~ 何色にも染まるたおやかさ 染まらない凛凛しさ ~

【番外篇】 よいこの肉欲論 ~ ワンちゃんとおんなのこ篇 ~

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photo credit:aftab. via Flickr (license)



親愛なる カズくんに

『よいこの肉欲論 ~ 暴れ馬の手綱篇 ~ http://ippunkan.blog.fc2.com/blog-entry-431.html』に続いて。
NHK連続テレビ小説『半分、青い。』第7週『謝りたい!』第38回に、こんな場面がありました。

高校卒業後生まれ育った岐阜から上京した萩尾律(はぎお りつ http://www.nhk.or.jp/hanbunaoi/cast/index.html)は、東京の私立大学 西北大学に進学。一人暮らしを始めます。

ある夜、ベランダを開け放ってベッドで眠っていると、猫が部屋に入ってきて律の上に。角部屋ですから、きっと隣の部屋から入ってきたのでしょう。いきなりのことに驚きつつも届けに行こうとドアを開けると、隣室の前で真っ赤な服に身を包んだ艶のある女性が何人もの名前を挙げ、自分は何番目でもいいからと未練をドア越しに打ち明けているところに出くわします。

岐阜の片田舎ではお目にかからない。まるでドラマかと思うような光景に面食らっていると、ドアが開き、若い男性が出てきました。男性は女性には目もくれず、律が抱いている猫『ミレーヌ』へ一目散。その様子に女性は呆れ、百年の恋も冷め、振り返ることなく去って行ってしまいます。

追いかけなくていいのかと問う律。
男性は、『別れ際は、よく切れるナイフでスパッと。これ、鉄則』さらりと言って涼しい顔。

来る者は拒まず。
去る者は追わず。

女性とは縁が切れましたが、ミレーヌが繋いだ縁で律は、やさしくて、ふわふわして、掴みどころがない。なぜだかとにかくモテるマシュマロ男子 朝井正人(あさい まさと)と友人になります。学部こそ理工学部(律)と法学部(正人)で違いましたが、律と同じ西北大学の学生。同じく地方出身者でした。

互いの部屋を行き来し、ごはんにもよく連れ立って出掛けるようになり、ある日正人に美味しいナポリタンがあるからと『喫茶おもかげ』へと連れて行ってもらい舌鼓を打っていると、大好物の女の子の話題になりました。



正人:

女の子たち、みんなさぁ、『猫、見たい。猫、見せて』って言うんだよ。
でさ、見に来んじゃん、うちに、ミレーヌ。
気がつくと、おれにしなだれかかってんの。
猫じゃなくて、おれがなでなでされてんの。

律:

なんじゃそりゃ。
やってらんねぇな。

正人:

いや、律みたいに綺麗だと、女の子たちもビビるんだよ。
おれぐらいがちょうどいいんだよ。

律:どういうこと?

正人:

女の子より綺麗な顔してモテようたって難しい。
カワイイ娘は特に、自分が一番じゃないと。
おれ、こんな綺麗な顔の男、見たことないもん。

律:でも、正人のほうがモテんじゃん。

正人:

そりゃそうさ。
おれ、やさしいもん。
ディスコとか行くだろ、マハジャロとか。

律:

マハジャロ!
やっぱ行くんだ。
スゲェな。

正人:だから、行こうよ。
律:う~ん・・まだ心の準備が・・

正人:お立ち台とか、軽い女ばっかだと思ってたりするでしょ?
律:そんなこと・・

正人:

ふふ。
でもさ、あの、うちにあった扇子。
あれ、こうやってすると(手であおぐ仕草)、いい匂いすんの。

律:ふ~ん。

正人:

その子が言うには、こうね、風を送った時に、いい匂いがするようにって。
扇子にも一滴、オーデコロン垂らすんだって。

律:その子が、言ったんだ。

正人:うん。そういうの聞くとなぁ、『あぁ、女の子だなぁ』なんてキュンとするんだよね。
律:そんなんだから、何人にもなっちゃうんだよ、彼女が。

正人:

てかさぁ、犬飼うとするじゃない。
で、新しい犬来ました。
前の犬、捨てる?

律:(ちょっと考え)いや。

正人:

なっ!おれ、そこ判んないんだよ。
増えてくじゃん、犬。
なんで女の子は増えちゃダメなの?

律:(哲学のような問いかけに考えあぐね)人間と犬が一緒はまずいんじゃないの?

正人:

そっか。
でも、両方に愛あるよ、おれ。



正人の言葉を聴いていて思い浮かんだのは、相場師仲間。
47都道府県にガールフレンドをつくって遊んでいる猛者です。
空白の都道府県はここ数年ないので、正に天下布武ですね。


カズくん。
こういう人が居ると聞いてどう思ったでしょう?


世間一般の倫理観や価値観からすると、『二股』だの、『浮気』だの、『女たらし』だの、『ふしだら』だの、『けしからん』だのになるでしょう。耳にした言葉を自分で書いていてなんですが、散々な言いようですね。

でも、実際に彼のガールフレンドに逢ってみると、みんないつも笑っています。まるで太陽です。いつ逢っても幸せオーラ全開。キラキラ光るお星様です。何股とかない。浮気とかもない。しょうもないことだと、考えにもあがってこないんでしょうね。

正人が律のことを『おれ、こんな綺麗な顔の男、見たことないもん。』と評した気持ちと似ています。
ぼくが彼を見る目は。

何十年と食っている相場師ですから、甲斐性もある。世の遊び人にはここまでの甲斐性、(圧倒的な)余裕と言い換えてもいいものはありません。単なる女好きです。たいてい浮気や不倫(彼の場合独身なのと不倫はしない主義)は火遊びになり、別れ際の多くは修羅場となって美しくないものです。誰も幸せにならない、自称恋愛の自慰行為みたいなもので終わるだけ。互いに消耗する、他人に消費され続ける人生です。

長年彼を見ていますが、『別れ際は、よく切れるナイフでスパッと。これ、鉄則』は正人と同じでも、未練や別れ話のもつれがないのは正人とは違う。『ありがとう』で始まり、『ありがとう』で終わる。幸せな余韻。未来に向けてなにかが生まれる予感がするんですね。

最初出逢った頃はぼくも世間一般の倫理観や価値観で彼をジャッジしていて、ひとりの女性を愛しぬくぼくとは相容れない。女性にだらしない奴なのかなと思っていましたが、紹介され、実際にガールフレンドに逢っていくなかで色眼鏡で見ていたなと改めました。

彼とは女性への向き合い方が違うだけで根っこは同じではないか。
以前読んだ毎日新聞の記事を思い出していました。



不思議なのは、東洋英和女学院大学長に就任したとき、ルリ子夫人から「女性との付き合いもなく、不器用だから」といわれたほどなのに、女性心理を巧みに描いたことである。有名女性ピアニストだったルリ子さんを射止め、生涯彼女だけを深く愛した塚本氏は、一人の女性を深く知ることで、すべての女性を知ることができた類いまれな作家だった。哲学者カントが、生まれ故郷ケーニヒスベルクから外に出なかったにもかかわらず「世界を旅した」といわれたが、塚本氏もルリ子さんだけを深く知ることで歴史上の女性の心奥深くまで入り込んだ。感性と洞察力のたまものであった。

                    *

毎日新聞朝刊国際面に掲載された作家 塚本哲也(つかもと てつや)さんの訃音。毎日新聞元欧州総局長であり、現在は東洋英和女学院大学名誉教授を務める黒岩徹(くろいわ とおる)さんの評伝『温かい観察眼 http://mainichi.jp/articles/20161026/k00/00m/040/102000c』から。



暴れ馬の手綱篇で取りあげた、ナポレオン・ヒルさんのご著書『成功哲学 やる気と自信がわいてくる』。
『性衝動の転換』という項目の文中にある『女性を喜ばせたい』という表現(=男性の願望)。

女性を喜ばせたいとは

1.性的悦楽
2.文字通り笑顔
3.幸せにしたい

性欲をハンドリングし、相場師仲間の彼が47都道府県にガールフレンドをつくるように、喜ばせるように、ぼくはひとりのパートナーの中にある、彼女も気付いていなかった47の魅力を見つめている。まだ見ぬ魅力を発掘しては喜ばせている。それは言わば、47都道府県にガールフレンドをつくるのと同じ。

ぼくも彼も、目指すところは一緒なんだなと。
ただ、向き合い方が違うだけで。

初見で抱いた正人の『そっか。でも、両方に愛あるよ、おれ。』への想いも変わっていました。


性欲のハンドリングの先にある愛のかたち。
カズくんはどう思いましたか?


ヒロより。
2018.5.19


【よいこの肉欲論 ~ ワンちゃんとおんなのこ篇 ~ 考具】

『ジャコモ・カザノヴァ』って知っていますか?『女を幸せにするために産まれてきた』と豪語。賭博などやんちゃなことをあちらこちらでしでかしながらも、こんな言葉を信条とし、華麗なる恋愛遍歴を歩んできた人物です。助平なだけではない。第一級の教養人でもありました。



『わたしの享楽の五分の四は女を幸福にすること』

                    *

カザノヴァという人間の魅力は? と言えば、まず、知性と感性、経済力と体力のすべてを結集し快楽を追求しようとしたその生き方にあった。そのために彼は折角獲得できるはずの社会的地位や名誉、財産を平気で投げすてた。そうすることにより、女性という目前の至上の快楽と、彼にとって至上のものである精神の自由を維持し続けたのだ。だが、そのために相手の女性の幸せをふみにじったかと言えば、決してそうではない。相手の幸せを充分にかなえた上で自らの自由を守ったのである。

飯塚信雄『カザノヴァを愛した女たち(新潮選書)』



カザノヴァのことを『色事師』と評する向きがありますが、週刊誌的な、なんとも貧相な見方です。ちゃんちゃらおかしい。モテない自身の甲斐性のなさを、色事師と書きたてることで晴らそうとしているだけでしょう。嫌ですね、ひがみ根性って。学べばいいものを。

多角的、複眼的に読み込んでいくと、如何に表面的にしか捉えていないか、如何に的外れかが判ります。男性として産まれたなら、こうありたいなと思います。同じようには生きられませんし、そうなる必要もないですが、カッコイイのひとことに尽きます。

『紀州のドンファン http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50655』なる人が一時話題になりましたが、カザノヴァには遠く及ばないかな。ご著書も2冊あり、拝読しましたが、スケールが月と鼈(すっぽん)です。ただ、同じく生涯現役でありたいとは思いますね。女性を喜ばせない人生なんて、考えられませんから。


イタリア「色悪党」列伝 カエサルからムッソリーニまで (文春新書)
ファブリツィオ・グラッセッリ著

カサノヴァ 人類史上最高にモテた男の物語 上下巻 鹿島茂 著

窪田般彌 訳(河出文庫全12巻)
カザノヴァ回想録1 少女たちの誘惑
カザノヴァ回想録2 恋と賭博の修業
カザノヴァ回想録3 パリの社交界
カザノヴァ回想録4 修道女と大脱獄
カザノヴァ回想録5 魔術師の野望
カザノヴァ回想録6 ヨーロッパ放浪
カザノヴァ回想録7 占星術とぺてん師
カザノヴァ回想録8 仮装舞踏会
カザノヴァ回想録9 ロンドンの娼婦
カザノヴァ回想録10 性と愛の哲学
カザノヴァ回想録11 永遠の麗しき女性
カザノヴァ回想録12 最後の色事師