白色の自己主張

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永遠の問い ~ いじめを生き抜く ~

白色の自己主張
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Photo:hope By:ankledeep / JJ
Photo:hope By ankledeep / JJ



You are the reason why I write. あなたがいる、それがわたしの書く理由。
Donna Jo Napori (ドナ・ジョー・ナポリ)http://www.donnajonapoli.com/about.html



     白色の自己主張 ~ 何色にも染まるたおやかさ 染まらない凛凛しさ ~



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考えたことがあるか?
永遠に答えの出ない問いを繰り返す人生。

今結論を出さなければ、もう二度とこの人物がどうして死んだのかを知ることは出来ない。
今調べなければ、調べなければ、永遠に答えの出ない問いに一生向き合い続けなきゃならない。

そういうやつを一人でも減らすのが、法医学の仕事なんじゃないのか。

不自然死究明研究所(unnatural death Investigation laboratory 通称 UDIラボ)
法医解剖医 中堂系(なかどう けい)http://www.tbs.co.jp/unnatural2018/chart/
金曜ドラマ『アンナチュラル』第5話『死の報復』

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スクラップ置場で他殺体として発見され、身元不明で日彰医科大学に搬送された女性。当時同大学の法医学教室で当番医だった中堂が解剖に立ち会ったが、遺体を包む袋を開け言葉を失う。交際している恋人 糀谷夕希子(こうじや ゆきこ)だった。

関係者と判れば他の解剖医に代わることになる。犯人逮捕に繋がる証拠をなんとしても自分で見つけたい。関係を伏せ、気が狂いそうになる気持ちを押し殺して解剖に臨み、死因を特定。終えて警察関係者が去ると、犯人をこの手で殺してやりたい怒りに飲み込まれ、夕希子はそんなこと望むまいと抗い、傍らで崩れ落ちた。

(日本で不自然な死を遂げたご遺体の内解剖されるのは先進国で最低の2割。8割は解剖されないままもっともらしい診断名が付けられ荼毘に付される。法医学は死んだ人の学問ではなく、未来のための仕事である)



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ぼくはなぜいじめられたんだろう?
永遠に答えの出ない問いを繰り返す人生が始まった。



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子どもの頃、話そうとするとどもってしまう吃音(きつおん)症を抱え、独り悩んでいた。

『相談すればいいじゃん』
『なんで相談しないの?』

簡単に言う人も居たけれど、自分にとって息を吸って吐くように出来ることが他の人にも同じように出来るわけじゃない。話そうにも話せないのだ。想いを伝えようにも、言葉が出てきてくれないのだ。

『日本語なのになんで?』

そうしたもどかしさが余計に心に負担をかけ、さらに悪循環を招いた。


そんなぼくは、いたずら好きの小学生にとってはからかいの格好のターゲットになった。
大勢の前で誇張も交えてどもる真似をされ、顔や耳が茹でダコのように真っ赤になるほど恥をかいた。

悔しくてひとことでいいから言い返そうと震えながら勇気を振り絞ってわめいたこともあったが、幼稚園に通い始めた頃からコミュニケーション音痴の自覚があって、人付き合いが極度に苦手だ。自信がないから、声は普段からちいさい。自分でもびっくりするほど。まさに、蚊の鳴くような声。

それに加え、引っ込み思案。人見知り。筋金入りのマイナス思考だし、日本代表があればレギュラー入り確実なくらいの小心者。声変わりで小学生とは思えないほどに低音ボイスになったことと、運動も得意ではなくて肺活量が乏しいことから、お腹から声を出そうにもさらに出ない。わめいた声は、ちいさくかすれた。

それでもなんとか聞こえていたはずだが

『はぁ?』
『なんか言った?』
『なんて言ったんでしゅかぁ?』
『なに言ってんのかわかんねぇよ、ハハハ』

キスするくらいの距離にまで顔を近づけられ、代わる代る露骨なほどに耳に手を当てる仕草をされ、嫌味なほど何度も何度も大袈裟なほどに聞き返され

『なに、このちいさい声』
『お葬式?』
『誰か死んだの?』

度が過ぎた悪ふざけで、クラスメイトみんなに笑われた。


そんなことが何日か続き、重い足取りである朝学校へ登校すると、みんな下を向いてやけにクラスが静かだった。ふと見ると、ぼくの机の上にお花が一輪、花瓶に入れて置いてあった。

『なに、このちいさい声』
『お葬式?』
『誰か死んだの?』

あの言葉が蘇り、お花の意味が判った。
テレビで見たことがある光景だったからだ。


声を出すことを練習する人は、唄う人や人前に立って話す人以外ほとんど居ない。
なぜなら、特段練習せずとも、意識せずとも出来てしまうから。

おぎゃぁとこの世に産まれ落ちてから声を出してくることがもう既に練習で、別メニューで一所懸命自主練習して声を出せるようになったわけじゃない。そんな意識せずに出来てしまうことが『できて当たり前』を生み、いじめる連中の根底にはあったと思う。


心に癒えない傷を負った。
葬式ごっこは堪えた。

先生は叱責せず、『悪ふざけ』と笑っていた。
あの気色悪い笑みを忘れることはない(今なら免職ものだろう)。


もう話さない。
もう声なんていらないって思った。


『だったらおまえらの望み通り死んでやるよ』とさえ思った。


この頃ぼくは吃音以外でも、色白で生まれつき目の下にくまがあることから『パンダ』とからかわれる見た目を理由にしたいじめに遭っていて、厭世観はMAXとなり、学校内唯一の安全地帯 図書室へと駆け込んだ。葬式ごっこを現実化してやると意気込んで。

『死ぬ方法』なんて本は、学校という性格上も、教育上も置いてあるわけがない。だったら、若くして死んだ人の話を読めばいいんじゃないか。小学生ながら必死に考えて、伝記のような本を探していると、病魔により32歳の若さで他界した医師 井村和清(いむら かずきよ )さんの手記『飛鳥へ、そしてまだ見ぬ子へ 若き医師が死の直前まで綴った愛の手記』を見つけ、手に取った。

目次を見ていると、『自殺』というキーワードが飛び込んできた。病魔に侵され、自殺を考えたんだろうかと思って読んでみると、とある患者さんとの出逢いを振り返った言葉だった。意外な言葉に、眼が潤んだ。



自殺をする人間は弱い人間、とよく言われます。しかし、私はそうは思わない。自殺という勇気を必要とする行為へ彼を走らせたその苦しみは、どんなに大きかったろうと思います。ひとりで悩み、ひとりで苦しみ、ひとりで泣いて、そして、ひとりで死んでいかねばならない。こんなに辛いことはありません。しかし人は、自殺をする人間は弱い人間と嗤(わら)います。

自殺をする人間は弱い人間、とは思いません。その人に負わされていた苦悩の重荷を思うとき、とても私にはその人の行為を嗤うことはできないのです。そこまで追いつめられ、彼はどんなに悩んだことかと思います。ずいぶん辛かったろうと思います。小さな胸を割るほどに悩み、そして独りで死んでいく。彼らの苦悩を、オトナたちは決して理解しようとしない。自殺をする子は弱い子供。そしてその原因は、親の生活態度にあるとか、教師と生徒の断絶とか、社会のせいにしてしまう。

本当にそうでしょうか。私は子供たちの自殺の記事をみるたび、胸がしめつけられます。しかし、私はおそらく、その子供たちはもっと違った、オトナの知らない彼らだけの世界で、ひとりきりで泣いていたのではなかろうかと思うのです。そして、死ぬことを選んだ。私はとても彼らを責められません。



後にも先にも、こんな言葉を贈ってくれた人は居ない。



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ぼくはなぜいじめられたんだろう?
永遠に答えの出ない問いを繰り返す人生。


電車内。
足を踏んだ人は忘れても、踏まれた人は忘れない。
『痛み』とは、そういうものだ。


問いを投げかけたがゆえに、見つからない答えに永遠に苦しむことになる。
でも問いを投げかけたからこそ、泥の中から答えを見つけられることもある。


『なぜ?』
『どうして?』
『自分だけがなんで?』

『吃音?』
『見た目?』

それっぽい答えには突き当たるが、本当のことは判らない。
いじめた奴らに聞いたところで正鵠を射るものにはならない。


ぼくはなぜいじめられたんだろう?
永遠に答えの出ない問いを繰り返す人生。


答えが知りたい。
答えを知りたい。

永遠に答えの出ない問いを繰り返してきたことが、ぼくが死を選ぶまでの時間稼ぎをしてくれた。
永遠に答えの出ない問いを繰り返してきたことが、井村和清さんの言葉に巡り逢わせてくれた。


答えなんて無くてもいいのかもしれない。
問い続けることに意味があったのかもしれない。


光が見えた。



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いじめた連中が喜ぶのは、ぼくがこの世から消えること。
彼らに刃を向けること。

いじめた連中が地団駄踏んで悔しがるのは、構ってもらえず、彼ら自身が透明な存在になること。
ささやかでもいい、ぼくが幸せになること。


未来は、今の自分、今のこの環境の延長線上にあるものじゃない。
永遠に続くのは、今の自分でも、今の環境でも、問いでもない。


『なにをやったところで少年法で守られる』とドヤ顔になっている連中に対するカウンターパンチ。
ろくでもない親や教師に対する唯一許される復讐だと、ぼくは思っている。
この世で最高に美しい、華麗なる。



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あなたが死んで、なんになるの?
あなたを苦しめた人の名前を遺書に残して、それがなに?

彼らはきっと転校して、名前を変えて、新しい人生を生きていくの。
あなたの人生を奪ったことなんてすっかり忘れて生きていくの。
あなたが命を差し出しても、あなたの痛みは決して彼らに届かない。
それでも死ぬの?

あなたの人生は、あなたのものだよ。

UDIラボ法医解剖医 三澄(みすみ)ミコト http://www.tbs.co.jp/unnatural2018/chart/
金曜ドラマ『アンナチュラル』第7話『殺人遊戯』

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法律では裁けない『いじめ』という名の殺人を大勢の人に知らしめるため法医学に興味があると嘘をつき、ミコトに近づいた高校生 白井一馬(しらい かずま)。動画サイトで殺人遊戯を生中継し、画面の向こうに横たわる制服を着た男性遺体の死因を当てるよう迫る。

タイムリミットが迫るなかミコトが死因を当て、殺人遊戯の真相、学校やクラスメイトによる隠蔽が公になると、遺体は共にいじめられていた横山伸也(よこやま しんや)であり、いじめの首謀者たちを嵌めるための推理小説をヒントにした復讐計画が狂って死なせてしまっただけでなく、自分を庇ったことでいじめの対象が横山へ移ったことからも助けられなかった。

二度も助けられなかったことを悔い、自分だけが生きていてもいいのかと苦悩。自身も死のうとナイフを首に突きつけた時、幼い頃の一家無理心中事件『親による身勝手な殺人』から生き残ったミコトが語りかけた。


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