白色の自己主張

ARTICLE PAGE

会うまでの時間

六六魚
  • comment-
  • trackback-

Photo by Cheewit Dtit App

短歌と読者との出会いは、それぞれが会うまでに過ごした時間によって、決まるような気がする。十代の読者には十数年分の、八十代の読者には八十数年分の、生きてきた重みがあるわけで、その重みを受けとめながら、歌が人の心に何かを投げかけられたら、それこそが幸せな出会いだ、と思う。

短歌が過ごした時間、というのは、短歌が生まれるまでに作者が過ごした時間でもある。三十一文字という短い言葉ではあるけれど、その言葉に自分が出会うまでに、どれだけ深く感じ、味わったか。その時間の厚みが、結局は歌の厚みになる。

形になるまでは時間がかかり、言葉になるときは一瞬で三十一文字になる......そういう歌が、自分としては、いいものが多いように思う。作るのは一瞬でも、その一瞬に会うまでの時間を、大切にしたい。

俵万智『会うまでの時間 自選歌集』あとがき

関連記事
  • posted by コウノトリの噛み痕