白色の自己主張

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カーネーション

キリトリ
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Photo by Sharon McCutcheon

食料品の買い出しへ行った帰り。お花屋さんの前で、小学生の女の子が中を覗き込んだり、入ろうかどうしようか、もじもじしていた。

初めてのお花屋さんなんだろう。初めての、自分のお小遣いで買うお花なんだろう。ドキドキだろうと思った。

ここは個人で経営している、すこぶる良心的なお店で、いつも『この品質の、このお花が、この値段で?!』驚いてばかり。訪れる度に素敵なお花との出逢いが待っているので、引っ越してきて以来贔屓にしている。安心して入れるお店だから女の子に声を掛け、オーナーさんにも声を掛けた。

母の日の前日にあたるタイミングだから、ふたりともカーネーション目当てだが、あいにくこの日は一本しか残っていなかった。

女の子と目が合った。

ぼくは恥ずかしながら母の日を忘れていて、彼女のおかげで思い出した。そのお礼もあって、残り物には福がある最後のカーネーションを譲った。

大事に胸に抱え、走ってママさんの元へと向かう後ろ姿に、母との折り合いが悪く、女の子の頃にはカーネーションを贈ることができなかった自分が重なっていた。

ぼくは位牌に供えるし、最近はカーネーション以外のお花も選ばれているから、ローズアソートをいただいてお店を出た。


交差点で信号待ちをしていたら、隣に花束を抱えた女性が並んだ。

ローズアソートを見て話し掛けられ、お花屋さんでのことや溢れた想いを話すと、『よかったら』花束から一本差し出してくれた。

信号が変わった。
会釈して別れた。


ぼくの手には、青のカーネーション。
花言葉は、『永遠の幸福』だった。
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  • posted by コウノトリの噛み痕