~ 何色にも染まるたおやかさ 染まらない凛凛しさ ~

夢を持つということ、持たないということ、持てないということ

Photo:.two of uS By:27147
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     白色の自己主張 ~ 何色にも染まるたおやかさ 染まらない凛凛しさ ~



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親愛なる じゅんなに

お手紙ありがとう。
長野行きの車中で大切に読ませてもらいました。

じゅんなの問いかけに、ぼくの思うところを話せたらと思います。長野に発つ前『今読んでるの、これ』と教えてくれた『レモンの図書室』のカリプソとメイをイメージしながら、ぼくからの返事を読んでもらえるといいかもしれません。

難しい言葉は辞書を引く。
それでも判らないことは、パパとママに聞いてください。
読み終えたらパパとママに、じゅんなが思ったことを話してみてください。


今回の旅には

『嵐にいななく(L.S. マシューズ著)』
『花あかりともして(服部千春 著)』
『図書館につづく道(草谷佳子 著 )』
『ハルとカナ(ひこ・田中 著)』
『空飛ぶリスとひねくれ屋のフローラ(ケイト・ディカミロ著)』
『かむさはむにだ(村中李衣 著)』
『小さな可能性(マルヨライン・ホフ著)』

を持って出掛けています。

7泊8日なんでね。
名古屋への戻りは週末。
また本の話をしましょう。
この中に気になる本があれば遠慮なく言ってください。


前置きが長くなりました(いつものことですね)。


ドラマ24『東京センチメンタル http://www.tv-tokyo.co.jp/tokyo_sentimental/』#6 吉祥寺の恋』に、こんな場面がありました。


バツ3、独身、55歳。とかく惚れっぽい久留里卓三(くるり たくぞう http://www.tv-tokyo.co.jp/tokyo_sentimental/cast/)が店主を務める老舗和菓子屋『くるりや』に、テレビの取材が入った。

レポーターとしてやってきたタレント住田龍介(すみだ りゅうすけ)のふわふわしたコメントにイラっとしながらもにこやかに和菓子に込めた想いを語る卓三の傍らで、どこか上の空のアルバイトあかね。

それもそのはず。

龍介は、あかねが中学生だった頃読者モデルとして人気を博した人で、あかねも御多分に洩れず憧れていたひとりだったからだ。

ロケ終了後そのことを知った卓三から『写真でも撮ってもらったら』と勧められ固辞するものの、内心うれしくてたまらなかったあかねは、『一瞬(お店)抜けます』言い残して後を追いかけ、念願のツーショットタイムに。これが縁であかねは、後日歌手としても活動する龍介の吉祥寺のカフェで行われるライブに誘われる。


17年前故郷の四国から上京しモデルを始めたが、35歳の現在はモデルを辞め、歌手、役者、イラストレーターと多方面で活動する龍介。夢はこうしていくつかありながらも、まだどれも中途半端な状態だ。ライブもギターの伴奏者から MC は及第点だが、肝心の歌はまだまだだとキツ~イダメ出しをされる。店で待つあかねの視線の先でダメ出しされ肩を落とす龍介だが、このままでは故郷に帰れない。上京する時、反対する漁師の父と大げんかしたからだ。

本当は、尊敬しているのだけれど。

自分にも父のようななにかこれというものを見つけたい。だからこそ夢を叶え、胸を張って帰りたいという想いが龍介にはあるのだ。思うようにいかないままに時間だけが過ぎていった焦りが同居しながら。


そんな龍介の想いを知ったある日の夜。公園に呼び出され、デートかと思ったあかねの前に興奮気味にやって来た龍介。大作映画のオーディションに出られることが決まり、『練習相手になってほしい』と告げ、あかねの気持ちなど置いてきぼりなままにその場で早速練習を始めてしまう。

この日の昼間。和菓子講習会の講師役を買って出て留守の卓三にペアになったお守りの片割れを渡しておいてほしいと、意味深なことを告げにくるりやへ卓三を訪ねてきた二番目の元妻 玲子(れいこ)。恋愛経験豊富そうな玲子に店番をするあかねは、意中の人 龍介のことを名前は伏せ、友達が悩んでいるというていで夢を追う年上の彼とどう向き合っていいか相談する。

玲子が卓三と出逢った頃、卓三はバンドマン(=夢追い人)だった。ライブを観に行った玲子が一目惚れして付き合うことになったのだが、付き合い始めると卓三は音楽を辞め、先代が守ってきた店を継ぐために和菓子職人修業の道へと入ったのだという。卓三にどんな心境の変化があったのかはあえて触れなかったが、玲子はこう言ってあかねにエールを贈った。



夢を追うのもいいけど、応援することだけがその人のためじゃないってこともあるかもね。



玲子の言葉を受け、夢を諦めてもしっかりやっている人が居る=卓三のことを思ったあかね。龍介の舞いあがりといい感じだと自画自賛する姿に、決して大根というわけではないのだが熱の入った演技を間近で見ていてある想いを抱く。



(あかねの心の声)

わたし、演技のこととか判んないけど、たぶん龍介さんはオーディションに落ちる。この努力は報われないって、悲しいけどわたしには判ってしまった。それでも彼が納得するためには、この特訓が必要だとも思った。



熱が入りすぎるあまり、終電を逃してしまったあかね(本当はわざと)。始発まで呑みに出掛けようとなって吉祥寺の Jolly-pad へ出掛けると、そこへ龍介がアルバイトしている割烹 黒ねこの後輩で、駆け出しの漫画家モエが偶然やって来る。実はモエは『眠れる都会の王子様』という作品で新人マンガ大賞を見事受賞し、吉祥寺の街で共に漫画家デビューを目指す仲間たちとここでお祝いする予定だったのだ。

でも、それならどうして可愛がってくれて、応援してくれる龍介に大賞受賞を報告しなかったのだろう?

誘われるがままお祝いの輪にあかねと共に加わり、モエから受賞作品が載っている雑誌を手渡され、その場で読んでみて訳が判った。



(あかねの心の声)

龍介さんが可愛がっていた後輩の受賞作は、35歳でいろんな夢に手を出して、どれも才能ないくせに夢を諦める勇気もない。元モデルで、10年前に一瞬人気が出たことのある男が主人公だった。



モエの隣でそれを読み、無理してお祝いしているのが誰の目にも判る。
言うに言えなかったモエの想いも。



(お店を後にしたあかねの心の声)

好きな人の淋しい背中を見つめながら、わたしになにができるのか考えていた。

(吉祥寺シアターの前を少し離れて歩くふたり)
(溢れる想いを振り向いてあかねにぶつける龍介)

龍介:

ちゃんと教えてほしかったなぁ、受賞したこと。
別にいいよ、どんな内容だって。

・・・最近吉祥寺が淋しい街に思える。
憧れの街だったのに。

向こうの角のケーキ屋が先月潰れて、接骨院になった。
俺より少し若い夫婦が、夜遅くまでケーキ売ってるのがなんか良くて。
今は何処行ったんだろう。

東京で夢を追い続けたい。でも、夢が叶う保証なんてない。途中で諦めたら、これまで積み立てたものが全部無意味になってしまいそうで怖い。

夢を追い続けるのも怖い。ダサいけど、もうどうすればいいのか判らない。『あきらめたらそこで試合終了ですよ』って、スラムダンクの安西先生の言葉を心の支えにして生きてきた。でも今は、その言葉が苦しい。

(そんな龍介をまっすぐに見つめて)

あかね:

もうさぁ・・
もうさぁ・・・
夢、諦めたほうがいいよ。
夢なんか諦めたって死なないんだから。



玲子の言葉を思い返したあかね。
夢を諦めてもしっかりやっている人が居る=卓三のことを思ったあかね。

憧れの人に誘われて出掛けた、憧れの人のライブで唄われていた歌、坂本九(さかもと きゅう)さんの『涙くんさよなら http://j-lyric.net/artist/a000c56/l011ab2.html』をエールとしてアカペラで唄い、踏ん切りのつかない憧れの人、好きな人 龍介の背中をそっと押してあげるのだった。


抜け殻のようになったあかねのスマートフォンに、後日届いた龍介からのメッセージ。そこには尊敬する父への想いと共に、夢を追った日々に龍介なりに掴んだ想いが綴られていた。

和菓子屋でアルバイトする、四色団子を手にしたあかね。手のひらのスマートフォンには、漁師になった龍介が描かれたイラストが映っていた。



東京を離れることにしました。
遅くなったけど、親父に弟子入りしようと思って。

昨日、モエの漫画を読み直しました。自分の夢を叶えることは出来なかったけど、誰かの夢の一部になることができたんだ。おかげで僕が東京に居た意味はあった、僕が夢を目指したことは無意味ではなかったと、今は思えます。

才能ある若い人にネタにされて幸せものだ~

あかねちゃんに出会えてよかった。
では、お元気で!!



NHK連続テレビ小説『半分、青い。http://www.nhk.or.jp/hanbunaoi/』第2週『聞きたい!』第7回に、こんな場面がありました。

同じ日に、同じ病院で産まれた楡野鈴愛(にれの すずめ http://www.nhk.or.jp/hanbunaoi/cast/index.html)と萩尾律(はぎお りつ)。両親も家族ぐるみでの付き合いがあり、気がつけばいつも隣に居るような仲となっていた。

小学生になった頃、鈴愛を可愛がってくれていた祖母 廉子(れんこ)が亡くなり、祖父 仙吉(せんきち)がひどく落ち込んでいることに心を痛めた鈴愛。仙吉をなんとか励ましたいと、廉子おばあちゃんとまたお話したいと、糸電話で三途の河と仙吉を繋いであげられないかと考えた。

大人が知ったら一笑に付すような話。賢く、ませている律も荒唐無稽だと言って相手にしないかと思われたが、川をまたいで100メートルの糸電話ができるかどうか。三途の河と仙吉を繋ぐ前の実験に、律は同級生の龍之介(りゅうのすけ)や菜生(なお)を巻き込んで鈴愛の願いを叶える橋渡しをした。

鈴愛もそんな律だからこそ内緒の願いを話したのだと思うし、律もある日鈴愛にだけ夢を打ち明けた。



(自室に招き入れ、ピタゴラスイッチ http://www.nhk.or.jp/kids/program/pitagora.html に出てくるような手作りの装置を前にして)

永久機関。永遠に動き続ける装置だ。地球上では空気抵抗や摩擦があるから、どうしてもエネルギーロスが生まれて、エネルギー保存の法則から放っておくと装置はいずれ止まってしまう。

(律の愛読書『永久機関の謎(アルフレッド・エッペンドルフ著』を手にしながら)

ぼくは、永久機関を地球上で創る。『永久機関は地球上じゃ創れない』なんて阿呆な大人たちは言ってるけど、おれが創る。最初に創る。おれの夢は、ノーベル賞を獲ることだ。



後日、律の母 和子(わこ)が鈴愛の母 晴(はる)を喫茶店へと連れ出すと、和子はずっと言いたかったという想いを晴に伝えた。



和子:律は、鈴愛ちゃん違って難しい子です。

晴:

律君、頭が良いから。
鈴愛、いつも言ってます。
下手すると、先生より賢いって。

和子:

お友達、出来にくいです。
でも、この前わたし、鈴愛ちゃんに聞いたんです。

晴:はい?

和子:

律がね、『夢がある』って言ったらしいんです。
『将来の夢は、ノーベル賞を獲ることだ』って。

晴:すごい・・

和子:

わたし、あの子にそんな子どもらしいところがあるなんて知らなくて・・
もう嬉しくて。

晴:いや、子どもらしいとかやなくて、ほんとに獲るんやないの?

和子:『内緒にしてくれ』って律、鈴愛ちゃんに言ったらしいんやけどね。ふふ。
晴:鈴愛の口は、羽より軽いです・・

和子:

(ちいさく頭(かぶり)を振り)いい子や。
感謝しとる。

律は、鈴愛ちゃんのお陰で、夢を語る相手を持ったと思っています。

(何度も頭を下げて)ありがとう。
いつか、言いたかったの。



夢を持つということ。
持たないということ。
持てないということ。

持つ持たないは、本人の意志。持てないは、家庭の事情もある。手紙に綴られたじゅんなの想いに、ぼくからは夢を巡るふたつのかたちを伝えられたらと思います。


じゅんなだから夢を話せる。
じゅんなにだけ夢を話せる。

そんなふうに思ってくれる友だちが居ることはとてもしあわせなことだと思うし、大切にしてほしいなと思います。

夢にはじゅんなが書いてくれたように持つ人が居て、持たない人が居て、持てない人が居ます。おとなは、世間は、いずれかにこどもを振り分けようとします。夢を巡る生きかたは、これ以外ありえないと思っているからです。


小学生の時、学校で『夢』について作文を書かされる時間が嫌でした。ぼくには夢がなかったからです(今もですが)。白紙で提出すると、親が呼び出されました。『なぜないんだ?』詰問されました。学校でも、家でも、世間でも、こどもなんだから夢を持っていることは当然、ない方がおかしい、なければならない=義務という空気があって窒息しそうでした。まるで夢は、人生の必修科目みたいでした。

だからぼくは、夢を書きました。

警察官
消防士

でもこれは、おとなが納得するものを書いただけです。こう書けば喜んでくれるだろう、許してくれるだろうというものでした。みんなが嬉々として夢を書き、発表するなかで、ひとりだけ取り残されたくなかったからです。じゅんなが手紙に書いてくれた気持ちと同じです。


夢がないことは惨めでしょうか。
ぼくはそうは思いません。

じゅんなが居るから夢を話せる。
じゅんなが誰かの夢の一部になる。

そんな生きかたって、そんなじゅんなって、カッコイイなとぼくは思います。
カリプソとメイもそうでしたよね。

親愛なるじゅんなに手渡したい想いです。


夢はなくとも夢心地。

長野の地から。
ヒロより。

2018.4.20



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