白色の自己主張

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出自

白色の自己主張
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白色の自己主張 ~ 何色にも染まるたおやかさ 染まらない凛凛しさ ~



                    *



                  350通目



                    *



マドンナ・リッチーさんの絵本シリーズ
『ピーボディ先生のりんご』に、こんな場面がありました。
http://bit.ly/2sooI4J (リンク先は絵本ナビです)



                    *



『ハップヴィル』というちいさな町の小学校で歴史の先生をしながら
週末にはリトルリーグの監督も務めているピーボディ先生。

いつものようにリトルリーグの試合を終えた帰り道
顔馴染みの人たちに挨拶を交わし手を振りながら

大通りにあるこちらもまた顔馴染みの
ファンカデリさんのフルーツマーケットに立ち寄ります。



店先に積んであったりんごの中から
とびきり艶の良いりんごをひとつ手に取ると
上機嫌にポンと鞄の中へと入れて店を後にしました。



いつもの光景でした。



その様子を通りの向かい側で見ていたのは
先生が教鞭を執る小学校の少年トミー・ティトルボトム。

『お金を払わずにりんごを持っていったぞ』

手にしていたスケートボードに飛び乗ると
すぐさま友達に言いふらしに行きました。



翌週末もピーボディ先生はリトルリーグの帰り道

いつものように顔馴染みの人たちに声を掛け手を振り
ファンカデリさんのフルーツマーケットに立ち寄ると

店先に積んであったりんごの中から
とびきり艶の良いりんごをひとつ手に取り

ポンと鞄の中へと入れて店を後にしました。



その姿を通りの向かい側で見張るように見ていたのは
言いふらしたトミー・ティトルボトムと
一目見てやろうと集まった野次馬のような彼の友達たち。



『言ったとおりだろ?』
『万引きだよな』

先生ともあろうものが悪びれる様子もなく
二度もりんごを黙って持っていった。



一緒に居た友達たちも含めて
言いふらさずにはいられなくなり

友達からそのまた友達に
友達からその親に

友達や親から町中の人たちへと
先生の悪事は広まっていきました。



ハップヴィルという町は田舎。
町中へ広まるのに時間は掛かりませんでした。



そのまた翌週末

いつもなら野球場には
リトルリーグの子どもたちがいっぱいのはずなのに

ピーボディ先生が独りぽつんと佇んでいるだけです。



どうして誰も来ないんだろうと思っていたところへ

いつも試合後にバットやボールの片付けを
率先して手伝ってくれる少年ビリー・リトルが

ひとりだけやってきました。



誰も来ない理由を

『町中の人がピーボディ先生を泥棒だと思ってる』

と告げると、先生は困惑。

思い当たることはあれしかないなと思った先生は
ビリーを連れてファンカデリさんのフルーツマーケットへと向かいますが

いつもなら町で声を掛ければ掛けかえしてくれる人も
挨拶をしてくれる人も
手を振ってくれる人も

もう誰ひとりとして応えてくれません。



泥棒呼ばわりされ見られていることに困惑し心を痛めながらも
フルーツマーケットに着いた先生。



出迎えてくれたファンカデリさんに

リトルリーグ後の時間ではなく
きょうはやけに早く店を訪れた事情を話し
いつものようにりんごを持っていこうとしたとき

ファンカデリさんはビリーに
誤解が解けるように話してくれました。




『お代はとっくに頂いてるじゃないですか。土曜の朝、ミルクを取りに来られるたんびにね。いつだってお好きな時に持ってって下さいや。ほれ先生、このぴかぴかのでっかいのがいいんじゃないですかい?』




ビリーはトミーにこのことを伝えなければならないと思いました。



町へと駆け出し
息を切らせトミーを探し出すと

『本当はこうだったんだよ』

ファンカデリさんが話してくれたことを伝えました。



先生から『話がしたい』と言われていることを
言付かったビリーから聞いたトミー。

自宅へとすっ飛んでいったものの先生は
この狭い町で起きた根も葉もない出来事を

『本当のことが判ってもらえたらいいんだよ』

とは言えません。



言いふらしてしまった償いになにができるのか悩むトミーに

一時間後に野球場で会うこと
その時に羽毛のいっぱい詰まった枕を持ってくること

ふたつを提案し別れました。



風が強い日でした。



野球場の外野席の一番高いところへと
トミーを連れて行ったピーボディ先生。

手持ちのハサミで持ってきた枕を切り
逆さにして振るよう促します。



羽は風に乗って
何千枚もが野球場へと広がっていきました。

風に運ばれて野球場を飛び越え
町中へと飛んでいきました。



『これが償い?』

困惑するトミーに今度は先生は
風に乗って飛んでいった羽根を

一枚残らず拾いに行くよう言いつけます。



トミーは思いました。
一枚残らず拾うなんてできるわけがない。



なぜこんなことをさせたのか
先生が語りかけました。




『そう、それと同じでね。きみがひろめた、私が泥棒だといううわさも、なかったことにはできないんだよ』
『あの羽根の一枚一枚がそれぞれ、ハップヴィルの人たちだってことなんだ』




トミーの胸には自分がこれからなにをしなければいけないのか。
償いと心持ちが宿っていました。



                    *



高校卒業後新聞社で働いていたぼくは二十歳のとき

運とご縁で本屋さんに転職できる機会に恵まれ
子どもの頃から絵本大好きでもあったことから夢叶い

天にも昇る心地でした。



でも数年後
本屋さんの店内でお客様に見た目を理由にこっぴどく罵倒され
こころに癒えない深い傷を負いました。



あまりの精神的ショックで
仕事で人前に立つことができなくなりました。



                    *



ぼくには産まれつき
両目の下にくまがあります。

体調にもよるけれどひどいときには
黒のマジックで塗ったようにまっ黒になります。

大袈裟ではなく。



お笑い芸人さんがコントで寝不足を演じるとき
わざと両目の下を真っ黒に塗るのをテレビで見ては
腹を抱えて笑う人を横目にひとり笑えずにいました。



加えて敏感肌なので
おひさまに焼けることを避けねばならず
女性からは羨ましがられますが淡雪のように色白です。



さらに敏感肌で(今のところ原因として考えられる)

髪の毛が伸びると顔の上半分が
ヒゲが伸びると顔の下半分が痒くなるため

ヒゲは皮膚が薄く電気カミソリ負けすることと併せて永久脱毛し
(性欲とともに男性性が強すぎるのかそれでも生えてきた)

髪は年中丸刈りにしています。



そうした見た目ですから

本屋さんに就職が決まり
面接時に加えて再度本採用時にも配属願を申し出たとき

絵本を担当したいと『売り場』を希望したものの
それは叶いませんでした。



『見た目』を理由に却下されたからです。



『100の治療より1の予防』

なんてコピーを子どもの頃病院で見かけましたが
事前にトラブルになりそうな要因は取り除いておくという

いわば予防措置だったのでしょう。



『オブラートに包んで』ではなく
ハッキリ言われたので今でも忘れられません。



丸刈りは、清潔感はある。

でもその好印象はぼくが思うことであって
同僚やお客様が見た目をどう受け取るかは

ぼくには選べません。



目の下のくまも
社会人として体調管理にどれほど気をつけていても
出るときは努力の甲斐も虚しく出てしまう。



誰が悪いわけでもないし
誰も責められない。



悶々とした想いを抱えてのスタートになりましたが
念願の本屋さんでの仕事がバックヤードの
『仕入係』としてはじまりました。



                    *



お店としては

採用面接の際の希望や
採用決定後の配属願。

見た目からも
接客業という面も考慮し
売り場に出ることは不適格としてバックヤードの仕入係に配属したのですが

毎日ダンボール数百箱単位で大量に搬入される商品を手早く売り場ごとに仕分けし
お客様の手にいち早く渡るようにと

時間との勝負で
各売り場の担当者に台車で引き渡さなければなりません。



入荷されているのに棚に並んでいない。
お客様の購入の機会を奪ってしまってはならないからです。



担当者がバックヤードへ取りに来てくれることもありますが
それは稀なこと。

レジを担当し
売り場で接客し

そのうえ大量にやってくる本を
既に棚にある本と売れ行きや構成を見極めながら
ぽんぽんとリズム良く入れ替えたりしながら並べるのですから

いつだっててんてこ舞いです。



『猫の手も借りたい』とはよく言ったもので
とにかく人出が必要でした。



いつもは仕分けをメインに担当していましたが
どうやりくりしても人出が足りなくなり

ぼくも売り場に出て
各売り場の担当者に

台車で引き渡さなければならなくなりました。



                    *



台車をゴロゴロ押して店内を移動していると
お客様に呼び止められました。

スーツを着た50代くらいの男性。

手にはメモを持っておられ
広い店内で本をお探しのようでした。



一旦台車をお客様の邪魔にならないよう壁際に寄せ
メモを見せていただき
リクエストにお応えしようとしたときでした。



正面からぼくの顔を見るやいなや
店内に大勢のお客様がいる前で
拡声器のような大声で罵倒したのです。



                    *



おまえんとこは目の下にくまつくって出社してくるような奴に接客さすんか!
自己管理もようできん奴を社員として雇っとるんか!
いったいどんな教育しとる!
責任者呼んでこい!



                    *



なにか失礼があったわけではないと思うのですが
気色ばむお客様はおさまる気配はありません。

近くにいた同僚が慌てて店長を呼びに行ってくれる間
あまりの剣幕に誰も間に入ってくれないまま(というか怖くて入れない)

さらに罵倒は続きました。



                    *



そんなにくまつくるまでいったいなにしとる?
クスリでもやっとるんちゃうか。
(うつむくぼくの顔を覗き込んで客の顔を見ろとばかりに)あぁ?



                    *



仁王立ちのお客様の剣幕に
ただただ気圧されるしかありませんでした。



『お客様は神様?』
『おいおい、そんなこと言ったの誰だよ』
『なに言ったって、なにしたっていいわけじゃないぞ』

努力してなんとかなることはなんとかします。

くまをカバーしようとリハビリメイクのようなものも
東京まで行っていくつか習ったり教えていただいたりして

専用の化粧品もいくつも試しました。



でも

汗っかきですぐに流れ落ちてしまい
その都度直す手間も時間もないことから

カバーしきれずあきらめていました。



ピリピリした雰囲気ですし訳を話しても
今のこの状況では口答えに映るでしょう。

話そうにも話せない状況に
従業員の立場を離れた街ナカでならと言い返そうにも言い返せない立場に

悔しさが滲みました。



結局

お客様は来店前から不機嫌だったのかもしれないのですが
なんとも理不尽なことではあるのだけれどこちらに非があるとして

土下座での謝罪強要は『できかねます』と突っぱねたものの

『管理不行き届きで申し訳ありません』

店長、仕入係の上司ともども頭を下げました。



ぼくは悔し涙を堪えました。

『ぶっちゃけアンタのほうがその尋常じゃないキレっぷり見てもさ、ヤクやってんじゃないの?』

言葉のナイフは収めて。



出自によるやむを得ない事情を抱えているとはいえ
以降ぼくは無用なトラブルを避けるためと
今後一切売り場に出ることを禁止されました。



幼少期に両親から虐待されて育ち
人の顔色ばかり伺って生きてきた小心者です。

そこに容赦なく好き放題に罵倒されたショックで
人前に仕事で出ると思うだけで

身体の震えが止まらなくなってしまいました。



店内とバックヤードを繋ぐ鉄扉を開けることも
怖くてたまらなくなっていました。



これを機に、接客の仕事からは遠ざかることになりました。



                    *



そんなぼくに、贔屓にしてくださるお客様ができました。



そのお客様との出逢いの日は
目が回るほどの忙しさに加え

ぼくが配属された仕入係の同僚が
インフルエンザで次々にダウン。



大量に次々に搬入される商品を
売り場からの応援も交えて少数精鋭で仕分けするのも手一杯だったのですが

さらに仕分けた商品を売り場の担当者へ渡すため
担当者が自分で運んでくれるだけではままならず

事務の人たちを借り出しても台車で運ぶ人出が店内でまるで足りなくなり
一人何役もスピーディーにこなさなければならなくなっていました。



見た目を理由にバックヤードへと配属され

そこに例の一件で
売り場に出ることは NG になっています。

とはいえ商品が仕入係で滞ってしまうため
この大渋滞のさなかぼくだけ表に出ないわけにはいきません。



あの罵倒が頭とこころで否が応にもこだまし

『また同じ目に遭うんじゃないか』
『今度罵倒されたらもう働けない』

バックヤードから売り場へとつながる鉄の扉を開けるのが
冷たさと相まってたまらなく怖かった。



扉の前でガタガタ震えて動けなかった。
心臓が早鐘を打ち吐きそうだった。



足取りも扉も重かった。
でも、この状況で行かないわけにはいきません。



店長になにか言われたら

『この状況で指をくわえてろとでも?』

そうでも言って理解を求めるしかないな
腹をくくりました。



次々に仕分けした商品を台車へ積み

できるだけ手早く戻るよう心掛け
売り場へと一目散運んでいると

児童書のコーナーで
男性の声で

背後から呼び止められました。



身体が硬直しました。
あの罵倒がよぎりました。



おじいさんでした。
違ってほっとしました。
全身の力が抜けそうでした。



お孫さんにプレゼントする絵本を買いたいが

あまりにも数が多すぎて
天井まである棚を前に立ちすくんでしまい

どれを選んでいいのやら
途方に暮れるているとのことでした。



                    *



ぼくは小学生の頃見た目を理由にしたいじめに遭っていて

あまりにもエスカレートしたいじめに悩み
とうとう校内に居場所をなくし

ある日図書室へと逃げ込みました。



そこで偶然出逢った一冊の絵本

『密林一きれいなひょうの話』がきっかけとなり
http://bit.ly/2BmHJXR (リンク先は絵本ナビです)

図書室の絵本
区の図書館の絵本

市内の図書館全館の絵本
県内の図書館全館の絵本を
題名を五十音順に並べた棚を『あ』から全部

絶版で入手不可能なもの以外日本で発売されているすべての絵本
毎月発売されるすべての絵本も買って読むほど

絵本のことが大好きになりました。



タイトルも内容もすべて頭に入っています。



『お役に立てるかもしれない』

そんな想いがむくむくと湧きあがる一方
児童書には専属の担当者が居ます。

『でしゃばってはいけないな』

そう思いお客様を引き継ごうと探したものの
肝心の担当者は他のお客様を接客中。



いつまでかかるか判らない。

店内に出ることは NG だから
これ以上うろうろするわけにもいきません。

なにより
お客様の貴重なお時間を無駄に奪うわけにはいきません。

幸い児童書のコーナーは
店内の角にあり目立ちません。

ならばとぼくが接客することにしました。



おじいさんのご要望をよく聴き

思いつくままに棚から手に取り
そのうち何冊かを選んで勧めました。

ちゃんと理由も添えて。



するとその場で

『あんたがそんなにも笑顔で勧めるんなら、これにするわ』

あれだけ売り場に出ることが怖かったのに
絵本のことを夢中で語っているときは笑顔だったようです。



調子に乗ってしまって勧めてしまい十数冊はありましたが
『これ』と言いながらもすべてお買い上げくださいました。



                    *



数日後

絵本をプレゼントされたお孫さんの喜びようが
本屋さんに居ながら手にとるように判るほど

感謝の想いをわざわざ伝えに来てくださいました。



ぼくが売り場に居なかったので
わざわざ呼び出してくれてまで。

堂々と売り場に出るわけにはいかず
バックヤードの扉を開け

ひょっこり顔を出したぼくに。



その後も本屋さんでは

しかもお客様と直に接する機会の少ない
バックヤードの仕入係配属ではなかなかないと思うのだけれど

売り場にいる同僚に呼び出してもらう
→ 指名されてリクエストにお応えする

(幸い児童書のコーナーは事務所と店内を繋ぐ扉を出てすぐにあった)
(バックヤードの扉とは別のところにある)

そんなお客様とのおつきあいがつづき

絵本だけでなく
おじいさんのご友人の会社経営者やお勤めの方から
社内研修で使うビジネス書の一括注文を頂いたり

これまたおじいさんのご友人が講演会を開くとなると
出張販売のお声がけがあったりと

いつしかぼくにとっても
お店にとっても

おじいさんは贔屓にしてくださる大得意様となっていました。



                    *



都合の良いように聞こえなくもないけれど

(店の判断で売り場に出ることを禁止にはした)
(とはいえ多額のお金を落としてくれるからと聞こえなくもない)

『はいはい、どうぞいってらっしゃいませ』

おじいさんを接客するときだけは
ところてん式に売り場に出ることを許されました。



ただ、どうしてそんな条件付きなのか。
どうしておっかなびっくりな様子なのか。



気に掛けてくださるおじいさんに
バックヤードへと手招きして来ていただき訳を話すと

あまりの精神的ショックで将来ある若者が
絵本大好きな若者が

未来を描けなくなった苦衷を察してくださったのでしょう。



『いっぺんいりゃあ(名古屋弁で「よかったら一度おいで」)』
仕事帰り、おうちに招待されました。



                    *



こう書くとよくある成り上がりのドラマや
メンターが登場する自己啓発小説みたいで陳腐になるのが心苦しいのですが

おじいさんがなにをしていた人なのか
なにをしている人なのか深く聞くことはなかったので

市の施設かと見まごう
時代劇でしか見たことがない殿様の屋敷のようなおうちには

ただただあんぐりするばかり。



庭には、荘厳な桜の樹がどんとありました。



遠い昔に伐採(とは名ばかりで倒木と言った方が近い)されるところを譲り受け
居を構えるたびに樹も一緒に移ってきたそうです。



おとなの人の輪で4人くらいの
太くて見上げていると首が痛くなるくらいのおおきなおおきな樹。

まだ咲いてはいなかったのですが
(蕾が目を覚ましはじめた頃)

今まで見たことがないほど
樹を前にすると動けなくなるほど

風雪に耐え
幾多の試練をくぐり抜けてきたであろう

歴史を感じさせるものすごい迫力でした。



でもどこか、やさしさを秘めているのも感じました。
おじいさんの瞳にどこか似ていました。



そんな桜の樹が日本画となるような居間でお茶をごちそうになっていると
ふとこんな話をしてくれました。



                    *




あの桜を見にな、毎年ようけ人が来る。このへんの人だけじゃなくてな、どこでどうなっとるんかわかりゃせんけどな、外人さんまで来るでびっくりだわな。咲く準備しとる頃からはじまってな、散ってまったあとも人が途切れん。

蕾が顔出したらな、『わしらも、冬眠から覚めなな』て、みんな口開けて見惚れとる。咲きはじめたらな、『はよぉ、はよぉ、満開になってくれんかぁ』て、勝手なこと言うて見惚れとる。満開になったらな、『花見、いつするだ、いつ』て、わいわい見惚れとる。

終わりに近づきゃ『(桜吹雪)舞っとる舞っとる、きれいなもんだ』て、酒の中に花びら入れて、呑んで見惚れとる。散ったら散ったで、『どっかに花咲か爺さんおらんか』て、見惚れとる。葉桜になってもな、『はよ来年こんかぁ』て、もう来年のこと考えて、いつまででも見惚れとる。

そんな愛されとる存在、他にはないわな。


桜って不思議だろう。カレンダーも、時計もありゃせんのに、毎年春になったらちゃあんと咲きよる。『おぉ、すまんすまん。咲くの忘れとったわ』とかないわなぁ。今まで何十年と見てきたけどな、そんなこと一度もありゃあせん。


・・・君も、桜みたいにな、そのときが来る。
咲く日が来る。
いつかきっと、咲く日が来るで。
咲かん桜なんてありゃあせん。
それまで焦らんと、桜のように生きてったらいい。




                    *



今は誰も信じられんと孤独を感じとるかもしれんけど

桜みたいにな
誰からも愛される存在に君はなる。

そうも言ってくれているようで
こころに沁みました。



                    *



泥棒だと言いふらしたトミーが本当のことを知り
ピーボディ先生の自宅へ謝りに行ったとき


『ぼく、知らなかったんだ。あんなこと言うべきじゃなかったんだけど、でも、先生がりんごのお金を払わなかったように見えたんだもの』


それでも自分は悪くないとばかりに必死に弁解するトミーに
先生は静かに語りかけました。



                    *




『どう見えたか、というのは、どうでもいいことなんだよ。大切なのは、ほんとうはどうか、なんだ』




                    *



本屋さんの店内で面罵されたとき
今だから話せますがぼくは男性を

営業妨害するヤクザか
薬物でイカれてるクレイジーな人だと思っていました。

あまりの言いがかりとリミッターの壊れたキレっぷりに。



そして、恨みました。
なぜこんな目にぼくが遭わなければいけないんだと。



あの日お店に居合わせじろじろ見ていたお客様たちの目には
ぼくは自己管理ができないダメ社員に映ったことでしょう。



あの日お店に居合わせじろじろ見ていたお客様たちの目には
ぼくが薬物でもやっているかのように映ったことでしょう。



なかったことにはできないものでしたから。



でも後年

マドンナさんの絵本(=原書)に出逢い
絵本を受けてであろうマイケル・ジャクソンさんへのスピーチを見たとき

マドンナさんがスピーチで
マイケル・ジャクソンさんを『見捨てた』と悔いたのを見たとき

ぼくの方こそ


『どう見えたか、というのは、どうでもいいことなんだよ。大切なのは、ほんとうはどうか、なんだ』


男性がどう見えたかにかかずらい
ほんとうはどうなのかに目を向けていなかったなと思いました。



ようやくそう思えるようになったのだと思いました。



                    *



『じぃじ』と呼ぶまでに親しくなったおじいさんの遺言で

かかりつけの樹木医さんと力を合わせながらのお世話を託された
花のない桜の樹を見上げると

出自を越えてほんとうはどうなのか
じぃじがぼくを見てくれたことを思い出します。



                    *



口は閉じて、目を開け。


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