。



それでも考えを曲げないたまきに先輩や上司らは

『断られ続けてると、そのうちどうやったら断られないか判ってくる。それがこの研修の目的だ』

『新人時代の飛び込み100軒・名刺100枚のおかげで、ここはイケる、ここはダメが入る前に判るようになる』

『土下座して、頼み込んで、契約獲った』
『ヒールが折れるまで、血尿が出るまでやった』

飛び込み営業で学んだこと
身に付いたこと
武勇伝を誇らしげに語り

だから今のトップ営業マンとしての実績や地位があるのだと
平成の世にもかかわらず前時代的な熱弁を振るうのです。



そんな熱に押されてもたまきはすごいなとはまるで思えず
むしろ大事なことが致命的に欠けていると思いました。



どの先輩も上司の言うことも

自分
会社
数字

のことしか頭にない。



飛び込み営業は、相手の時間を無駄に奪うことです。
なぜなら、本来来るはずのない人なのですから。

招かれざる客。
いや、『客』とも呼べない存在です。
ただただ邪魔なだけです。

当然先方は予定が狂います。

予期せぬ訪問への対応に
割かなくてもよい時間を割かなければなりません。

時間とは、利益の源泉です。
先方の利益を同時に奪うことです。

体を休めている人なら
資本である健康を損なうかもしれません。



そういった相手を思う気持ちがないところに得たものなど
相手の時間を無駄に奪って成し遂げた実績など
恥ずかしくて胸を張れるわけがない。



入社一日目の新人に課されたノルマ

一日で飛び込み営業100軒
一ヶ月で100枚の名刺を貰ってくることを拒否したことでたまきは

即日戦力外通告を受けて営業職から外され
『商品管理部』というありもしない部署をでっちあげられ

暗くて狭い
窓もないほこりまみれの倉庫で

一日中来る日も来る日も
スーツやワイシャツを汚しながら

不要になった山積みの新聞や雑誌を束ねることに。



飛び込み営業を拒否するなら
代わりに契約をいただける方法を自分の頭で考え実践する。

そんな営業マンとしての機会も与えられず
その日からまるで子どものような陰湿ないじめも始まり

出口の見えない日々にたまきは心身を病み
就職から2ヶ月で退職することとなってしまいました。



                    *



大学進学を機に一人暮らしをしていましたが

失業し
生活を切り詰めなければならなくなったため

頼み込んで実家に身を寄せることになりました。



ただ無気力な日々が続き

就職活動はおろか
日常生活さえままならない。

やがて蓄えも底を尽き
ご両親に面倒を見てもらうまでになっていました。



厳しいご両親からは

『早く働け』

心身の不調は目には見えない病ですから
怠けているとしか映らないのでしょう。



たとえ求人広告を目を皿のようにして見ていても

履歴書を書いて送る準備をしていても
応募の電話をしていても
面接に出掛けていたとしても

目に見える成果がなければ
一日遊んでいると映るのでしょう。



『働かない』
『働けない』

たまきは後者ですが
ご両親の目にはどちらも同じに映る。



喧嘩が絶えなくなっていきました。



このままではいけない。

判っている。
でも、体も心も言うことを聞いてくれない。

一旦外れたレールに戻ることは
口で言うほど簡単ではありません。



親の庇護にあるのだからと
せめて家事手伝いでもと思うのですが

『そんな暇があるなら仕事を探しに行け』
『動けるなら働け』

にべもない。



家庭内でも居場所をなくし悶々とする中で

せめて
ささやかでも社会の一員になりたいとの想いから

家の前が道路になっているのですが
街路樹が落としていく大量の落ち葉を掃除することにしました。



家族に知られるとまたやんややんやと言われますから
夜中にこっそりと起きて。



季節はもう秋になっていました。



                    *



こんな自分でも社会の一員になりたい。



晴れの日も
雨の日も

新聞配達のように毎日毎日夜中の3時頃に起きて
家の前から始めて

端っこの信号から端っこの信号まで
100メートルほどの間にある街路樹が落とす落ち葉を

軍手
ほうき
ちりとり
ゴミ袋を持って

雨の日はかっぱを着て掃除していました。



そうして2週間ほどが過ぎた頃です。



いつものように掃除していると
黒塗りの高級車がすぐ傍に静かに止まりました。

ドアが開き
運転席から降りながらこちらを見た男性が

『オイ!』

鋭い声を掛けてきました。



                    *




(この出来事を話しながらぼくへの質問)

たまき:ヒロさんだったらどうしま
ヒロ:逃げる!

たまき:

早っ!
ははは、即答ですね。

ヒロ:(左手の指を折りながらひとつひとつ挙げていく)

夜中の3時。
黒塗りの高級車。
出てきた人が、いきなり『オイ!』。

この3つって言ったらもうあれじゃない。
オラオラ系でしょ。
逃げるね。

たまき:

ですよね。
僕もほうきとかほっぽりだして逃げたんですよ。
ヤバイヤバイ。
次のひとこと、『カネ出せ』だと思ったんで。
そしたら、違ったんですよ。

ヒロ:

はっ?
えっ?
どういうこと?
オラオラじゃないの?

たまき:

その人、社長さんなんですよ、後から判るんですけどね。毎朝うちの前の道、車で通ってて、3時頃に。夜中に独りでもくもくとやってるんでいつもいつも、『なんでアイツ掃除してんだ、こんな夜中に』って気になってたらしいです。

きょう通ってまだ居たら声かけて話聞いてみたいって思ったらしくて、それがさっきの『オイ!』になるんですけど、追いかけてきたから焦りましたよ。マジでヤバイ。でも全力で逃げてたら後ろのほうでする声が『ちょっと待って。話聞かせて』になったんで、『あれ?』って思って振り返ったら『おどかしてごめん』ってペコペコしてて。『なんだ、この人カネ出せじゃないんだ』って。

ヒロ:なんだよ、まぎらわしいなぁ。
たまき:ですよね、ははは、ホント、ですよね。




                    *



たまきは社長さんからいただいた缶コーヒーを片手に

高校受験
大学受験
就職活動で第一志望に落ちても

自分が不合格になったことで
不採用になったことで誰かが代わりに一人受かっているのだからと

合格した人
採用された人に拍手を贈ってきたこと。

貧乏くじを引いたり
損な人生を歩むことにもなったこと。

その後入社した広告代理店でのこと。
退職してからの悶々とした日々のこと。

そしてどうして掃除をしているのかということも含めて
気が付いたら初対面の人なのに話していました。



社長さんは特に
掃除のことを根掘り葉掘り。

アルバイトでもないのに。
お金になるわけでもないのに。

掃除をすると儲かるとか運気が上がるとか
そういうことに取り憑かれた人ではないようです。




『べつにここ、君が掃除しなくてもいいよね。なんでやってるの?』




たまきは笑われるかもしれないけれど
素直に答えました。



ほったらかしにしておくと

歩行者が踏み歩いていったり
自転車がひいていったりして散り散りになって汚く映る。

それが前から気になっていたこと。



ほったらかしにしておくと風で舞い上がって

バイクや
自転車や
車の運転時に

大量の落ち葉が視界を遮って危ないなと思ったこと。



本当なら下に積もってまた葉を茂らせるための栄養になるはずなのに

人間の都合でここに植えられているがためにそれが出来ないから
ポイ捨てされたゴミのように迷惑がられるのがなんとも気の毒で

『街路樹は悪くないよ』と落ち葉を掃除していること。



掃除した落ち葉から肥料を作って
落ち葉の絨毯などで街を彩ってくれたお礼にと
街路樹の根元に敷き詰めてあげていること。



でもそれは建前で

大学まで出してくれた両親に申し訳ないというか
どこか諦めかけているけれど本当は誰かや何かの役に立ちたかった。

こんな自分でも。
たとえ自己満足でも。

社会の一員になりたかったことを話しました。



話を聴き終えると社長さんは
自分が社長であることを明かし

たまきの心根にある相手を思う心
誰かに言われずとも自分で仕事を創り出せること

やると決めたことをやるのは自分との約束を守れる人
自分との約束を守れる人は他人との約束を守れる人

そして

仕事の憶えの善し悪しよりも
どんな能力よりも

休まず出勤できることのほうがずっと大事だとたまきを評価。




『うちで働きませんか?よかったらですけど』




たまきに声を掛けてくれました。
人生で初めてのスカウトでした。



朝が始まるところでした。



その足で社長さんを伴いご両親へ報告。
たまきは今この社長さんの会社で働いています。



                    *



恋い焦がれていた社会の一員になって。


関連記事
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。