ブラック絵本を愛してくれるおともだちに - 白色の自己主張
~ 何色にも染まるたおやかさ 染まらない凛凛しさ ~

ブラック絵本を愛してくれるおともだちに





You are the reason why I write. あなたがいる、それがわたしの書く理由。
Donna Jo Napori (ドナ・ジョー・ナポリ)http://www.donnajonapoli.com/about.html



     白色の自己主張 ~ 何色にも染まるたおやかさ 染まらない凛凛しさ ~



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世界でたったひとりの人のために 世界で一冊だけの絵本を手創りするライフワーク(=道楽)絵本工房 心の温度 +2℃ http://ippunkan.blog.fc2.com/blog-entry-14.html

箱から出すのが、扉を開くのが待ち遠しくなる。物語、言葉、イラスト、絵本の世界観、受け取る方への想いを結晶にした装幀、受け取る方に想いを馳せた本の素材のセレクトから製本まですべてひとりで手掛け、18歳からの25年間で、ご縁のあった方たちに100冊以上贈ってきました。

絵本はありとあらゆるものから自由になれる場所であって、差別や侮辱などを除いてどんな表現も許されるし、どんな内容であってもOKなのだけれど、多くの絵本は週刊少年ジャンプのように友情・努力・勝利といったポジティブな内容になる。今まで贈ってきた絵本も亦然りだった。知らず知らずのうちに、『絵本ってこういうものだよな』という思い込みに縛られやすくなる。

でも遡りに遡ると、ぼくの絵本の原点は自作絵本第一号。
小学生の時に創った『すいっちょん』。

誰もが『ふつう』と思っていること、誰もが『あたりまえ』と思っていること、誰もが『常識』と思っていること、修身のように年配者がははぁと崇める古き良き時代の教訓・価値観や世に流布される美談などにゆらぎをもたらす、心の闇・悪の感情から発露するブラック絵本でした。



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学校でいじめに遭い、両親にも先生にも助けてもらえず途方に暮れる男の子。部屋でひとりしくしく泣いていると部屋の電気を点けるスイッチに顔が現れ、『よっこいしょ』と飛び出し、手足がにょきにょきっと出てきて、とことこ歩いて目の前にやって来た。

そいつは男の子がいつも部屋でひとり泣いているのを見ていて、なぜ泣いているのかひとりごちるのを聴いていて、『いいものあげる』抜けだした後にぽっかり空いた穴から、自分と同じおおきさのスイッチをよいしょよいしょと運んできてくれた。


気に入らないヤツが居たらさぁ、ココをポチッと押しなよ。
そん時に、こう言うの忘れんなよ。
Switch On!
そうすればそいつ、パッと消えちゃうからさ。


言い残すと、元の場所に戻って行った。『夢でも見てたのかなぁ』目をごしごしこすってみた。ほっぺたをつねってみた。もう顔なんてなかったけれど、でも手には手渡してくれたスイッチがあった。

『Switch On! 』発音が良すぎて、なんて言っているのかよく判らなかったな。
『すいっちょん!』って聴こえたけれど。


翌朝お母さんが『早く起きなさい』『学校に遅れるわよ』行きたくないのに口うるさく言うから『すいっちょん!』言われた通りにポチッと押してみた。すると、パッと消えちゃった。静かになった。


学校へ行き、いじめたヤツと仲直りするようガミガミうるさい先生、いじめてくるクラスメイトを前に『すいっちょん!』『すいっちょん!』次々に消していった。スッキリした。


その後も『君のことを思って言ってるんだ』なんてやたらと説教してくるおとなや、家に帰ったら厳しく躾けるお父さん、両親の分身のようにネチネチうるさいお姉さんを『すいっちょん!』『すいっちょん!』次々に消していった。


そうしてどんどんどんどん気に入らないヤツを消していったら、世界は男の子ひとりだけになっていた。


急に淋しくなった。
後悔した。
そんな自分が嫌になった。


『すいっちょん!』


最後は自分さえも消してしまって、主を無くし、宙に浮いていたスイッチが『カランカラン カランカラン』地面に落ちて絵本は終わる。



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この絵本は、自身の実体験そのままに、夏休みの宿題として自由研究で創った。
夏休み明け、提出すると職員室への呼出しがあった。
両親も呼び出された。

まるで公共広告機構(現 公益社団法人ACジャパン)の CM『黒い絵 https://youtu.be/SNv4hBbu8K4』のように大騒ぎになっていた。

『攻撃性・破滅願望が垣間見える』

絵本は問題作に。
描いたぼくは、問題児になっていた。


管理教育至上主義の時代だったから、生徒はすべて画一的であるべき。
異端の芽は、早々に摘んでおかなければならない。

絵本に込めた苦衷を察してほしかったのに、絵本は他に訴える手段がなかったぼくにとって唯一の表現方法であり心の叫びだったのに、その場で廃棄処分された。校舎裏の焼却炉で。


燃え盛る炎の中に投げ込まれる様。
火に侵食され、真っ黒になっていく面積がじりじり増える。
もくもくと煙突からのぼる煙を、ぼくは忘れない。


そんな問題作ではあったけれど、ぼくにとっては自分の想いを誰に遠慮するでもなく表現できた記念すべき作品でもあって、絵本工房 心の温度 +2℃を始めた時復刻させた。

たとえぼくが見ている前で、たとえ焼却炉で処分しようとも、頭の中にある原画までは奪えない。
何人にも。

その後この絵本は『ブラック絵本』と名付け、裏メニューみたいな感じで、同じく絵本のライフワークであるお客様のイマジネーションの中にある絵本屋さん『ふくみみぶっくす https://ippunkan.blog.fc2.com/blog-entry-15.html』で、お客様限定で郵送にて貸し出していた。

読み手を選ぶ絵本なのだけれど、意外にも好評。映画で言うなら『セブン https://youtu.be/znmZoVkCjpI』、本で言うなら、読んだ後嫌な気分になるミステリー『イヤミス』のように支持を受けて、ホワイト絵本を一年平均4冊手掛ける傍ら、年平均一冊程度手掛けてきた。


去年から初めてのシリーズもの『福神漬』を手掛けていて、今月12冊目で最終巻。

七福神のメンバーで、貧しき者を救い、財物を与えると言われる弁財天(べんざいてん)の姿形をしながら、『福神漬』というふざけた名前をしている天女。お金を必要としている人、欲しいと願う人の前にふらり、ひらりと現れ、寿命と引き換えにお金を好きなだけ与えると言い寄ってくる。

タイムリミットは24時間。
他言無用。
自分の寿命があとどれくらいあるのかは誰にも判らない。
必要とするお金と寿命の交換レートは交渉次第。

LIAR GAME(https://youtu.be/ufaE3iKdzVE)のようにヒリヒリする心理戦の後に待つのは、まんまとお金を手にした後使える寿命を見込んで刻んで残し、差し出したはずの寿命が尽きてしまって、お金を手にした途端死を迎える人。

駆け引きに勝ち、お金を手にした人には落語のような滑稽なオチであったり、人情味溢れる物語であったり、はたまた『闇金ウシジマくん http://ymkn-ushijima-movie.com/』さながらの、この世の地獄のような蟻地獄が口を開けて待っていたりもする。


こんな悲喜こもごもなお話を毎月一話ずつ創って、待っていてくださる方の元へとコラムニスト志賀内泰弘(しがない やすひろ)さんのひとり新聞『徒然草子(つれづれそうし)』のようにお届けしていたら、ある日手紙が届いた。3冊目の時だった。

小児病棟に入院している男の子で、ママさんが病院へと持ってきてくれて読んだことからファンになったと書いてあった。ただ、こうもあった。

読んでいる間は夢中になれて、病気のことなんて忘れられる。
でも読み終えて、夜が来ると怖くて堪らない。
きょう眠ったら、明日目を覚まさないんじゃないかって。


かつていじめに苦しみ、真っ暗闇に震えていた。
そんなぼくだからブラック絵本に引っ掛けて、ブラックつながりでなにか贈れないかなと思った。

命と向き合う人を前にして『頑張れ』とか『だいじょうぶ』なんて口が裂けても言えないし、暑苦しく未来や希望を語るもの嫌だ。医者でも看護師でもないぼくになにが出来るってわけでもない。メンターのように、心の蜘蛛の巣を取り払えるマジックが使えるわけでもない。

それでも押し付けがましくなく、それでいてエールを贈れないだろうか。
アーティストらしく。
クリエイターらしく。


考えたのが、真っ黒な絵だった。



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4冊目を届ける時から、ママさんに頼んで黒い絵を一緒に届けてもらった。

スクラッチアート(https://gakken-ep.jp/extra/scratchart/)にしてある。
9枚を組み合わせると一枚の絵になるような仕掛けがしてある。

下絵に沿って専用の道具でカリカリと削ってもらうと、真っ暗闇に絵が浮かびあがってくる。


4冊目。
夜の水族館。


5冊目。
花明かり(=満開の桜が闇の中で光を放つように見える姿)。


6冊目。
流れ星。


7冊目。
まっくろくろすけ(https://www.donguri-sora.com/shopping/?pid=1418728450-007258


8冊目。
蛍。


9冊目。
花火。


10冊目。
空飛ぶピーターパン。


11冊目。
ナイトレインボー(=夜の虹 http://www.hibiyakadan.com/shop/night-rainbow/


そして、12冊目。
キャンドル。


スクラッチアートは、やってみると無心になれる。
何時間でも。
『福神漬』を読み終えた後、眠るまでの時間を無心になって過ごしてもらえたらと思った。

個室だから、カリカリした後の絵は壁に飾れる。
視線の先に、カリカリし終えた後の絵が毎月飾られていく。
増えていく。


消灯時間。

闇に包まれた中であっても、カラフルな絵がそこにある。
なにもかもを吸い込んでしまう闇ではない闇がそこにある。

12枚目の真っ黒な絵キャンドルのように、彼の心にカリカリした絵一枚一枚が色と光をもたらしてくれたらと願った。そんな気持ちに包まれて、目を閉じることができたらと願った。


目を覚ますのが、明日を迎えるのが、楽しみになるような。



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烏(からす)は、昔は白い烏だった。

洒落者で、他の鳥たちよりも自分が一番綺麗になりたいと願っていた。
そこで、知恵者の梟(ふくろう)に一番美しい色に染めてほしいと頼んだ。



黄色


でも、どの色でも満足しなかった。

もっと美しく。
もっともっとと。

そして、重ね塗りを繰り返すうちに、白かった羽根は真っ黒になってしまったという。

オトナの土ドラ『いつまでも白い羽根』第1話『もう辞める?』
http://tokai-tv.com/shiroihane/