『半分、青い。』の雲の形、スカーゲンの腕時計、ジレ風サマーストール - 白色の自己主張
~ 何色にも染まるたおやかさ 染まらない凛凛しさ ~

『半分、青い。』の雲の形、スカーゲンの腕時計、ジレ風サマーストール

9114541764_7b2fab0866_z.jpg
photo credit:Benny W Photography via Flickr (license)



You are the reason why I write. あなたがいる、それがわたしの書く理由。
Donna Jo Napori (ドナ・ジョー・ナポリ)http://www.donnajonapoli.com/about.html



     白色の自己主張 ~ 何色にも染まるたおやかさ 染まらない凛凛しさ ~



                    *



                  383通目



                    *



親愛なる ジーンに

NHK連続テレビ小説『半分、青い。』見ていますよね。オープニングで、星野源さんの主題歌『アイデア』が終わるあたり。初期の頃は『演出 土井祥平』、きょう放送の第10週『息がしたい!』第58回だと『秋風羽織 豊川悦司』のクレジットが出るあたりで、青空に浮かぶ雲が映るでしょう?

あの雲の形。
変わっていませんでしたか?

初期の頃はこんな感じ → https://youtu.be/Z1iq-638UBI(【公式】「半分、青い。」主題歌/星野源「アイデア」連続テレビ小説 オープニングタイトル) でなんの変哲もない雲でしたが、東美濃市梟(ふくろう)町で育った幼馴染み 楡野鈴愛(にれの すずめ)、萩尾律(はぎお りつ)、西園寺龍之介(さいおんじ りゅうのすけ)、木田原菜生(きだはら なお)4人が高校卒業を控えそれぞれの旅立ちを迎える頃には飛行機の形に。第10週『息がしたい!』第55回からは、東京編で恋愛模様となることからハートの形になっていました。

さりげなくドラマの内容とリンクさせているのかもしれませんね。
毎回見ている人だけが気づく心憎い演出です。

オープニングっていつ見ても同じですから、録画して見る時は飛ばすんです。ただ、飛ばす時もオープニング終わりのあたりから見始めるので、見ていないようで見ていたんですね、きっと。ハートの形になっていたのに気づいた時に『あれ?ひょっとして雲の形変わってない?』と思って遡って見てみたら案の定変わっていて、にんまりしてしまいました。

ジーンが問いかけてくれたこと『ヒロさんみたいな人付き合いが出来るようになりたい』に対して、のっけから雲の形の話になってなんのこっちゃと思ったかもしれませんが、これがぼくが思う人付き合いの秘訣だったりします。


                    *


女性アイドルグループがいくつも誕生して認知してもらうために冠番組を持つと、多人数のなか埋もれないようにと、MCに、視聴者に憶えてもらおうと、毎回みんななんとか爪痕を残そうと実に様々なことをします。時に、涙ぐましいほどに。

人付き合いに於いてもこれは同じで、世間一般に言われていることは『如何に相手の印象に残るか』だったりします。『印象に残らなければ次はない』とまで言う人も居ますから、ここまでくるとサバイバルゲームの様相を呈してきますね。

人の集まりに出掛けると大抵どの人もウケ狙いでなにかをしたり、前日から仕込んできたんだろうなぁと思える一発芸のようなキラーフレーズを繰り出したりと、みなさん初対面のワンチャンスをものにしようと創意工夫を凝らしています。

でもぼくは引っ込み思案ですし、人見知りですし、口下手ですから、積極的に前へ前へとグイグイいける人たちを眩しく、羨ましく思っていました。とてもとても真似なんて出来ないなぁと。

転機は、今のパートナーとの出逢いでした。


                    *


東京 ←→ 名古屋
日本 ←→ アメリカ

13年間の遠距離恋愛の末婚約した愛しき女性を、ぼくは挙式直前に病気で亡くしました。13年という時間は数字上では13年というただの長さだけれど、ぼくらにとってはただの数字の13年ではなく、もっともっと濃密で生の鼓動が波打つもの。『花も嵐も踏み越えた仲』『生涯を共にした伴侶』と言ってもいいくらいでした。

それほどの人でしたから、一生分の恋愛をしたと思っていました。『もう人を好きになることなんてないのかも』『もう人を愛することは出来ないのかも』とまで思ったほどの喪失感でした。

その後ご縁あっておつきあいする女性に恵まれたものの、『働きたくないから主婦させてくれる人』『専業主婦になれば学生時代の奨学金(=借金)をダンナが肩代わりしてくれるからラッキー』そんな価値観で男性を選ぶ人だったり、今の仕事を辞めたいからと執拗に結婚を迫る人だったり、理想の男性像を押し付け、痛烈なダメ出しを繰り返し、ぼくを彼女色に染めようとする人だったりで、『人を好きになるってどういうことなんだろう?』『人を愛するってどういうことなんだろう?』『そもそも恋愛ってどうやってするんだっけ?』どんどんじぶんを見失って、どんどん恋も愛も判らなくなっていって、誰かに恋することも、誰かを愛することも出来なくなっていって、どんどん心が壊れていきました。


心がカチンコチンに凍ってしまって、誰とも逢いたくなくなって、なにもする気力がなくなって、おうちにひきこもって、午前0時の日付変更線まで辿り着こうと、毎日地べたを這って這ってなんとか生きていたある日。のちにライフワーク『料理のチカラで Happy Smile Again 料理創作ユニット ケータリング・ヒーローズ https://ippunkan.blog.fc2.com/blog-entry-18.html』を一緒に立ちあげることになる友人『だいちゃん』から


誕生日パーティー。
日頃お世話になってる人たちのために、ささやかながらだけど開きたいんだ。
来てくれる人もてなしたいんだけど、ヒロ、手伝ってくんないかなぁ。


電話がかかってきました。


ただ、人に会うのが億劫でしたし、心身の調子もいまいちでした。それにだいちゃんは本職のシェフですから、だいちゃんが腕を振るうのがいいと思ったのです。でも『ヒロのオムライス、食いたいなぁ』高校生の時オムライスの専門店でアルバイトしていたことを知っていただいちゃんから殺し文句のようななんとも心憎いひとことを言われたら、『そんなこと言われたら引き受けるしかないだろ』引き受けるしかありません。

ひきこもってはいたけれどだいちゃんの誕生日をお祝いしたいと思っていましたし、数少ない大切な友人であるだいちゃんの誕生日をお祝いしに来てくれる人を料理でおもてなし出来るのは友人としても嬉しい。裏方で料理を作ったり、飲み物を準備したりするわけだから、人に会うのが億劫でもなんとか務まりそうだと思いました。

それにひきこもっていたぼくに、外の空気を吸いに出掛ける機会をさりげなく創ろうとしてくれただいちゃんの心意気に応えないわけにはいかなかった。


主役は、だいちゃんだから。
料理作ったり、飲み物準備するのはぼくに任せて。
だいちゃんは、輪の中心に居なよ。


そう伝え、ひとりキッチンで黙々と準備に勤しみました。黙々と準備に勤しんでいると、心にべったりと張りついたしんどい思いをほんのひとときであっても忘れられましたから。


みなさんが到着するちょうどいい頃合いを見計らって一通り出し終え、パーティーは予定通り始まりました。あと何品か作ろうかなというところでキッチン内に熱がこもってきて、汗が出てきました。眼鏡が曇ってしまうので外して、次に出す料理を作っていると女性がひとりやって来ました。


女性:

すみません。
飲み物なくなっちゃったから、いただいてもいいですか?

ヒロ:

あっ、気づかなくてごめんなさい。
なんでした?

女性:烏龍茶、いただけますか?

ヒロ:

あっ、はい。
ちょっと待ってくださいね。
(冷蔵庫から取り出し)はい、どうぞ。

女性:

ありがとう。
・・そのお花、カワイイですね。

ヒロ:

これですか?だいちゃんに渡そうと思って持ってきたお花から一輪いただいて、一輪挿しにしたんです。お花があると、なんか、空間がやわらかくなるから。


そう伝えると女性は微笑んで、軽く会釈して、華やかな、別世界のような(だいちゃん的には『ささやかながら』ですが)輪の中へと戻っていきました。


来てくださった方たちが大満足のうちに終わった誕生日パーティーの後。
しばらくしてまただいちゃんから電話がかかってきました。


だいちゃん:ヒロ。おまえに逢いたいって人が居るんだけど、週末空いてる?
ヒロ:うん。予定入れてないから空いてるよ。

だいちゃん:じゃ、日曜日。名古屋駅の、金時計の下に11時な。
ヒロ:うん、わかった。は~い。


話の流れに乗せられて『は~い』って電話を切ったけれど、ぼくに逢いたい人がいる?誰だろう?さっぱり見当がつきませんでした。


日曜日。待ち合わせ場所として有名な名古屋駅の金時計の下。11時に間に合うようにおうちを出ようとしたら、またまただいちゃんから電話がかかってきました。


だいちゃん:

ヒロ、ごめん。
急な仕事入っちゃってさぁ。
おれ、行けないからあと頼むわ。
彼女の名前とケータイの番号。
さっき、メールで送っといたから。
パーティーに来てくれた人だよ。
よろしく。

ヒロ:

えっ?
はぁ?
あと頼むって言われても・・
メール?
まだチェックしてないよ。
それに彼女って、女性なの?
パーティーに来てくれた人?

だいちゃん:

だいじょうぶ、だいじょうぶ。
彼女、白いコート着てるから。
じゃな、あとよろしく。
たぶん、すぐわかるから。

ヒロ:

えっ?
おい!

『ツーツーツー・・・』


話が噛み合わないうちに電話が切れました。

アドリブに弱いぼくに『急に来れん』とか、なんなんだよもう。女性なのかぁ。それにしても誰だろう?まぁいいや。とにかく、待たせないように早く行かないと。急ぎました。


お昼前の日曜日ということもあって、金時計の下は待ち合わせの人でごった返していました。
写真はないから、目印は白いコートです。

白いコート
白いコー・・・
なんだよ。
えぇ?
流行ってんのか?白いコート。

よりによって、白いコートを着た女性がわんさか居ました。
まるで、仕込みで集まったコントのようです。


こりゃ無理だわ。
電話したほうが早いな。
ケータイを取り出すと、なぜか圏外になっていました。

えぇ?
ココ、待ち合わせ場所だろう?
なんで繋がんないのさ。

周囲を見渡すと、ケータイで話している人がこれまたわんさか居ます。

おっかしいなぁ。
どうゆうこと?
ぼくだけか?

時計を見ると、もうあと一分くらいで11時です。

ココじゃダメだ。
外へ出てかけよう。

走り出てケータイを見ると、なぜか圏外になったままです。

えぇ?
頼むわぁ。
なんで繋がんないのさ。
これじゃメールもダメじゃん。

もう時間がありません。だいちゃんは急な仕事で来れないし、そのうえぼくまで待ち合わせに遅刻したらOKした手前申し訳ないじゃ済みません。

なんかないかな?
どうしたらいいかな?

なんかないかな?
どうしたらいいかな?

金時計下へと戻る道すがら、頭をぎゅ~んとうなりをあげてフル回転させ、どうやったら逢えるか考えていました。

なんかないかな?
どうしたらいいかな?

なんかないかな?
どうしたらい・・

ふとだいちゃんの言葉『たぶん、すぐわかるから』が頭をよぎりました。


だいちゃんのおうちで、ぼくは奥まったところにあるキッチンでひとり黙々と料理を作ったりしていましたから、だいちゃんが気を利かせて取りに来てくれる以外お祝いに来てくれた人とは顔を合わせていません。居るのはひとりだけ。でも眼鏡をかけてなかったから、ぼやけてしか見えませんでした。


彼女となに話したっけ?

え~と
え~と・・・

飲み物!
烏龍茶!

次は?
次は?

かわいいとかなんとか・・・

あっ!
お花!

お花っていやぁ・・
たしか、金時計の下に花壇があったはずだ。


キッチンで一輪挿しにしていたお花は、油が飛んだりしないようにと隅っこの方にちょこんと置いてありました。それを見つけてくれる人です。きっとお花が好きな人に違いないと思いました。

金時計の下には、季節ごとにお花が飾られていました。時計下の人混みをかき分けて花壇のところへ行くと、白いコートを着た女性がちょっとかがんで、ニコニコしながらお花を見つめていました。名前を呼ぼうとしたら、ぼくに気がついてくれました。

そして


わぁ、見つけてくれてありがとう。
逢いたかったよ。


ほぼほぼ初対面だったのに、ぎゅっと抱きしめられてしまいました。頭から湯気が出るくらい照れて、顔が真っ赤になりました。エッチなことを考えたわけでもないのに鼻血が出て、彼女も、周りもクスクス。一気になごみました。


天真爛漫で、不思議な女性でした。


11時に待ち合わせて、JRセントラルタワーズのレストラン街へ出掛け、ランチをご一緒しました。ほぼほぼ初対面だったのに、ぼくは人見知りが激しいのに、話がまったく尽きませんでした。『ひきこもってて久しぶりに話せたから嬉しいのかも』と思ったのですが、どうもそうじゃないみたいです。

お店を変えて話し込んでも、お互い話が尽きなかった。
お店を変えて話し込んでも、お互い話が尽きなかった。

他愛もない話から、ほぼほぼ初対面じゃ到底話さないだろう深~い話まで『なんでここまで話せるんだろう?』なんて思いながら、お店を変えながら話し込んでいました。

どれだけはしごしても、お互い話が尽きませんでした。

お店を変えるたびに『手、つないでもいいですか?』親密になり、お店を変えて入るのを待っている時には肩に頭を寄せてきてくれたり、お店を変えるたびに腕を組んできてくれたりとどんどん親密になって、ほぼほぼ初対面なのになんだかもう恋人のようになっていました。よくある計算高い女性のような胡散臭さはまったく感じない自然体なままでした。

そうしてお店をはしごしまくって時計を見たら、もうとっくに終電を逃していました。


ヒロ:

タクシーで送るよ。
うちどこ?

彼女:新栄(しんさかえ)。

ヒロ:

新栄なんだ。
しんさか・・・えぇ?
ぼくも新栄だよ。


タクシーで着いて、お互いのおうちを冗談半分で『いっせ~の~で!』で指さしたら、方角こそ違ったけれど(← ↑ こんな感じ)、100メートルも離れていないご近所さん。

『目と鼻の先じゃん』
『ひょっとしてもうとっくに逢ってたのかもね』

真夜中の名古屋で、ふたり大笑いしてしまいました。

心の距離だけじゃなくて、おうちの距離まで近かった。
出会う人(=たまたま)ではなく、出逢う人(=逢うべくして逢う人)だったんだと思いました。


                    *


この出逢いで思ったんです。

だいちゃんのお友達は今で言うパーティーピープルですこぶる社交的だったり、『セレブ』『ラグジュアリー』なんて言葉が似合うハイクラスな方たちがあの誕生日パーティーには来ていました。

それに比べてぼくは社交的でもないし、当時は無職で世間的には落伍者。それでもこちらから積極的にアプローチせずとも、アプローチしてもらえる。知略をめぐらすわけではない、そんな人付き合いの秘訣があるんじゃないかって思ったんです。

このことに気がついてから、超人的なコミュニケーションスキルを持つ社交的な人たちになろうと引っ込み思案、人見知り、口下手というキャラクターを変えようなんてばかげたことはもう考えなくなりましたし、だからこそ『受け身でいるのになぜかすべてがうまくいく』そんな人生を歩めるようになっていったと思うのです。


この前も、スカーゲンの腕時計、ジレ風サマーストールを憶えていてくれた人からお声掛けがありました。


男なら腕時計はロレックス、オメガ、フランクミュラーとか言いますが、ぼくはそのどれにも憧れていなくて、主張し過ぎる感じが嫌で、自分のキャラクターとも合っていないと思って敬遠していました。

スカーゲンの時計はこんな感じで → https://www.skagen-japan.com/、主張せず、それでいて洗練されたデザインが見る人の心にいつまでも余韻を残すのですね。『あっ、なんか気になる』と。

お声掛けくださった方は哀しいかな、印象の薄いぼく自身のことやぼくの名前は記憶に残っていなかったのですが(いつものことです)、ぼくが身に着けていたスカーゲンの腕時計を憶えていてくれて、引き合わせてくれた人づてに声を掛けてくれました。


ジレ風サマーストール(https://www.cep-shop.jp/stole/makikata/no10/)も、とある集まりに出掛けた時アイテムとして取り入れていたものですが、ファッションのライフワークをしているからといって雑誌から飛び出してきたようなファッションなんてしません。まずない。あんなのは、東京でしか見掛けませんから。

普段のぼくはオシャレではあるけれど、かといって目立つわけでもない。パーティーピープルでもありません。セレブやラグジュアリーに取り憑かれてもいない。例えて言うなら、作曲家エリック・サティが手掛けたインテリアのように生活に溶け込む音楽みたいにそこに居る。そんな感じです。

だから、お声掛けくださった方は哀しいかな、印象の薄いぼく自身のことやぼくの名前は記憶に残っていなかったのですが、ぼくが身に着けていたジレ風サマーストールを憶えていてくれて、引き合わせてくれた人づてに声を掛けてくれたのです。『あの人、誰でしたっけ?』と。


向こうから探してくれる。
向こうから逢いに来てくれる。

残り香のように、誰かの心に忘れられない印象を残す。
ぼんやりのなかに、存在感。

そんな印象から始まる人付き合いもあっていいと思います。

爪痕は、傷を残す。
時に、痛いですから。


永遠の地味メン
ヒロより。

2018.6.7