白色の自己主張

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ウェイターの秘訣

キリトリ
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Photo by Rafael Lodos

迷宮カフェの前を通りすぎる。

そういえばあのときのウェイターが、次に会ったときに人生の意味を教えてくれると約束してくれたことを思い出した。今日はニルバーナは、階段を掃除していない。彼女は気兼ねなく階段を上って店内に入った。モーニングを食べている客で、店内はにぎわっているようだ。アリアドナはカウンターにぽつんと空いているスツールを見つけると、そこに腰をおろしてみて驚いた。はじめてこのカフェに入ってきたときとまったく同じように、目の前に空のコップが三つ置かれていたのだ!「わたしを待っていてくれたんだわ」アリアドナは胸の中で言った。ウェイターは近づいてきたアリアドナの顔を見ると、にっこりと微笑んだ。

「さて、ご注文は?」

「もちろんあれです。人生の意味を教えてもらいにやって来たんです」

「そうだね。でも忘れないで、人生の意味は人それぞれちがうのだということを。見つけるのはあなた自身。私はただ、ウェイターとして四十年間働いて、分かったことを言うだけです」

ヒモ飾りのついた制服を着たウェイターが機嫌よさそうに話しているのを見ながら、アリアドナは並べられたカップを、待ちきれない気持ちで眺めていた。

「コーヒーを注文するお客様とウェイターがやりとりするのは、ほんの一分たらずです。『いらっしゃいませ』と声をかけ『ご注文は?』とオーダーを訊き、注文された飲み物をテーブルに置いて、勘定を渡されて、お帰りの挨拶をする・・・・・・。まあ、いろんな場合がありますが、ウェイターとお客様とのやりとりというものは、おおむねそんなものです」

「ええ、でもそれがなにか?」

「チャンスだ、っていうことですよ!コーヒーの味の善し悪しはともかく、少なくともその一分でウェイターには三つの選択肢があるんです。つまり、どんな振る舞いをしたかによって、三つの結果の可能性があるのです」

ウェイターはそう言うと、よりぴったりな言葉を探しながら口をつぐんだ。そして言った。

「その一分にもし粗野な態度をとっていたら、お客様はいらしたときよりも悪いご気分になって帰らなくてはいけなくなってしまう。普通に接すれば、お客様はいらしたときと同じようなご気分で帰られるでしょう。でも、もしちょっと親切に接したなら?お客様はいらしたときよりもいいご気分でお帰りになることができるじゃないですか」

「それで全部ですか?」アリアドナは、がっかりした気持ちを隠そうともせずに言った。「それが人生の意味とどう関係があるっていうんです?」

「これこそが人生の意味ですよ!それにこれはなにも、ウェイターに限った話というわけではないのです。誰しも毎日いろんな人たちと大なり小なりさまざまなやりとりをしているものです。その中で得るならば、やはり三つ目の結果がいちばんいいでしょう。自分と接したあと、誰かの人生がちょっとだけいいものになるんですからね。ひとつひとつの出会いでそれに挑戦するんです!」

これを聞いて、アリアドナは考え込んだ。ウェイターはぱちりとウインクしてみせると、こう言い残して仕事に戻った。

「さあ、仕事をしなくては。よくすべき人生がたくさん待っているんです」

[幸福の迷宮 あなたの人生が輝きだす物語]
17 ウェイターの秘訣
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  • posted by コウノトリの噛み痕