神様お願い、銀河鉄道999のオープニング、走り出す瞬間 - 白色の自己主張
~ 何色にも染まるたおやかさ 染まらない凛凛しさ ~

神様お願い、銀河鉄道999のオープニング、走り出す瞬間





You are the reason why I write. あなたがいる、それがわたしの書く理由。
Donna Jo Napori (ドナ・ジョー・ナポリ)http://www.donnajonapoli.com/about.html



     白色の自己主張 ~ 何色にも染まるたおやかさ 染まらない凛凛しさ ~



                    *



                  392通目



                    *



秋風:正人(まさと)君から、電話はまだないのか?

鈴愛:

はい。ぼぉっとしてしまってすいません。
ちゃんと仕事に集中しますので。

秋風:鈴愛。恋をしろ。
鈴愛:コイ? 泳ぐやつ!

秋風:ボケなくていい。真剣な話をしている。
鈴愛:すいません。

秋風:私がなぜおまえを弟子にしたか、わかるか?
鈴愛:五平餅?(=生家の食堂で出されている名物で秋風の大好物)

秋風:

違う。いや、違わない。それもあった。楡野は、他のふたりとは違う。山を駆け回っていた。そのリアルが重要だ。小宮(=ユーコ)やボクテとは違うんだ。あいつらの漫画の知識は深い。なぜだ?漫画ばかり描いたり、読んだりしていたからだ。それではダメなんだ。

鈴愛:えっ・・ダメなんですか?

秋風:

あぁ。俺が『恋をしろ』と言うのはそういうことだ。リアルを拾うんだ。想像は負ける。好きなやつが居たら、ガンガン逢いに行け。仕事なんかいつでも出来る。ベタなんかいつでも塗れる。空想の世界で生きている奴は弱いんだ。心を動かされることから逃げるな。そこには、真実がある。

楡野、いいか。半端に生きるな。創作物は人が試される。その人がどれだけ痛みと向き合ったか。憎しみと向き合ったか。喜びを喜びとして受け止めたか。逃げるな。

NHK連続テレビ小説『半分、青い。』第9週『会いたい!』第51回

                    *

著名な漫画家 秋風羽織(あきかぜ はおり http://www.nhk.or.jp/hanbunaoi/cast/index.html)の元へ弟子入りするため岐阜から上京した楡野鈴愛(にれの すずめ)は、同じ日に同じ病院で産まれた幼馴染み 萩尾律(はぎお りつ)が通う大学の友人 朝井正人(あさい まさと)と出逢い、好意を持ち、やがて恋に落ちる。

だがふわふわした夢心地の中でだけ生きていて、いつまでたってもまるで進展していかない、しようとする気が感じられない様子を見かねた秋風が、漫画家として生きていく鈴愛に創作の心棒となるものを伝える。



親愛なる きぃちゃんに

なにかを産み出すこと。
産み出し続けること。

難しいです。
産みの苦しみはあります。
凡夫ですからなおさらです。


このブログはかれこれ4年近くアップし続けていて、今も漫画家さんでいうところのネーム(=ストーリーやセリフの描かれた下書き)が常に頭の中にストックされています。

どんな写真を使おうか、どんな動画を使おうか、どんなドラマやアニメのセリフを引用しようか、どんな実体験を織り込もうかといったブログの設計図が帰省ラッシュ・Uターンラッシュのように頭の中で渋滞中。今か今かと文字になるのを待っているところです。


ネームを産み育てる秘訣のようなものは、秋風羽織が語っているのとまったく同感。天才秋風でさえも机にかじりつくことから離れ、ドラマでは近所の行きつけの喫茶店でお客さんの会話に聞き耳を立てたりして種を拾い集めていました。

作家 村上春樹さんもご著書『職業としての小説家』の中で、人間観察がお好きで、且つ世の中で起きる市井の人々の物語はそのすべてが無料であると書いていましたね。仕込みは皆に平等。フィクション、ノンフィクション問わず、創作の根っこは皆同じなようです。


産みの苦しみにはふたつあって、ブログで実体験を書いていくための文字の神様が降りてくるまでの産みの苦しみ。もうひとつは、世界でたったひとりの人のために 世界で一冊だけの絵本を手創り絵本工房 心の温度 +2℃ https://ippunkan.blog.fc2.com/blog-entry-9.html をはじめとした無から有を創る産みの苦しみです。

最も長い絵本の創作を例にあげると、18歳からの25年間でご縁のあった方たちに100冊以上贈ってきました。一年平均4冊ほどのペースを続けてきていますが、途切れたことはありませんでした。世界に一冊だけの絵本ですから、内容がかぶったこともありません。


『なにかを産み出す』というと、元となる種を如何に産み育てるかに誰しも目が行きがちです。実際アイディアを如何に産み育てるかにフォーカスした本やセミナーが盛んなのも頷けます。でも絵本25年、ブログを4年続けてきて思うのは、アイディアやネームの枯渇を恐れるより、走り出す瞬間が訪れるかどうかの方がロングランを続ける決め手になるのだということです。

言い尽くされていますが、どれだけ優れたアイディアを、ネームを持っていようと、それを形にするスイッチが入らなければ存在しないのと同じですから。代わりに誰かが創ってくれる。それもありですが、やはり自分にしか創れないものがあるのだと思います。形にせず、『あぁあれ、俺も考えてたんだよね』だけは言いたくない。


続けてきたからこそ、こられたからこそ最近判ってきたことがひとつだけあって、産みの苦しみをラクラク越えていくスイッチが、どうやらぼくはきまって『午後』に訪れるという確信です。

絵本ならば25年、ブログならば4年近く創作の神様、文字の神様に愛されてきたわけですが、朝が弱いんでしょうね、神様はきっと。ブログのバックナンバーにはアップした時間が載っていますが、ほぼ9割近くが午後でした。

書けても描けなくても机の前に座ることを習慣づけている作り手さんは多いですが、ぼくの場合はそういったルーティンを組んでもまるで駄目で、むしろ苦痛になるだけです。

時間は午後。
降りてきてくれるのを待つ。

じたばたしない方が愛されるようです。


降りてきてくれた時には、TVアニメ『銀河鉄道999』のオープニング(https://youtu.be/d0iwi6sZ5LE【公式】銀河鉄道999 第1話「出発のバラード」)のように汽笛が鳴り、走り出す瞬間が訪れます。ゾクゾクする瞬間です。ネームの完成や広がりにつながっていく。アイディアのピースとピースがカチカチと絶妙に組み合わさっていったりもします。

そこからブログであれば、一文字一文字の積み重ね。
誰もが最初は真っ白な画面を相手にしている。

天才も、凡夫も。


待てる人が、ロングランできる人。
強引に産み出された作品にはない熱量がこもるのかもしれません。
才能があるとかないとかではなく。


ヒロより。
2018.6.23



鈴愛:結婚、するの?
ユーコ:(漫画家に未練のある自分へ言い聞かせるように)うん。

鈴愛:漫画は?どうするの?

(向き合って座っていたが、眩しすぎて鈴愛を見ているのが辛い。座り直して横を向くユーコ)

ユーコ:もう・・わたし、疲れちゃった。
鈴愛:えっ・・

ユーコ:漫画ってさ、ゼロから創るじゃない、お話。
鈴愛:うん。

(結婚を考えている交際相手が海外から家具を輸入する仕事をしており、自分はインテリアコーディネーターの資格を取ってサポートしたり、自身の仕事にしたいと考え始めているユーコだが、必死に漫画家への未練を断ち切ろうとそう言い聞かせているようにも映る)

ユーコ:

なにを輸入するか決める方が もうできあがってるものから選ぶ方が楽なんだ。
ゼロからなにかを創るより・・ずっと楽だと思う。

(立ち上がり、クローゼット代わりのハンガーラックに掛かったブランド物の洋服を手に取りながら)

こんな仕事、もうやってられない。服買っても、わたしたちが外に出られるのは月に一度か二度。あとは漫画描くだけ。買った服着ない間に季節が変わる。一日にしゃべる人が宅配便屋のおにいさんだけ。わたしたちは、架空のラブストーリーを創るために、いくつの自分の恋を犠牲にしたんだ?知り合っても逢えない。結局原稿に追われてドタキャンばっかで次はない。

鈴愛:ユーコ・・
ユーコ:スケジュール帳は真っ白。なんの予定も立たない。

鈴愛:わたしは、真っ白な日が好きだ。
裕子:はっ?

鈴愛:

白い日がうれしい。
なんにもない日。
ただ描けばいい日。
描ける。

裕子:

鈴愛、それはオタクと一緒だ。
ひきこもりだ。
結婚もできないし、子どもも産めない。
想像の世界の人になってしまう。
漫画を描く機械だ。

鈴愛:それでいい。上等。機械でいい。

ユーコ:

違う、鈴愛。(対面して座り鈴愛の顔を両手で包む)なんのために、このかわいい顔が付いてる?なんのために、こんな白い肌をしてる? 着飾って、街を歩くためだよ鈴愛。そのかわいらしい声を、一言も発さない日があるなんて・・

鈴愛:

(頭を振り、流れる泪を拭おうともせずに)ユーコ、機械じゃない。機械は、みんな同じもんしかできん。漫画は、その人それぞれ違う。わたしはオシャレをしなくてもいい。流行りの場所を知らなくてもいい。だってさ、だって、漫画を描くって、物語を創るって、人を感動させるって人生を超えてる。世界はわたしのものだってきっと思える。わたしが・・わたしたちが、秋風先生のような漫画を描いた日には、きっとそう思える。ユーコ、頑張ろ。

裕子:

今・・今、逆にはっきり判った気がした。
わたしは・・わたしの居る所はここじゃない。
ううん・・わたしは、ここには居てはいけない。

(泪のこぼれ落ちる先。握ってくれていた鈴愛の両手をそっと解いた。清々しささえ漂う笑みを浮かべて)

                    *

秋風ハウス(=スタッフ寮)で共に漫画家を目指す仲間ボクテ、ユーコ、鈴愛。共同生活を送り、アシスタント業務をこなす傍ら、秋風の後押しを受け雑誌への作品応募を続けていく。

トップバッターを飾って『5分待って』が読み切りでの掲載を果たし、その後連載のチャンスを射止めたユーコだったが、いつしか掲載順(=人気順)が後ろから2番目となり、当初の熱意や勢いも尻すぼみに。追い打ちをかけるように担当編集者から、残り3回での連載打ち切りも告げられていた。

鈴愛はデビューこそ3人の中では最後だったが、複雑な思いながらも射止めたチャンス(=ボクテの辞退)をしっかりとものにし、作品『一瞬に咲け』は産みの苦しみこそあるものの、原稿を落とすことなくロングランを続けていた。

ボクテはデビューを焦るあまり秋風が指定した雑誌以外で、それも鈴愛から許諾を得ているもののアイディアを拝借して無断で応募。『神様のメモ』として掲載されたことで、且つ鈴愛への敬意のない掲載誌に合わせた低俗な作風になったことで秋風の逆鱗に触れ、オフィスをクビになってしまったが、別に手掛けてきていた作品(=秋風指定の雑誌で掲載が決まっていた作品『女光源氏によろしく』 → 他誌掲載の後に掲載が判明)がヒットし、今は売れっ子漫画家としての地位を確立していた。

ユーコはひとり自分だけが取り残されたようになり、漫画家として枯渇した自分から目を背けるように男性にハマるようになり、『こんな仕事、もうやってられない』と自身の仕事を評してしまったものの漫画家としてまだ終われない、終わっていない自分への未練を断ち切るように、本当に好きなのかと問われれば疑問符のつく相手との結婚へ舵を切っていった。

NHK連続テレビ小説『半分、青い。』第12週『結婚したい!』第70回